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BMP187  作者: ST
第四章『境界の勇者』
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デパートでお買い物

昼飯時には少し早い時間なのに、レストランは意外なほどに混んでいた。

しかし、幸運にも一席だけ空いていたので、そこに座ることにした。


「ゆ、ユウト……。初めに聞いておきたいんですが」

と、眼鏡をキラめかせながら、ハカセが質問してくる。


「注文は、いくらまでならOKですか?」

「……上限は特になしでいいよ」

「た……対価なし、上限なし……? それを僕らに信じろというんですか!?」

「む……むしろそこまで警戒されると、俺少しヘコむんだが……」

真剣なハカセに、他意がないことを示す俺。


「ほ、本当に何食べてもいいんだな、ユウト!!」

「いいんですね、ユウト!!」

「い、いいっす……。けど、食べきれる範囲にはしとけよ」

「ぐ……胃袋小さくなってないかな、俺……」

「大丈夫! デザートなら別腹!!」

ガッツ&エール連合軍の士気も尻上がりに上がっている。


「悠斗君、私は自分の分は自分で払うけど? 経済力に不安はないし……」

「いや、ここは奢らせてよ麗華さん。こういう時はお金だけの問題じゃないんだ」

「三村言うところの『男のメンツ』というもの?」

「ソースが三村というところに若干の不安を感じるけど、だいたいそんな感じ」

「分かった。悠斗君のメンツのために奢られる」

ということで、麗華さんも奢られてくれることになった。


「ついでだ。小野も奢るよ」

「悠斗君。君は僕を萌え殺すつもりかい?」

「なら萌えんな」

ついでに小野にも奢ることにした。


という訳で、皆が注文した料理を紹介することにしよう。


まず俺、澄空悠斗。

『チキン南蛮定食』。

ささみチーズフライに食感が似ているためだと思われる。自分のことだが。


次、剣麗華さん。

『うどん定食』。

なんでやねん。


次、小野倉太君。

『チキン南蛮定食』。

理由は不明。


次、ガッツ。

『ハンバーグ定食』『鳥のから揚げ』『ミートボールづくし』『焼き鳥盛り合わせ』『アイスクリーム』『ミックスジュース』

脂肪分が多そうである。


次、ハカセ。

『焼き魚定食』『ミルフィーユとんかつ』『シーザーサラダ』『枝豆』『抹茶』『おにぎり三種盛り』

コンセプトが分からん。


次、エール。

『お子様ランチ』『三色アイス』『チョコレートパフェ』『オレンジジュース』

実に可愛らしい。是非、そのままエリカ似の美少女に成長してほしい。


それから……。


「姉御は……食べないのか?」

「迂闊だったわ……」

と、俺の質問に苦々しい声で返す姉御。


「今日は食べられない日なのよ……」

「た、食べられない日……?」

「知らなかったとはいえ、この間の悪さは一級品ね。きっと将来、毒夫になるでしょう。いえ、なるに違いない」

「そ……そんな呪いをかけるような顔で言わなくても……」

俺に落ち度は全く見当たらないが、とりあえず姉御怖ぇ。


「す……すみません、姉御。僕ら……」

「余計な気を使わないでいいから、食べておきなさい。明日から、また病院食なんだから」

申し訳なさそうに言うハカセに、笑顔で返す姉御。

……というか。


「姉御……というか、皆、一体何の病気なんだ?」

今まで気になっていたことを聞いてみる。

入院している以上病気なのだとは思うが、何の病気なのか想像もつかなかったのだ。


「えーと……」

「それはですね……」

「なんつーか……」

と、エール・ハカセ・ガッツが姉御の顔色を見ながら口ごもっている。

俺が頭にハテナを浮かべていると。


「私達は副首都区の出身なのよ」

と、ため息一つ付いて、姉御が口を開いた。


「副首都区……?」

予想外の単語に、俺は驚く。


副首都区は、この国の第二の首都と呼ばれていた大都市圏だ。

『幻影獣の存在基盤に干渉して存在できなくする』……要は、幻影獣のBMP能力を無理やり上昇させて存在できなくする。

