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BMP187  作者: ST
第四章『境界の勇者』
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ルーキーズマッチ『峰達哉vs茜嶋光』4

峰達哉は驚いていた。


(いくら実力差は歴然とはいえ、少し気を抜き過ぎじゃないか……?)

という訳である。


ダメージ無効化結界は、衣服の破壊を防いだりはしない。

だから、峰は十六夜氏に頼んでちょっと引くくらい頑丈な素材のトランクスを取り寄せてもらったのだが……。


(直撃させなくても、かするだけで破けそうだぞ……?)


尊敬する女性の胸を公共の電波に載せるのは心苦しいが、峰はこの闘いを実戦だと思っている。

茜嶋光が、この試合を侮っているというなら……。


「い、いや!!」

目が合った瞬間、瞬時に考えを改める峰。

油断なんかしていない。

色気たっぷりの水着と眠そうな目元とは裏腹に、眼の奥に宿っている光は、紛れもなく本気だった。

……ならなんでそんな格好をしているのか、という話だが。


(考えても仕方がない。水着のことは考えずに。作戦は当初の通りだ)

雑念を振り払い、プールに近づく。


スタート台の近くに浮かべられているのは、半径1メートルほどの円形の板。

この上に乗って闘う。

基本的に、ここから落とせば勝ちである。


峰が板に乗ると、3人の水着美女がプールに入って寄ってくる。

「やっぱり、この板は頑丈だな……」

と、峰が足場を確認している間に、3人の水着美女により10メートル地点まで運ばれる。


もちろん、茜島光の板も同じように運ばれて来ている。


50メートルプールなので、お互いの距離は30メートルほど。

攻撃する分には少し遠く感じるが、攻撃される分にはモロに射程距離である。


……というより。


(茜嶋さんが強すぎるだけなんだがな……)

狙いが正確な上に、距離で威力がほとんど減衰せず、ついでに着弾時爆発する。

清々しいくらいに最強の遠距離攻撃なのである。

ダメージ無効化結界があるとはいえ、本気弾の直撃を受けるとショック死しかねない……。


(実戦のつもりなんだ。怖がることはない。ダメージ無効化結界など、ないものと考えればいい)

覚悟を決めて静かに立ち上がる峰。

女性の歓声が一際大きくなった気がするが、そんなものを気にしている暇はない。


『それでは、試合……開始です!!』

アナウンスとともに、黄色のビキニを纏った茜嶋光が右手をこちらに向ける。


天閃レイ

爆発も軌道も自由自在に操れる光線攻撃。

複数同時に放つこともできるはずだが。


「まずは一発で来る……!!」

峰が空気を練り上げる。

いつものように散弾にはしない。

全精力を注いで、右手に一発の空圧弾を作り上げる。

自分自身が脅威を感じる程に空圧弾の威力が高まった頃。


茜嶋光から一条の光線が放たれる。


砲撃城塞ガンキャッスル!!」

光線に向かって、全力で空圧弾を放つ!!


が……。


「ちっ!!」

いともあっさりと空圧弾を弾いた光線が、峰の眼前に迫る。



☆☆☆☆☆☆☆



「み……峰!!」

「大丈夫ですよ。直前でかわしてます」


天閃レイと客席前に張られた障壁の激突で(※物理的に)揺れる観客席で、賢崎さんがクールに教えてくれた。


「そ、そうなのか……? あれだけ際どいタイミングだったのに、良くかわせたな……」

賢崎さんを信じてほっと胸を撫で下ろす俺。

というか、あんなに見事に飛び道具を弾かれたら、俺だったら絶対当たってるな……。


「ふむ……。いいですか、ユウト?」

「え……な、何? けんざ……藍華?」

くるっとこちらを向いて、教師のように指を立てる賢崎さん。


「今のは、峰さんが、お互いの出力差とタイミングを測ろうとしてたんですよ?」

「え?」

「撃ち負けるのなんて最初から折込済みです。かわせないはずがありません」

「そ……そうだったのか……!?」

あ、最後のは、後ろの席で聞いていたガッツの声です。


「じゃあ、今のは予定通り?」

若干の期待を込めて聞く俺。



☆☆☆☆☆☆☆



「…………」

背後で天閃レイと障壁が激突した轟音を聞きながら、峰達哉は思う。


(ひとつだけはっきりした)

