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BMP187  作者: ST
第四章『境界の勇者』
228/336

私の考えた最強の必殺技

「今日の昼御飯は、お腹いっぱい食べても大丈夫ですよ」

と賢崎さんが言ってくれたので、いっぱい食べた。


雪風君の作る昼食は物凄く美味しかったが、賢崎さんのボディブローで吐くといけないので、2日目・3日目は控えていたのである。

ただ、少し食べすぎたかもしれない。

食休みを長めに取ってくれないか、賢崎さんに交渉してみることにした。

すると。


「いいですよ。昼食後はミーティングです」


とのことだった。

ということで今に至る。


◇◆


ミーティングということで、俺達はレクリエーションルーム(※初日にマッサージ騒動があったところ)に集められた。

集められたメンバーは、俺・麗華さん・賢崎さん・春香さん・雪風君・三村・峰・小野・エリカ・天竜院先輩・五竜の皆さん……、要するに全員である。

特に天竜院さんチームはあんまり関係ない気がするんだが、自分達の合宿はいいんだろうか……?


「本日のテーマはこれです」


と、畳に座らせたみんなの前で、賢崎さんが持ち込んだホワイトボード(※これいいんだろうか?)に何やら書き始める。

書かれた字は……。


『最強のBMP能力について』


だった。

…………。


「あの、賢崎さん……?」

「まぁ、まずは聞いてください」

と、俺の質問を遮って賢崎さんが話し始める。


「澄空さんのBMP能力、劣化複写イレギュラーコピーは、とても異質なスキルです」

そうなの?

「複写できる量にも種類にも制限がないとか、見ただけで複写できるとか。性能だけ見ても十二分に異常なスキルなんですが、一番恐ろしいのは、『複写ではない』こと……」

賢崎さんが一度言葉を切る。


「目撃したBMP能力の構成を一瞬で把握・理解、さらには自分に使いやすいように作り変えて習得……。脳が焼き切れないのが不思議なほどの神業です。なんちゃってバカとか言われる訳です」

……なぜ今、非難された?

「スキルを奪っている訳でも、スキャンしている訳でもないんです。これがどういうことか分かりますか?」

言われても、もちろん分からない。

と思っていると……。


「完全な形でイメージができるならば、複写元自体必要ない、ということ?」

麗華さんが言う。

複写元が必要ない?

それって……。


「そうです。模倣は、発展を経て、創造へ至る。自分で新しい能力を創り出す……、創造次元クリエイト、とでも名付けましょうか」

賢崎さんの発言に、皆が言葉を失う。

た、確かに、それはほんとに無敵のBMP能力だとは思うけど……!?


「け……賢崎さん……」

「分かっています。これはあくまで理論上可能であると言うだけの話です。いきなり、やれ、というつもりはありません」

「言われても困るんですが……」

「ラスボス戦までに間に合わせてくれれば大丈夫です」

「そもそもラスボス戦をする予定がないんですけどね!?」

本気か冗談か分からない賢崎さんのセリフに、一応全力で突っ込む俺。


「しかし、澄空。セカイ系のラスボスだったら、こっちもイミフな能力を用意しておかないと太刀打ちできないぞ……」

「わざわざセカイ系にしなくていい」

真剣な顔で向き直ってくる三村にも、一応突っ込んでおく。

「セカイ系? どんな恐ろしい属性なんだ?」

「知らなくていい」

峰にも釘を指しておく。


そんな俺達を見ながら、賢崎さんが口を開く。

「まぁ、セカイ系かどうかはともかく、これからどんな幻影獣が出て来るか分からないんです。こういう話をしておくことは意味があると思います。その場のノリと主人公補正で、魔女の魔眼さえ覆すような澄空さんでも、伏線は必要ということです」

「…………」

やっぱり、賢崎さんが少しツンだ。

まさかとは思うが、まだレオの前に闘った時のことを根に持っているんだろうか……?


「そもそも、今日はルーキーズマッチのための合宿最終日なんだし、わざわざ今やらなくても……」

と言いかけて気が付く。

ひょっとして……。


「はい。今回の特訓はほぼ完成しています。あとは気分転換と、思い出作りもいいかと。澄空さんもせっかく合宿に来て、皆さんと遊べてないのは寂しいでしょうし」

「…………」

わ、分かりづらい……。

賢崎さんの気遣いが分かりづら過ぎる……。

女心は、レベルが高すぎるぜ……。


「では、始めましょう。みなさん、自分の考える最強のBMP能力を。どんどん上げていってください」

眼鏡をくいっと上げながら、皆に促す賢崎さん。

さすがに、皆呆れているだろうと思っていると。


「はいっ! はいはい! 私は、澄空さ……君には、透子様の極天光がピッタリだと思います!」

いきなり、五竜の青っぽい人(※確か、風間さん)が勢いよく挙手して発言した。

「ちょ、ちょっと、いきなり、何言ってるの仁美?」

「だってリーダー。ひょっとしたら契約するんだし、ツイン極天光とか、凄く燃える展開じゃない?」

「か……軽々しくそういうことは言わない方がいいわ。契約のことは私達のでる幕じゃないし……」

「それに、天竜院流の秘奥義だぞ……」

「…………」

いきなり、五竜が(※無口な黒っぽい人を除いて)ワイワイやり出した。

というか、まずい。

実は最初から気づいていたのだが、五竜が俺に対して明らかに好意的になっている……!