そういう作戦が失敗して、人の住めない土地になった都市である。


「い、いや、しかし、副首都区の人達は……」

「確かに暴走した幻影獣にたくさん殺されたけどね。全滅した訳じゃないのよ。私達はこの通りピンピンしてるわ」

ぶらぶらと手を振りながら、姉御が言ってくる。


しかし、それならどうして……。


「悠斗君」

と。

唐突に麗華さんに声を掛けられる。


「薄々は気が付いていた。もっと早くに言っておくべきだったと思う」

「れ……麗華さん?」

普段無表情な麗華さんが、深刻な顔で話しかけてくる。


「副首都区出身者は隔離されるの」


「へ?」

唐突なセリフに疑問符が浮かぶ。


「麗華さん、何を言って……?」

「『コア』は、幻影獣のBMP能力を強制的に上昇させる。そして、急激にBMP能力が上昇した幻影獣は、たいてい凶暴」

「え?」

「人間にそれが起こらないという保証はない」

「…………っ!!」

麗華さんの一言に、頭に血が上ったような気がした。


「そんなことがあるのなら、計画自体認められてないだろ……」

「認可時は否定されていた。けど、事故があってから、この可能性についても、皆また不安になったみたい」

「そりゃ、ただの言いがかりじゃないか……!」

「? 悠斗君、何故怒るの?」

「へ? ……あ」

いかん。

確かに、麗華さんに怒っても仕方がない。


「いいのよ、ユウト」

と、そんな俺を、意外にも姉御が諌めてくる。


「疑わしいのなら、徹底的に隔離でも何でもして調べてくれりゃいいのよ。その方が、余計な面倒に巻き込まれずに済むわ」

「しかし……」

姉御のセリフに微妙に納得がいかない俺。

「ぶっちゃけ、俺ら金ないし。あそこの生活は無料だから、実は助かってたりして」

「な、なるほど」

ガッツのセリフに納得してしまう俺は、実はリアリストなのだろうか?


いや、リアリストとかそういう問題ではなく。

上条総合病院に居なければ生活できない状態ということは……。


「残念ながら、家族は行方不明です。捜索隊も入れませんからね、あそこには……」

達観したようなハカセの言葉が痛い。


と。


「それでも、目の前で死なせてしまうよりはマシかもしれませんけど……!」

「いつまで言ってんのよ、あんたは。いい加減に諦めなさい」

姉御を見ながら言ったハカセのセリフに、姉御が呆れたように返す。

……なんのことだ?


しかし……。


「副首都区も、事故前は首都に負けないくらいの大都市だったのにね」

もぐもぐ言いながら回顧するエールや。

「欲を掻いたのかもなぁ。あの計画が成功したら、首都が移ってたって話だからなぁ……」

同じく料理を楽しみながら言うガッツを見る限り、小学生ズの中ではもう諦めはついているらしい。


魔法の如き力を扱えるBMP能力にも、時を遡る能力は聞いたことがない。

だったら、俺たちにできることは……。


「副首都区の奪還だな……」

「え?」

俺の一言に、姉御達が反応する。


「賢崎さ……藍華が言ってたんだ。澄空悠斗が居る間なら、副首都区を奪還できる可能性があるって」

正確には、『澄空悠斗が居る間でなければたぶん無理』だが。


「でも……」

「澄空悠斗を抜きにしても、クリスタルランスも居るし、城守さんも居るし、正直けん……藍華は澄空悠斗よりはるかに強いし。今はきっと凄いチャンスな時期なんだと思うぞ」

不安げなエールに、力説する俺。


「しかし、ユウト。BMPハンターの人達の力を疑う訳ではありませんが、あそこは本当に普通じゃないんですよ。ノラ犬並みの頻度でBランク幻影獣に出くわすような状態なんですから」

「だ……大丈夫!」

ハカセの言葉に若干ビビるが、たまたま視界に入った人物の姿が俺に自信を与えてくれる。


そう。

賢崎さんよりも城守さんよりもクリスタルランスよりも。

『澄空悠斗』よりも。

さらに強くて頼りになるBMPハンターが存在する。


「大丈夫……。今、俺たちの世代には、剣麗華様がいらっしゃるからな!!」

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