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BMP187  作者: ST
第四章『境界の勇者』
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幻影戦闘『Bランク幻影獣ベルゼブブ』

片翼の去った城の客室。

首謀者の割にどこか晴れない顔をしている小野に、ミーシャが話しかける。


「ソータ。戦闘が始まったわよ。……というか、もう終わったんだけど」

「え?」

さすがにきょとんとする小野。


「戦闘開始から2分とかからず勝負あり。ベルゼブブは分裂能力を失い、体を半分にされて逃走。……結果自体は予想通りだけど、さすがにここまで圧倒的とは思わなかったわね……」

「覚悟が新しい力をもたらしたかな……。相変わらず出鱈目なヒトだよ」

優しい顔で笑う小野。


「ところで、ベルゼブブはどうするの? 放っておいていいの?」

「悠斗君が追っているからねぇ。逃げ切れたら褒めてあげましょ」

「? なんで、今さら悠斗君がベルゼブブを追うの?」

「ベルゼブブがあの子を攫ったからでしょ」

「?? なんで、ベルゼブブがあの子を攫うのさ?」

言われて、ミーシャは少し考え込む仕草をする。


そして口を開く。


「一言で言うと、洗脳失敗、かしら?」


その落ち着いた物言いこそが、四聖獣ミーシャ・ラインアウトの澄空悠斗に対する評価の表れなのかもしれない。



☆☆☆☆☆☆☆



豪華絢爛ロイヤルエッジ超加速システムアクセルを連発しながら、半透明の刃の階段を駆け上がっていく。

何メートルくらいかは分からないが、首都でこれより高い建物はないだろうな、というくらいには高いところまで来ている。そしてまだ上がっている。

実は若干高い所が苦手だったような気もするが、今となってはもうどうでもいい設定である。


「というか、こんな高いところまで来て、何故普通に息ができてるんだ?」

ふと疑問に思って呟く。

何か、周囲に空気の膜みたいなのが張られているみたいな気もするし……。


《あの巨乳と大将に感謝。……だな》

「?」

中の人の声に疑問符を浮かべながらも……。


「見えた!」

明日香を抱えて飛ぶベルゼブブを発見する。

やはり、速度はそれほどでもない。

追いつける!


劣化複写イレギュラーコピー豪華絢爛ロイヤルエッジ

最後の足場を召喚し。

足をかける。


ベルゼブブまでの距離は100メートルほど。

少し強めに発動すれば、一回で追いつける!


劣化複写イレギュラーコピー超加速システムアクセル!」


加速しながら右拳に力場を集める。

拳が青い光で覆われる。

ベルゼブブの姿が迫ってくる!


猪突猛進オーバードライブ!」

姉御を抱えているベルゼブブの脚を、根元から破壊する。


「ユウ……!」

「返せ」

千切れかけた脚から引っこ抜くように、俺は明日香を奪還する。


そして、ちょうど加速が切れて失速し始める。


「ユウト! 後ろ!」

明日香は対面で抱かれている。

劣化複写イレギュラーコピー銃剣士シェイプシフト

後ろを見れる明日香の言葉を信じて、銃帝・飯田先輩の、近接戦闘用の剣を召喚する。


「っ! はぁっ!」

空中なので当然足場がない。

気迫を込めた回転斬りで、ベルゼブブの胴を薙ぐ。


分裂能力も装甲もないベルゼブブの身体は、簡単に真っ二つになる。


「ギ……!!」

「逃がすか!」

姉御と銃剣士シェイプシフトを抱えたまま、俺は縦回転をする。

サッカーのオーバーヘッドキックのような体勢で、俺の右足をベルゼブブの口に突っ込む。


《む……無茶するな、悠斗!!》

「大丈夫だ! もうこいつには、まともな力は残ってない!」

アイズオブゴールドが、そう言っている!


《だから、解析能力はおまけだって言っただろ! 下手すりゃ、足、噛み千切られてたぞ!!》

「マジで!!」

さすがにそれは適当過ぎると思うの!!

無事で良かった、俺の足!!


「とにかく……」

これで決める!!


「変われ、銃剣士シェイプシフト!」


俺の意思に応じて、銃剣士シェイプシフトが剣から二丁拳銃に姿を変える。

剣を握っていた右手には銃が残るが、左手で明日香を抱えている以上、もう片方の銃は下に落ちて……。


「っと」

と。


「取ったよ、ユウト!!」

「でかした明日香! 撃て!!」

「はい!!」


浮力を失ったベルゼブブと足場を消した俺達は、回転しながら地表目掛けて落下していく。

しかし、俺の右足をベルゼブブの口に突っ込んでいるおかげで両者の距離は離れない。

当初の半分の大きさになり抵抗する力も失ったベルゼブブに、俺と明日香はありったけの弾丸を撃ち込む!!


ありったけとは言っても、この銃は俺のBMP能力で召喚した幻の銃。

弾切れなどは存在しない。


「休むな姉御! 撃ち続けろ!!」

「分かってる! というか、ユウトの方が遅い!!」

「確かに!!」

俺の方が連射が遅い。

銃なんか使い慣れていない上に、高速回転落下しながらなので、うまく引き金が引けないのだ。


《負けてんじゃねぇよ……》

と、アニキに駄目だしされるのも、もっともである。


そうして、二人合わせて百発以上撃ち込んだ頃。


「ユウト。弾が切れた……!?」

姉御が唐突に叫ぶ。


確かに銃剣士シェイプシフト自体に弾切れはないのだが、俺の方の息が上がったのである。

まぁ、銃はもういい。


銃剣士シェイプシフトを消し。

右足をベルゼブブの口から引き抜いて、縦回転。

俺と奴の頭の向きが合う。


「少し熱いぞ姉御! 歯を食いしばれ!!」

「熱いって、これ以上なにするつも……ひぃっ!」

炎に包まれた俺の右腕を見て、姉御が悲鳴を上げる。

まぁ、いくら超級の美少女とはいえ、小学生には刺激が強い光景ではある。


劣化複写イレギュラーコピー右手から超爆裂(エキサフレア)ーー!!」


渾身の炎が穴だらけになったベルゼブブの身体を焼いていく。

装甲をなくした蛾は、もはや耐えることはできず。

今度こそ、完全に消滅した。


そして、俺は大事なことを思い出す。

登場時に言い損ねた決め台詞を言わなければならない。


「魂まで、灰になりやが……」

「ユウトユウトユウト! 格好つけてる場合じゃないよ!! 落ちる落ちる墜ちる!!」

確かに!!


劣化複写イレギュラーコピー豪華絢爛ロイヤルエッジ。と、超加速システムアクセル!」

大慌てで召喚した足場で落下を止める。

まだかなりの高さがあるが、とりあえずは一安心。

では、改めて。


「魂まで。消し炭になり……」

「ゆ、ユウトぉ……」

「……なんだよ姉御」

「凄すぎいぃぃ……」

気付くと、対面で俺に抱かれたまま、姉御が目を回している。

まぁ、だいぶん振り回したからなぁ……。

仕方ない、決め台詞は諦めるか。


《おまえは時々、ビビりなのか、度胸があるのか、頭がおかしいのか、分からなくなるな……》

というアニキの嘆息を聞きながら、豪華絢爛ロイヤルエッジを下に向かって階段状に召喚する。


「ど……どうするの?」

「普通に降りていくよ」

まだかなりの高さがあるが、慌てて降りることもない。

姉御を抱えたまま一段ずつ降りていくことにしよう。

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