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BMP187  作者: ST
第四章『境界の勇者』
175/336

測ってみよう、BMP2

「キサラギさ……じゃなかった、志藤さん。それくらいにしてください……」

やりたい放題な職員さんを見かねた三村が苦言を呈する。

……というか、この二人知り合いか?


「おや、ミムリンじゃないの? 相変わらずイケメンで何より」

「今気が付いたんですか……。あと、ミムリンやめてください……」

やっぱり知り合いらしい(※にしては、三村がげんなりしているが)。


「なぁ、三村。この人……」

「あ、ああ。プライベートのちょっとした知り合いなんだけど、まさか今日の担当職員だとは思わなかった」

「何言ってるのよ。賢崎さんが測定室予約したって聞いて、ミムリンに会えるかもって思って来たんじゃない」

「いや、明らかについさっき気が付いてましたよね……?」

とても珍しい。

三村が押されている?


「ほら、ミムリン、紹介紹介」

「はいはい……。えーと、澄空。こちら、BMP管理局のオペレータで志藤美琴さん。おまえの連絡担当のはずなんだけど、声聞いたことないか?」

「あ!」

思い出した!

そっか、どうりで聞いたことがあるはずだ。


「初めまして……はおかしいですね。BMP管理局オペレータにして、澄空悠斗ファンクラブ初代会長にして『くーにゃんず・ファンタジー』主宰、くーにゃん・キサラギこと、志藤美琴です。今後とも、ますますよろしくお願いしますね」

「…………よ、よろしくお願いしま……す?」

謎の単語を連発されて、俺の返事が疑問形になってしまった……

というか、オペレータさん、こんな人だったのか!?

しょっちゅうテンパるけど、良く通る声を持った素敵な女性だと思っていたのだが……。


って、そんなことより、エリカのBMP値測定中だ!!


「っと! ごめんエリカ! 測定結果どうだった? 120超えて……たか?」

呼び掛けながら、最後が疑問形になる俺。


エリカが両手を口元に当てて、表示画面を目を見開いて凝視しているのだ。

信じられないものを見ているかのように。


「え……エリカ、どうした?」

まさか値が下がったのか、と心配になって表示画面を覗き込むと。


『125』と表示されていた。


「ひゃ……125!?」

前回が119だったから……、6ポイントの増加!?


「これは……本当に驚いたね……」

ぽかーんとしている皆を代表して、小野が感想を漏らす。


緋色先生授業によると、BMP値はそもそも伸びない方が普通らしい。

それこそ、別人になってしまうくらい激しい経験をしなければ……。


「…………」


そう。

『深い経験と強い決意』がなければ、成長しないのだ。

エリカをそこまで成長させたイベントとして思い浮かぶのは、麗華さんから聞いたレオとの初遭遇の時のこと。


「う……嬉しいデス……」

喜びで目をわずかに潤ませているエリカを見ながら思う。


レオから麗華さんを逃がすために、どれほどの決意が必要だったのかを……。


だから。


「エリカ……」

「は、ハイ……?」


俺が言うことじゃないのかもしれないけど。


「ありがとう、エリカ」

「!」

瞬間。

座ったままのエリカに、いきなり抱きしめられた。


微かなのに強烈な印象を残す香りと、至近距離の流れるような金髪に圧倒される。


「エ……エリ……」

「! ご、ゴメンなさいデス、麗華さん!」

いきなり突き飛ばされる。

というか何故麗華さんに謝る!?


「エリカ……?」

「ユ……悠斗さんモ悪いんデスよ。ダ……誰にデモ甘い顔するカラ……」

顔を真っ赤にして、伏し目がちに言うエリカ。


「そ……そんなこともないと思うんだけど」

言いながら思う。

コレは可愛い。

三村が惚れるのも無理はない。


と、肝心の三村を見ると。


「…………」

「じゃ、測ろっかミムリン?」

「ミムリン言わないでください……」

「大丈夫よ。あと100年もしたら、また残念系イケメンの時代が来るって!」

「100年前にそんな時代があったみたいな言い方は止めてください……」

志藤さんに絡まれながら、眼に見えて残念臭を発していた。


今日は、三村のBMPを測るのが主目的なはずなのだが……。


「これは、駄目かもしれないな……」



☆☆☆☆☆☆☆



などと、澄空悠斗がエリカの真の可愛さと『くーにゃんず・ファンタジー』の謎の一端に触れていた頃。


BMP管理局のエントランスホールの掲示板を見ながら、4人の少年少女達が顔を突き合わせて議論していた。


「姉御。測定室、どこも1時間待ちみたいだぞ」

「……まったく。そんな頻繁に測ったって変わらないって言うのに、みんな好きねぇ」

「ダイエット中に女性が何度も体重計に乗る、みたいなものですかね」

「あ、私、それ、分かる」

お人形さんのように美しい少女を含む小学生の四人組。

鏡明日香とその仲間達である。


「どうします、姉御? 外出時間も余り残っていませんから、今日はとりあえず帰りますか?」

「そね。次は予約してから来ましょ」

眼鏡をかけた賢そうな男の子……澄空悠斗言うところの『ハカセ』の進言を聞き入れて、明日香が帰ろうとしたところで。


「って、ちょっと待て、何だよ、これ!?」

元気そうな男の子……澄空悠斗言うところの『ガッツ』が大きな声を出す。


「どうしたの?」

キョトンという感嘆符を浮かべながら、可愛らしい女の子……澄空悠斗言うところの『エール』がガッツに質問する。


「いや、この第3測定室だよ! こんなに混んでるのに、『1時間貸切』ってなんだよ、これ?」

「1時間? それは凄いわね。どこの1流ハンター?」

興味を持った明日香が聞く。

「えっと、申請者は……賢崎……藍華?」

「って、ナックルウエポンじゃないですか!?」

ハカセが驚く。


「ら……ラプラスの魔女さんが来てるんですか?」

「それだけじゃないですよ。『他6名』って書いてますから、ソードウエポンや本物の澄空悠斗も来てるかも……!?」

若干不安そうなエールに対して、興奮気味のハカセが言う。


「終わるまで待ってたら、サインとか貰えるかな?」

「外出時間が終わってしまいますよ」

「怒られるのは嫌だよね……」

ガッツ達が年相応の可愛らしい葛藤をしているところへ。


「ふむ」

姉御が頷いて。

言う。


「間違えたふりして、入れてもらいましょう」

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