「ちょっといいか、三村。俺の印象では、五竜の人達、澄空にあまり良い感情を持ってなかったと思うんだが……」

「覚えておけ、峰。澄空は、少し目を離すと、受動的かつ積極的にフラグを立てる。いつの間にやら、五竜と和解したとみた。しかも、原因も良く分かってないままで……!!」

小声で戦慄する峰と三村に、それ当たり、と心の中で頷く俺。

ちなみに、和解したのは今日の午前中です。


「それくらいにしておけ。そもそも、最強の能力を『創り出す』と言っていただろう? 既存のBMP能力では駄目なんだ」

天竜院先輩がぴしゃりと締める。

そうなのだ。

既存のBMP能力では、劣化複写イレギュラーコピーしてしまう。

創造次元クリエイトで俺の全BMPを使い切るためには、新能力でなければ意味がないのである。


「はい!」

「はい、次、三村さん」

「時止めはどうでしょうか? ぶっちゃけ、無敵だと思います」

「時空操作系は負担が大きいですから……。どう見ても相性の悪い澄空さんでは、焼き切れてしまうかもしれません。脳が」

……焼き切らんで欲しい。


「いいか?」

「はい、峰さん」

勇気の咆哮ブレイブハートでは駄目なのか。あれを融合進化ハイブーストなしで使えるようになれば、問題ないと思うんだが」

発展継承イノベーションは、少し扱いが特殊なので無理ですね。もちろん、強力な切り札ではありますが……」

ボス戦の度に融合進化ハイブーストしたのでは、身がもたないしね……。


「ハイ! 私ハ、真・豪華絢爛ロイヤル・ブレイブハートがイイと思いマス! 世界デ、最モ華麗な技名デス」

「エリカさん。ネーミングではなく、内容の話し合いをしているんですが……」

珍しく突っ込まれるエリカ。


「小野さん、発案者として、何かないんですか?」

「ごめん。僕は、創造力はないんだよ」

小野が今回の件の発案者という重要情報を、あっさりと暴露したうえ特に説明もない賢崎さん、素敵です。


と。


「明日香さん? 案があるのでしたら、どうぞ?」

「あ、い、いえ。違います。いいんです……」

明らかに何か言いたげにそわそわしていたが、姉御は発言しなかった。

少し、興味あったんだが……。


「仕方ありませんね……」

と、賢崎さんが俺の方を向く。

「え……えと」

「えと、じゃないです。自分のことなんですから、しっかり考えてください。どんなBMP能力がいいんですか?」

「い、いや、ちょい待ち」

どんな仕事がしたいんですか、並みに難しい質問である。


「そ、その前に、賢崎さんの案を聞かせて欲しいな」

「? 私ですか?」

苦し紛れに言ったセリフに、ぐいぐい来ていた賢崎さんが止まる。


「そうですね。やはり、事象の書き換え、ではないでしょうか。起きたことをなかったことにしたり、起きるはずのないことを起こしたり。これができれば、たいていの敵には勝てると思うんですが」

「…………」

…………。


「「…………」」

えと……。


「な、なんですか! 何故、皆さん下を向くんですか!?」

賢崎さんがプリプリと可愛く怒る。

ただ、賢崎さんの場合本気で言っているので、実行させられる側としては、普通に困る。


と。


「ナックルウエポン。私も賛成」

「なんと!」

と賢崎さんが言った。


「ソードウエポン。貴方が私の味方をしてくれるなんて……」

「別に味方をしたわけじゃないんだけど」

と前置きしながら、麗華さんが発言を始める。


「私のおばあ様が、そういうBMP能力だから」

「? 剣碧氏ですか? 魔剣クラウ・ソラスは、空間を概念的に切断するBMP能力だったはずですが?」

「普段それしか使わないけど、おばあ様のBMP能力名は、聖魔剣士ツインソード。もう一本の剣がある。といっても、私も見たことはないんだけど」

「それが、事象を書き換える剣だと?」

「うん。私には幻創できないみたいだけど、極めて限定的ではあるけれど、世界のあり方そのものを制御する魔法剣。名前は……」

と、俺の方を見ながら。


「聖剣エクスカリバー」

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