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BMP187  作者: ST
第三章『パンドラブレイカー』
156/337

絶望の幻影獣

「俺もヤツも、随分と余計な手を回したものだな」

「…………」

「まさに烈火の如き見事な攻撃だった」

「…………」

「だが、まだこれで終わりではないだろう?」

「…………」

いや、もう終わりなんですが……。

と、心の中で呟いてみる。


俺の切り札である捕食行動マンイーターは空中で爆砕し、地に落ちた残骸が徐々に消滅を始めている。

捕食行動マンイーターを内側から粉砕したレオは何食わぬ顔で着地しており、当然のように無傷だった。


いや、無傷なのはいい。

絶対無敵の盾(イージス)がある限り、ダメージを与えるのはほぼ不可能。

ただ……。


「口……閉じたよな……」

口が閉じれば次元転移は成立、と考えてたんだけど……。


《……違うのか?》

《違いませんよ》

《は?》

《ソードウエポンが悪いんです。いい加減な論文書くから》

《?》

《何が、最大射程は5000キロに及ぶ可能性、ですか。……時空を超えても届くなんて》


……まじか?


《絶望の名を冠するだけはありますね……》

《くそったれ》


絶望の幻影獣。


実際に対峙すると、その表現が誇張でも何でもないことが分かる。

『矛盾』を体現しているかのような完璧無敵なBMP能力に加え。

空間を埋め尽くすほどの圧倒的なプレッシャー。


……というか。


「前にあった時と、ずいぶん感じが違うな?」

思わず話しかけてみる俺。


「大事なイベントを控えているようだったからな。余計な心配事を増やさない方がいいと思っただけだ」

「ラスボスのくせに、随分優しいな……」

と、茶化してはみるが、実際その通りなのである。


前回、体育祭の前に姿を現したのは、おそらく俺に至高の咆哮(ライオンハート)を見せるため。

おかげで、発動のタイミングが掴めていた。

……そうじゃなければ、絶対加速システムゼロがあっても、背後を取れていたかどうか分からない。

ガルア・テトラと同じ。

闘う前に、わざわざ自分のBMP能力を晒しに来たということだ。


「……おまえら、一体、何がしたいんだ?」

ガルアの時には聞けなかった問いを、思い切って聞いてみる。


「貴様に、境界を超えてもらいたい」

「?」

《!》


……また、境界?


「『境界』。BMP200。人と幻影獣を分ける、絶対の境界線だ」

「……BMP200?」

無理だ。

人類最高の俺のBMPも187。

13も……。あ、いや……。


「理由は知らんが、今の貴様のBMPはどう少なく見積もっても190以上。しかも、徐々に高まっている。境界に至るのも不可能ではないかもしれん。……途中で死ななければだがな」

「境界に至ったら、どうなるんだ?」

「世界が救われる」

「!?」


は?


「……かもしれんらしい」

「????」

何言ってんだ、こいつ?


「……貴様ら人間が言っていることだ。気になるなら、自分で調べてみるんだな」

「…………」


《……分かるか、大将?》

《心当たりはあります……》

《まじか!》

《けれど。なぜ、幻影獣が……?》


「何故、世界を救う?」

「世界が滅びると、我々も滅びるしかないだろう?」

「…………」

そりゃ、そうかもしれないが。

そもそも、今現在世界が滅びる要因はお前ら幻影獣で、それ以外にはないんだが。


……100年前はたくさんあったらしいけど。


「…………」

「…………」

まあいいか。

世界の謎も、幻影獣の真の目的も、今は関係ない。


とりあえず、ヤツを倒すのは無理だというのは分かった。


ただ、絶対加速システムゼロは有効だ。

無敵の咆哮も当たらなければどうということはない。

「もう一度背後に潜り込んで……」

今度は限界まで追撃してやる。

一瞬でも動きを止めることができれば……。


《いや……》

《駄目なんです。澄空さん……》


「え……あ!」

そうか……。

さっきの絶対加速システムゼロのせいで位置が入れ替わったんだ。


今、俺の背後には、エリカ達が……!


《大将……》

《無理です。レオの咆哮は、ただ強力なだけじゃありません。【破壊の理】そのものなんです。同質以上の何かでないと……》

《エリカのLCCは、カラドボルグ以上だと聞いたが》

豪華絢爛ロイヤルエッジで、どうやって至高の咆哮(ライオンハート)を止めるんですか……》

《あんだろ、一つ。属性のみを有効活用できる防御法が》

《!! ……とんでもないことを考えますね……》

《アイズオブゴールドは【正解を導かない】仕様だからな。奇策は得意だ》


「?」

何かあるのか?


《私のEOFで見ても唯一の正解に見えます。ただ、成功率が30パーセントほどですが……》

《充分だろ。ラスボス戦は、万分の一程度の確率でも結構成功するぞ》

《……澄空さん、というか三村さんに毒され過ぎです……》


「??」

良くわからんが。

行けそうな感じだけは伝わってきたぞ!


「……悪くない眼だ」

「?」

「いや、とてもいい」

「??」

「誰かに敵意を向けられたのは……100年ぶりだな」

背筋に感じる死の予感とは対照的に、レオはむしろ穏やかな顔をしていた。


「一つだけ聞かせろ、幻影獣」

「なんだ、人間?」

「世界を救うのは……本当に死にたくないからか?」

「ふ……」

「?」

「確かに……面白い男だな、お前は」

レオが右手をこちらに向ける。


《来るぞ、大将!》

《澄空さん、これは本当にいちかばちかです。もし、うまくいったら間髪入れずにレオを行動不能にまで追い込んでください。……次はありません!》


「動機は四聖獣それぞれ別に持っている。世界を救うのは、とりあえずの目的……というより、ついでだな」

「あんたの目的は?」


「……敢えて言うなら、今この時か」


と。

レオのプレッシャーがさらに増す。

空間が崩壊する予兆を感じる。


「これ以上、俺を退屈させるような世界なら、正直滅んでも構わん」

「……っ!」

「間違っても、お前は絶望に順応するなよ、ヴァンガード」

空間が……。

揺れる!


《大将!》

《世界法則演算開始! 属性付与エンチャント! 絶対の運命に抗する力ロジックキャンセルキャンセラー! 命名!!》


「《発展継承合成イノベーションミックス絢爛装甲ロイヤルガード!》」

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