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BMP187  作者: ST
第四章『境界の勇者』
163/336

救世主についての疑問点

上条総合病院。

首都にある総合病院で、幻影獣に係る疾患や、BMP能力者特有の症状の治療については、国内最高と言われている病院である。

新月学園にほど近い場所にあるため、学園生の利用も多く。

……上二文字を見れば分かるように、ある世界的権威が運営している病院である……。


「悠斗君。そんな嫌そうな顔せんでもええじゃろ。いくら絶望砕きの英雄とはいえ、毎回毎回ムチムチボインの美人女医に診てもらえるのは、ドラマの中くらいじゃぞ?」

俺の胸に聴診器をあてながら、幻影獣研究の世界的権威・上条弦博士が語りかけて来た。


「別にムチムチボインに診てもらってないから拗ねてる訳じゃないですよ」

そして、絶望砕きの英雄ってなんじゃらほい。

「なるほど。ということは、儂に診てもらうのが不安という訳じゃな?」

「いえ、そういう訳では……」

「まぁ、儂、医師免許持っとらんからのぉ」

「……ちょっと待ってください」

今、なんとおっしゃましたか?


「ここ、上条総合病院なんですよね?」

「そうじゃが?」

「院長って医師免許がないとなれないとか聞いたことがあるんですが?」

「儂はオーナーじゃ。言っておくが、雇っとる医師は、皆ちゃんとしとるぞ。ムチムチボインの美人女医もおる」

「じゃあ、なんで、その人たちが診てくれないんですか? いや、ムチムチボインは置いておいて」

「君の症例は特殊じゃからのぉ。儂でなければ診れんのじゃ」

「…………」

あんたはブラックジャックか?


「で、やっぱり、まだ使えんのかの?」

「はい……、さっぱりです」

と、ワイシャツのボタンを留めながら答える俺。


そう。

実は、今、俺は、BMP能力が使えない。

最初の異変は、レオを倒した日の夜。急に高熱と頭痛で意識を失い、気が付いたら、この病院に。

そこから、一週間入院して。

体調が回復したと思ったら、BMP能力が使えなくなっていた、と。


「やはりと言うか。体調には全く問題ないのぉ。完璧な健康体じゃ」

「そうですか」

「そもそも、BMP能力が使えなくなるなんて症例は滅多にないし、困ったもんじゃの」

「へ。そうなんですか?」

精神的なものとかで、結構使えなくなるんじゃないかと思ってた。


「精神的な逆境は、むしろプラスじゃよ。暴走の危険も秘めとるが……」

「危ないじゃないですか……」

「それでも、使えなくなることは滅多にないはずなんじゃよ」

「…………」

うーん。

でも、実際に使えないんだよな……。


「ふむ……。念のため、P値でも測ってみるか」

「P値?」

なんすか、それ?

「BMP能力と身体の適合性を示す指標じゃよ。100で標準。それを切ると、能力の使用による身体へのダメージが、わずかながら発生するようになる。逆に、100を超えていると、少なくとも身体的にはさらに強力な能力を使える、ということにもなるんじゃが……」

「それが、低くなっている可能性があると?」

「80を切ると危険じゃ。よって、生存本能がBMP能力の使用を拒んでいる……。飛躍しすぎかの?」

頭をぼりぼり掻きながら言う博士。


「いや、ありそうな話じゃないですか! そのまま使い続けて身体壊した人とかいるんでしょう?」

「おらん」

「へ?」

「普通は、P値は高いもんじゃ。100に近づくように。つまり、自分の身体の限界までBMP能力を使いきれるように訓練する。儂もこの業界は長いが、95以下になった者は見たことがないのぉ」

「そうなんですか?」

なんか意外だな。

身体の弱い天才BMP能力者、みたいな設定の能力者が居ても良さそうなもんだが。


「神様の思し召しとでも言うのかのぉ」

「へ?」

「強力なBMP能力を使う者は、必ずそれに見合った身体を持って生まれてくるんじゃ」

「必ず?」

「うむ。不自然なくらい、必ずじゃ」

「…………」

不自然なくらい、必ず?


「じゃから、P値が原因ということはまずありえん。あくまで、念のためじゃ」

「いやでも。例えば、後天的にBMP能力が急上昇したりしたら……」

「そんなことはあり得んわい。そんなことが可能なら、今頃、ダイエットなんかよりよっぽどはやっとる」

ですよねー。


◇◆


というような診察(医師免許はないらしいが)を終えた俺は、上条総合病院の病棟を歩いていた。

当たり前といえば当たり前だが、上条総合病院は、幻影獣関係の患者が極端に多い。

ここもそういう病棟だ。


とはいえ、別に歴戦の強者ばかりで埋め尽くされているわけでも、訳の分からない呪いに汚染されているわけでも、幻影獣を捕えて生体実験しているわけでもない(たぶん)。

見た目は、ごく普通の病院だ。

清潔な空間に、最新鋭の機器。

人気のない喫茶室の中央のテーブルでは、小学生くらいの3人の子どもが大型のテレビモニターを見ている。


彼らが食い入るように見つめる番組が気になった俺は、喫茶室の入り口からテレビモニターを見ることにした。



★☆★☆★☆★



タケゾウお兄さん:さぁ! いよいよ始まった『教えてタケゾウお兄さんinテレビジョン』! 季刊BMPでページが余ったから悪ふざけで始めただけのコーナーが、なんとテレビ進出! いくら若者のテレビ離れが深刻で視聴率がヤバいとはいえ、血迷ったとしか思えない暴挙! シンイチクン達はともかく、中年ライターがそのままテレビ出演するという投げっぷり! タケゾウお兄さんです!