あまりにも次元が違う、と。


撃ち勝つ、どころではない。

茜嶋さんは明らかに全力ではないのに、進行方向を変えさせることさえできなかった。

さきほど以上の威力や連撃を恐れる必要さえない。

乗っている板の方を狙われれば、次で100パーセント負ける。


……移動する手段がなければ、だが。


「大丈夫だ……」

左手を水に付けながら呟く。

今回の作戦を考えてくれた十六夜さんの言葉を借りるなら「難易度SがSSに変わった」程度のこと。


茜嶋光の放つ、追撃の天閃レイを見ながら。

「やることは変わらない」

呟く。


爆撃領域ビーストイーター


空気ではなく水を圧縮。

方向を調節して放つ。



☆☆☆☆☆☆☆



『なな、なんとなんと峰達哉選手。ジェットスキーのように板を移動させて、天閃レイをかわしましたー!!』


着弾した天閃レイが上げる水柱を見ながら、興奮した志藤さんのアナウンスを聞く観客席。


「け……賢崎さん!?」

「はい、見事な応用です! 四聖獣の力場を削り取る、なんて離れ業ができなくても、十分見事な新技になってます。実に、十六夜氏らしい発想です」

ナックルウエポン様の評価も上々。


というか。


「これ、ヤバくないか?」

ガッツや。

「光さんの方は移動することができません……っ!!」

ハカセの言うとおり。


ひょっとして、峰、いけるんじゃ……?



☆☆☆☆☆☆☆



左手で水を操りながら高速で板を駆る峰。


「よし……!」

いくら遠距離攻撃系最強だからといって、同じことが茜嶋光にできる訳ではない。


茜嶋を中心に、半径5メートルほどの円を描くように移動しながら、隙を伺う峰。

対して茜嶋は、常に峰を視界に収めるために、板の上でくるくる回転している。

回転し過ぎて目を回す、なんて可愛らしい展開はさすがにないだろうが、足を滑らせてこける、といったことは普通にありうる。


もちろん、峰が待っているのは、そういう自爆ではない。


「タイミングは覚えたからな……」

狙うのは、天閃レイの発射の瞬間。


「かわして、飛び込んで、体当たりでプールに落とす。ということ?」

眠そうな目で、お遊戯のようにくるくる回転していた茜嶋が、突然話しかけて来た。


「まともな力比べじゃ勝負にならないとはいえ。ルールを利用しているみたいで申し訳ありません……」

「そんなこと気にしなくていい」

と。

茜嶋の回転に合わせるように、フラフープのような光の輪が出現する。


「せっかくだから、頑張って」


励ましの言葉と共に。

フラフープから、無数の光が伸びる。



☆☆☆☆☆☆☆



「け……賢崎さん賢崎さん!!」

「はい、あの密度ではかわせませんね!」

かわせないのかよ!!



☆☆☆☆☆☆☆



「行け……」

放たれた天閃レイ全方位攻撃に合わせて、板を突っ込ませる峰。


天閃レイは軌道を操れる上に、任意の場所で爆発できる。

この密度では、時間でも止めない限り、物理的に突破は不可能。

だから。


「はぁっ!!」

全力で右拳を天閃レイの一つに叩き付ける!!


「な……なに!?」

さすがの茜嶋の顔にも困惑が浮かぶ。


一瞬、峰の板の突進が止まるが。

「奪え、爆撃領域ビーストイーター!!」

掛け声とともに、峰の手で掴まれた天閃レイの制御が奪われる。


いくら密度が濃かろうと、進行直線上のものさえ封じてしまえば、残りの天閃レイは問題外。

右拳に光の束を携えたまま、峰が茜嶋に迫る。


「まだまだ」

「!!」

全方位攻撃を抜けた峰の面前、茜嶋光の背後に衛星のように浮かぶ数個の光。


(再装填が早過ぎる!!)

正直、この時点で敗北はほぼ確信できた。

が、実力差はもちろん承知の上の戦闘。

負けるなら、一歩でも前で!!


「いけ!!」

「頑張って」

制御を奪った天閃レイを全力で放つ峰に、むしろ優しげな茜嶋の声が重なり。


巨大な水しぶきが上がる。

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