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BMP187  作者: ST
第三章『パンドラブレイカー』
159/336

勇気の咆哮

「っ!!」

《これは……》

《凄ぇ……》


振り下ろされる刃に合わせて、絶望の理を斬り裂いていく次元断層。

至高の咆哮(ライオンハート)は完全に引き裂かれ。

次元の刃は、絶対無敵の盾(イージス)で止められる。


これで、レオとの間の障害は、絶対無敵の盾(イージス)のみ。

しかも、『咆哮』中で出力が弱まっている。


「悠斗君」

「よし!」

麗華さんの真横で、右手を突き出すようにして……。

頼むぞ、賢崎さん!


《マジで頼むぞ、大将!》

《世界法則演算開始。最優先は威力。他の仕様は全てランクダウンします。補助演算なしでの単独起動も不可。発動不能確率も50パーセント弱》

《いいから!》

《撃ちます》


劣化複写イレギュラーコピー至高の咆哮(ライオンハート)!」


叫んだ瞬間、今まで経験したことのない感覚が身体を満たす。

……たぶん成功だ。


読み通り、この技を複写できないのは、単純に俺の能力不足。

発展継承イノベーションなんてチート技を成立させる賢崎さんのサポートがあれば、使えないはずがない!


「っと」

咆哮に先駆けて、身体の表面に薄い膜が出現する。

いや、膜じゃない。

これはおそらく、絶対無敵の盾(イージス)

どんな攻撃も弾く無敵の盾。

……なんだけど、範囲が狭すぎて麗華さんまで覆えない。

全くもって意味がないが、たぶん、これと至高の咆哮(ライオンハート)でセットになっててどうしようもない。

このまま行く!


「っぎ!」

右手から『何か』が発生した瞬間、強烈な反動を感じた。

砲撃城塞ガンキャッスルを撃った時のような物理的な反動じゃない。

世界の理を捻じ曲げているかのような、強烈な違和感。


《こ……こりゃあ……》

《きつい……ですね……》


自分で使うと分かる。

これは間違いなく、普通のBMP能力とは質が違う。


『咆哮』中で出力の弱まっている絶対無敵の盾(イージス)なら……!


「あ……れ?」

なん……だ?


《こいつは……!?》


俺の至高の咆哮(ライオンハート)が、半分から前に進まない。

……なんというか。

斬り裂かれているレオの至高の咆哮(ライオンハート)と……。


「引っ掛かってる……?」

「んなアホな!」

思わず間抜けな悲鳴が漏れる。


だって、そうだろう!?

無形の咆哮攻撃が、同じく無形の咆哮に引っ掛かる訳が……!!


《接触した部分から干渉されてるんです。出力差が痛い……!》

《じゃあ、攻撃範囲を絞ればいいだろ!》

《……駄目なんです。その機能は削除されました》

《な!?》

《攻撃力を再現するのが精一杯で……。攻撃範囲は最大で固定されています。調整は効きません》


「悠斗君」

「だ、大丈夫!!」

だと思いたい!


《こちらも干渉を振り切るくらいの攻撃力を出せればいいんですが》

《無理っぽいぞ!!》

《……ですね》

《ですね、じゃなくてな! 何か案があるんだろう、大将!!》

《いえ》

《?》

《ありません》

《な……何言ってんだ、大将?》


「か……が……く……」

全力疾走で無限に走り続けてる最中みたいだ……。

「悠斗君?」

「だ……大丈夫!」

……たぶん。


《大将は、最善の策を選択し続ける魔女なんだろ!?》

《これが【最善】なんですよ》

《あん!?》

《ギリギリの綱渡りを何度も成功させて到達する最善の……最も勝利に近づける展開。【ここ】が、私のEOFが見れたゴールです》

《…………》

《確率にして、1パーセント未満といったところだったでしょうか。ここまで来れただけでも、私は、澄空さん達を誇りに思います》

《【これ】が最善って……。大将、最初から死ぬ気だったのか?》

《……自殺に付き合うつもりはありませんよ》


「か……か……は……」

「悠斗君! もう息が……!」

「だ……大丈夫……」

麗華さんだって、カラドボルグでレオの咆哮を斬り裂き続けてくれてるんだ。

これくらい……!


《EOFで見れるのはここまでで……。私一人の力では、これ以上の未来は見えません》

《?》

《だから、力を合わせるんですよね?》

《!》

《【こう】じゃない可能性を……。この先の未来を……》

《…………》


《見せてください! BMPヴァンガード!》


「ぎ……っくしょう!」

ここが正念場なんだ!

全部の力を……最後まで。ある限り、絞り出してやる!

最後の一滴まで……!!


「悠斗君」

「何! 麗華さん!」

今、結構忙しい!!


「逃げようか?」

「それも悪く……。って、はい!?」

何言ってんの、麗華さん!?