シンイチクン:タケゾウお兄さん、飛ばし過ぎだよー! プロデューサーの機嫌を取ることも覚えないと、第1話で打ち切りだよー! あ、僕はシンイチクン。季刊BMPのライターとは全く関係ないただの子役だけど、もう他に仕事がなくなったので、ゴミみたいな出演料で引き受けました! よろしくっ!

メロンさん:え、えーと、二人とも? 一応、これ生放送だから、ほどほどにね……。雑誌の季刊BMPのファンの方には申し訳ありません。テレビバージョンの新キャラ、メロンさんです……。


※以下、描写が面倒くさいので、タケゾウお兄さん→タ、シンイチクン→シ、メロンさん→メで。


シ:じゃあ、まず、この問題からだね、タケゾウお兄さん。

タ:ん? なんだい、シンイチクン?

シ:決まってるでしょ? なんなの、この、クソビッチは?

メ:く、クソ……!?

シ:いくら残暑が残る季節だからって、スタジオで水着かビキニアーマーかコスプレか分からない格好している女なんて、目障り以外の何物でもないよー。

タ:こ、こらこら、シンイチクン。君、一応、設定的にも実年齢も小学生なんだから、ほどほどにね。色々と。

シ:ほどほどじゃないよ、タケゾウお兄さん! 『教えてタケゾウお兄さん』は、タケゾウお兄さんが一人で書いてたんだよね! それで、タケゾウお兄さんとシンイチクンの軽妙なやりとりが人気を博したのに、『テレビにするんだから色気もないと』なんてアホプロデューサーのゴリゴリ押しに屈して、それでいいの!? こんなクソビッチに、僕らの神聖なコーナーを汚させるなんて!!

メ:……確かに落ち目のグラビアアイドルですが、別にクソビッチではないんですけど……。

タ:でも、メロンさん、実際、色っぽいし……。

シ:こんな乳、シリコンかもしれないじゃないか!

タ:どうせ、触らせてくれるような関係にならないし、そんなの関係ない!!

シ・メ:…………。

タ:はっ! い、いや、今のは……。

シ:ごめん、タケゾウお兄さん。僕が間違っていた。早くコーナーを進めよう。

メ:そうですね。尺も短いですし。このままグダグダやってたら打ち切りされそうです。……むしろ、打ち切って欲しい気持ちになってきたんですけど……。他に仕事はありませんけど……。

タ:い、いや、そんなこと言わずに……。と、とりあえず、今回は『ルーキーズマッチ』について、全国の良い子たちと共に勉強しよう!

メ:あ、それ、名前だけは聞いたことがあります。トトカルチョができるんですよね。

タ:一番、どうでもいいところを最初にもってこないように……。

シ:女は即物的だから嫌いなんだ。

タ:君はいくつだ、シンイチクン。メロンさんも、いくら安ギャラとはいえ、受けた以上は少しは勉強してから来るように。というか、一般常識だよ、これは。

メ:す、すみません。

シ:あ、ちょっと、タケゾウお兄さん格好いい。

タ:ルーキーズマッチは、我が国の将来を担う若手BMPハンターとトップランカーが闘う、エキシビジョンマッチだよ。あと数年もしたら、新聞に載りまくる逸材ばかりだから、BMPハンターに興味がある良い子の皆は是非見ておくように!

メ:え、ちょっと待ってください、タケゾウお兄さん! 若手BMPハンターってことは、あの澄空悠斗君も参加するんですか!?

タ:もちろんそうだよ。ただ、相手がねぇ。

シ:絶望の幻影獣をやっちゃうような人だからねぇ。我が国じゃクリスタルランスメンバーくらいじゃないかな、まともにやりあえるの?

タ:クリスタルランスは、彼のパートナーでもある剣麗華さんにルーキーズマッチで不覚を取ったこともあるからね。因縁という意味でも面白い。良い子のみんな、是非、ルーキーズマッチを楽しみにしててねー!

シ:しててねー!

メ:してて……。ちょっと待ってください。

シ:なんだよ、クソビッチ。彼氏募集なら、掲示板でしなよ。

メ:いや、彼氏募集ではなく……。いえ、いないのは確かですけど。そうじゃなくて、もらった台本だと、『バスターキャンセルについての学習講座』もするようになってたと思うんですけど……。

シ:! た、タケゾウお兄さん! そうだよ! バスターなんちゃらの授業をしないと! もう尺ないよ!

タ:え? あれ、来週じゃないの! 無理だよ、5分で二つもやるなんて!

メ:無理でもやらないと! テレビなんですから! 急いでください、タケゾウお兄さん!

シ:頑張れ、タケゾウお兄さん!

タ:え、えとえとえと! バスターキャンセルっていうのは、三大キャンセル技の一つで……!



★☆★☆★☆★



ブチッと。

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