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BMP187  作者: ST
第四章『境界の勇者』
233/336

ファイナルマッチ『澄空悠斗vs臥淵剛』3

ルーキーズマッチのファイナル。

そして、クリスタルランスの参戦。

さらには、BMP能力者の歴史上、最大の戦果を挙げたと思われるルーキーの出場。

しかも、直前まで賢崎ルーキートップの美少女が出る予定だったこともあって、その筋からの観客も多く。


結果、国立武闘館は超満員だった。


剣首相はじめ政府の閣僚も観戦に来ており、イベントとしての格も最上級(※首相と一緒に剣麗華にも挨拶してもらおうという案もあったが、他ならぬ首相の意向で却下された)。


そんなファイナルマッチは、開始早々、観客席が静まり返る事態となっていた。


「ド……、ドうしタンでショウ、悠斗さん……」

エリカが呟く。


古代ローマを彷彿とさせる、円形闘技場形式の国立武闘館。

澄空悠斗の仲間達(※小学生ズ含む)は、城守蓮の貴賓席への誘いを丁重にお断りし、コロシアムの中ほどに席を取っていた。


「試合開始と同時に、砲撃城塞ガンキャッスルで牽制。数歩踏み込んで、右手から超爆裂(エキサフレア)。炎をブラインドにして、カラドボルグ。……速さも重さも、言うことなしの連携だが……」

「……殺す気か……?」

エリカの隣で、三村と峰も感想を言う。


いくらダメージ無効化結界があるとはいえ、もちろん上限を超えたダメージは危険である。

真剣勝負とはいえ、普通なら、大出力系能力者は少しは考慮する。

特に、最後のカラドボルグはまずい。身体を両断される痛みは、下手をするとショック死しかねない。


「ソードウエポン。澄空さんはどうかしたんですか?」

「私にも分からない……。試合の直前まで普通だったのに……」

「そうですか……。私のEOFでも分かりませんでしたから、どこか悪いという訳ではないようですが……」

「ナックルウエポンにも?」

剣麗華と賢崎藍華も困惑顔である。


普段は冗談めかして言っているが、実際に戦闘時においては、澄空悠斗は異常なほど冷静なのである。

誰もが驚く強力な戦術も、万に一つを手繰り寄せるような奇跡的な逆転劇も、それを最後まで遂行できる冷静さがあってこそ。

だが、今日の彼は……。


「悠斗君。何だか、焦ってる……?」

という剣麗華の言葉を聞いて、後ろの席に座っていた鏡明日香とその仲間たちが、びくんと背中を震わせた。


「や、やっぱり、あんな状態で試合させるのまずかったんじゃないかなぁ……。姉御……」

「だからみんなで今日の朝、悠斗に棄権を勧めにいったんじゃないの。剣さん達には内緒にして……」

「むしろそれで逆に追い詰めてしまった感があるんですが……」

「ふみゅう……。悠斗、繊細……。私達どうすれば良かったの……?」

前列の高校生達に聞こえないように、ひそひそ話をする小学生ズ。


事情を知っている分、高校生ズよりも小学生ズの方が深刻そうな表情をしているが、中でも明日香は特別だった。


「悠斗は確かにヒーローだけど。私、無理してまで勝って欲しいという訳じゃないんだよ。悠斗……」



☆☆☆☆☆☆☆



「ぜっ……は、ぜっ……は……」

片膝を着いたまま動かない臥淵さんを見ながら、必死で息を整えようとする俺。


そして、息を整えながら思う。

……やり過ぎたかもしれない。


身体の状態については、ある程度覚悟していたつもりだった。

もちろん、実際に試合が始まったら準備段階とは話が違う、というのはあるが、それだけではない。


……なんというか、ヤバかった。


臥淵さんとは10年ぶりに闘うことになるわけだが、あの時はこんなヤバい感じはなかった。良く覚えてないがたぶん。

いや、それどころか、再覚醒してから立て続けに闘うことになった強敵たちと比べても……。


「ふぅ……。やべぇやべぇ。死ぬかと思ったぜ」

「!?」


俺の予想を裏付けるように、何食わぬ顔で臥淵さんが立ち上がって来た。

ダメージ無効化結界がある以上、外見上のダメージがないのはいい。


けど。


「けど、こういうんじゃないよなぁ? 『澄空悠斗』の強さは。エキシビジョンだと調子がでねぇか?」


……全く効いてないのは、どういう訳だ!?