「エリカたちなら大丈夫。この状態から、もう一度狙われる可能性は低いと思う」

「そ……そりゃ、そうかもしれないけど。今逃げても……」

「レオの力はもう分かった。ちゃんと準備すれは次は大丈夫」

「…………」

そんなはずはない。

ヤツの力は次元が違う。

俺にでも分かる。

万が一にでも倒せるチャンスは、今しかない。


「私もまだ余力がある。二人で逃げるくらいは問題ない」

「…………」

嘘だ。

賢崎さんの力も借りずに、一人で発展継承イノベーションモードのカラドボルグでこんな神業をしてるんだ。

余力なんかある訳がない。


「麗華さん……。幻影耐性のあるウエポンクラスが嘘ついてどうするんだよ?」

「嘘なんてついてない」

「俺が……やらなきゃいけない時だ。今は、絶対に負けられ」

「だから、嘘なんてついてない!」

「!?」

れ、麗華さんが、声を荒げた?


「いつもいつも。悠斗君ばっかりが『負けちゃいけない闘い』をしないといけないのはおかしい。負けたっていいはず」

「……麗華さん?」

「強くなくても構わない。死ぬのが怖くても軽蔑しない。逃げたって問題ない」

「……」

「いつか、なんて言わない。幻想の悠斗君なんて望んでない。今のままでいい」

「…………」

「最後までエリカ達を見捨てなかった……。優しい悠斗君が、一番好き」

「!!」

「だから逃げよう、悠斗君。……ね」

「ぐ……」

この人は……。

肝心なことが分かってない!

俺は、麗華さんに嫌われたくないんじゃなくて。


できたら。

「……っ!」


《や……やべえぞ、大将! 悠斗の出力が弱まってきやがった!》

《? いえ、違います!!》

《あん!?》

《これは……。攻撃範囲を絞っている!?》


自分のできることを完全にやり切るのがプロの仕事。

良くは知らんが、おそらく人生の9割9分はそれで十分なはず。

なので今は。


「残りの1分……だな!」

「悠斗君?」

状況の変化に、麗華さんが疑問符を浮かべる。


発展継承イノベーションの仕様について、俺なりに仮説を立てた。


劣化複写イレギュラーコピーしたBMP能力を、賢崎さんの演算能力を借りて進化させる。

これはおそらく間違いない。

進化の上限は、実効BMP値の上限まで。進化の回数は1回のみ。進化させてしまえば、融合進化ハイブースト中は、旧ヴァージョンは使えない。


《大将……》

《せ……正解です》


それから。

進化は必ずしもパワーアップを意味しない。

例えば。


『最大』の攻撃範囲を『最小』の攻撃範囲に変更する。


とかでも、可能なはず。


《そ……その通りですけど! 半径100キロの殲滅攻撃……。一人で一軍……いえ、それ以上に匹敵する最強の矛を失うことになるんですよ?》


問題ない。

俺には、残念系だったり、硬派系だったり、美少年系だったり、クール系だったり、癒し系だったりと、コンビニの品揃え並みの仲間が居る。


俺一人で闘う必要はどこにもない。


「悠斗君! 至高の咆哮(ライオンハート)が!」

「よっしゃ!」

俺の至高の咆哮(ライオンハート)の攻撃範囲が縮小され、接触部分がなくなり。

拳大の直径の直線攻撃が、レオを襲う。


「いけ……!」

俺の咆哮とレオの障壁が激しくぶつかる。

出力が極端に落ちている絶対無敵の盾(イージス)に、一筋の大きなヒビが入る。


「いけるの……?」

一筋のヒビは二筋に。

二筋のヒビは三筋に。

それから。

無数に。


「今度こそ!」

今度こそ!

……。

…………。


が。


「駄目……」

「ぐ……!」

もう少しなのに、貫けない。

ヒビだらけの障壁に埋まったまま、俺の咆哮は、それ以上前に進まない。


《【咆哮】中は、出力が弱まるんじゃなかったのかよ!!》

《弱まってます、確実に! しかも、威力を一点集中した至高の咆哮(ライオンハート)なのに……!》

《なんで、貫けない!》

《……ここまでやっても、まだ出力に差がある……。やっぱり、どうやったって、絶望の幻影獣には勝てない……?》


「いや!」

なんとおっしゃるうさぎさん。

まだ、削ってないものがある!


「ゆ、悠斗君! 悠斗君の絶対無敵の盾(イージス)が!」

「ああ」

そう。

これも要らない。

凄まじく出力を無駄遣いしているのだ。


《でも……。どんな攻撃からも守ってくれる、無敵の盾なんですよ!》


要らない。

俺には命を預けても悔いのない、最高のパートナーが居てくれる。

俺は、俺しか助からない絶対防御になんか、今のところ用はない!


《そんな……。自分から、最強の矛と盾を捨てるなんて……》

《違うな》

《え?》


俺のやることはただ一つ。


《これが【最強】だ》


やつを……最強の幻影獣を。


《澄空悠斗が【最強】だ》


絶望の幻影獣を。


《誇れよ、大将》


レオを。


《大将がどれだけ自分のことを嫌いかは知らねぇが》


倒すだけだ!


《男を見る眼は、超一級品だぜ》

《…………はい!》


咆哮を発する右手に、左手を重ねる。

レオと同じ体勢。


《やれ、藍華!》

《はい! 世界法則演算開始! 不可逆の変性。完結から無限へ。万能から可能性へ。絶望から勇気へ! 命名!!》

《ぶちかませ、悠斗!》

合点承知!!



《《「発展継承イノベーション勇気の咆哮ブレイブハート!!!」》》

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