☆☆☆☆☆☆☆



「蓮。これは一体どういうこと?」


バトルアリーナが見える一番いい部屋。いわゆる貴賓室。

その一角で、クリスタルランス・アローウエポン茜嶋光が、城守蓮に詰め寄っていた。

緋色瞳・犬神彰とともに、招待されていたのである。


「何故、私に聞くんですか?」

「まず一つには、管理局が内的ダメージまで無効化する結界を張ってないか疑っている」

「そんなもの張れたら、試合にならないじゃないですか?」

それだとただの演武である。


「あと、蓮。戦闘狂だから」

「引退して管理局長までになった元チームメイトに、なんてことを言うんですか……」

溜息を吐く蓮。

そもそも蓮は、管理局長として閣僚の応対をしないといけない立場であり、あまりクリスタルランスとばかり話していられないのである。


が。


「しかし、城守君。分かるのだったら、わしも教えてもらいたいのだが」

と、剣首相に言われてしまっては答えるしかない。


「実はしばらく前から気になってはいたんですが、最近、一部の幻影獣を相手にした時の剛の被ダメージが、極端に低いんですよ」

「? 防御を覚えたってことかいな」

「『被弾』はしてるんです。ただ、それが『効いていない』。しかも、それに反比例するように継戦能力が落ちている」

犬神彰の質問への蓮の答えを聞いて、閣僚からも何かに気付いたような声が上がる。


「そうです。あれはおそらく、変質した剛のBMP能力の一部。多大なコストと引き換えに、特定のBMP能力のダメージをカットする能力だと思います」

「どのくらいカットするんですか?」

「私の予想では、約9割」

簡潔な城守蓮の予想に、貴賓室にざわめきが走る。


「9割もカットされたら、さすがにかなわんなぁ……」

「その『特定の種類』のBMP能力を使わないよう、ユトユトに言わないと……!」

犬神と茜嶋がそれぞれ心配する。というか、ナチュラルに悠斗の味方に付いている辺りは、臥淵剛が御愁傷様ではあるが。


「それは難しいかもしれません」

「? 何故?」

首を振る蓮に、茜嶋が疑問を返す。


「剛がカットしているのは……。おそらく、『直接物理攻撃以外全て』です」



☆☆☆☆☆☆☆



「いくぞぉ!」

豪快な怒声と重量に見合わない、恐ろしいほどのスピードで臥淵さんが間合いを詰めてくる。

まるでダンプカーが迫ってくるような迫力だが、ここは引いた方が危ない。


劣化複写イレギュラーコピー砲撃城砦ガンキャッスル!」

十分に引きつけたうえで、超至近距離から砲撃城砦ガンキャッスルを叩きこむ。

対戦車ロケットを撃ち込んだような猛烈な音とともに、臥淵さんが2・3歩あとずさるが……。


それだけだった。


「この……!」

劣化複写イレギュラーコピー引斥自在ストレンジャー!」

ダメージはないだろうが、引斥自在ストレンジャーで露骨に距離を引き離す。


劣化複写イレギュラーコピー捕食行動マンイーター!」

《おい!》

あ……。


ガルアの大口を召喚してから気付く。

異次元に送るこのBMP能力は、ダメージ無効化結界でも防げない!


やばい!


と、思ったのもつかの間。

なんと、臥淵さんは捕食行動マンイーターに真っ向から掴みかかった。


「…………ぎっ」

大口の上唇と下唇を掴み、ギリギリと音を立てながら握りつぶしていく。


あの人、ホントに人間か!?

《……辞めたのかもしれん》


が、それならそれで好機。


「おおおおぉおお!!」

バトルアリーナ全体を震わせるような轟音と共に、捕食行動マンイーターが地面に叩き付けられる。

捕食行動マンイーターは消滅していくが、代わりに臥淵さんも隙だらけである。


劣化複写イレギュラーコピー砲撃城砦ガンキャッスル全力突撃アサルトチャージ!」

身体能力を強化して突撃し、至近距離で砲撃する、砲撃城砦ガンキャッスルの派生技。

本家の峰もあまりやらない技らしいが、教わっておいて良かった。


「これじゃ、軽いぜ!」

俺を真正面から受け止めた臥淵さんが吠える。

「知ってますよ!」

臥淵さんが掴みかかってくる前に。

幻想剣レーヴァテインを召喚する。


「ゆ……!!」


ほぼ禁じ手。

至近距離からの……。


「爆ぜろ炎剣! レーヴァテイン、解放ー!!」

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