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BMP187  作者: ST
第三章『パンドラブレイカー』
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幻影戦闘『四聖獣レオ』

「くそっ。やっぱり、駄目か……!」

進化版カラドボルグを消しながら吐き捨てる俺。


視線の先に見えるのは、ロビーの真ん中あたりで縛り付けられているエリカ達と、その下でこちらを迎え撃つレオの姿。

背後から全開の次元断層亀裂をぶつけてやったのに……。


《全然効いてねぇ》

《やっぱり、【咆哮中】じゃないと無理ですね……》

《って、やべえぞ、おい!》


レオが右手を振り上げる。

スカッド・アナザーは口が発射口だったが、おそらくレオは右手から『咆哮』を放つ。

……真後ろ以外、半径100キロを消滅させる破壊の理を。


《なんとか、背後に潜り込まないと……!》

《んなこと言っても、ミドルレンジどころかロングレンジだぞ!》


……距離が開き過ぎている。

本来は、もっとこっそり近寄る予定だったけど、こうするしかなかった!

超加速システムアクセルでは、どう頑張っても、レオの『咆哮』の方が速い……。

もちろん、俊足ライトステップでも。……いや、他のどんなBMP能力でも無理だ。

レオが【技を確定してから発動するまで】の間に、【背後】に潜り込まないといけないんだから……。


それこそ、瞬間移動でもしないと……!


《オーダー入ったぞ、大将!》

《い……いきなり、ヘビーですね。…………澄空さん! 出鱈目でもいいです! できるだけ、強く・具体的にイメージしてください!》


……ベースは三村の超加速システムアクセル

単純な速さだけなら最高ランクのあの技を。

さらに速く。


空間を超えるくらいにまで速く!


《大将!》

《世界法則演算開始。加速の限界。絶対の速度。命名・絶対加速システムゼロ!》


脳内に響く声に合わせて、レオの『咆哮』が轟く。

スカッドやアナザーの上位互換……と言うには、あまりにも質の違う何か。


振り下ろした右手を起点に、破壊の理が周囲に解き放たれ。

我が故郷の誇りである『シーポート』の広い敷地も建物も。

道路も。

その先の港も。

さらにその先の海も。

まるで自発的に分子結合を解いているかのように、空間ごと消滅していく。


麗華さんのシミュレーションを信じるなら、ヤツの『咆哮』は半径100キロ超。

下手をすると、内海全滅どころか、対岸にまで届く。

けど。


発射口の後方にだけは安全地帯がある!


「瞬間移動だと!!」

驚愕のレオ。


一方、俺は気持ち悪い。

越えちゃいけない一線を越えたような感覚がある。SFじゃあるまいし。

過程をすっとばして空間位置だけ変更されるもんだから、正直吐き気を催すほどの違和感。

……全部三村のせいということにしよう。


けど、これなら、先の先も後の先も関係ない!

必ず、俺が速い。


《悠斗!》

《チャンスです、澄空さん!》


発展継承イノベーション幻想剣イリュージョンソード・次元断層剣カラドボルグ!」

「くっ」

振り返ったレオの左手と、装飾過多な俺のカラドボルグが激突する。


「ぎぎ……」

「ぐ」

《ぐ……おいおい……》

《こ、ここまで振動が……?》

接触点を中心に、自分で言うのもなんだが、人外の衝撃が大気を震わせる。

理と理がぶつかりあっているかのような、異次元の鍔迫り合い。

現実感なんて、どこにもない。


けど、現実だ。

俺の後ろには、エリカ達が居る。


「ぐ……お……おおあぁあああああああああ!」

「く……ぐ……」

と。

ピシッと、音がしたような気がした。


「ち……厄介だな、その剣」

「え?」

苦虫を噛み潰したかのようなレオのセリフ。

これ、ひょっとして、いける?


が。


「え?」

レオの左手がカラドボルグの真ん中程を握りしめる。

右手が剣先を握り。


ぽきっと。


折れた?


「な、なななななななななな! か、か、からど! かっかかかかかか……!」


《お……落ち着け、悠斗! パニくってる場合じゃねぇ!》

《そうです、澄空さん! 良く見てください!》


あ!?


眼前の空間に……。

いや、レオの周囲に張り巡らされている絶対無敵の盾(イージス)に。

ヒビが……!


「っ!」

反射的に、ヒビに手を潜り込ませる俺。


弾力のあるガラス、としか俺の語彙力では表現しようのない感触を突き抜け。

突き抜け……。


「く……そ!」

あと、10センチ……。いや、あと5センチなのに!!

届かない!!


《悠斗! 砲撃城塞ガンキャッスルだ! 空気の代わりに、ヤツの力場を圧縮して削り取れ!!》

《ちょっ!! 何、ムチャクチャ言ってるんですか!?》


「っ!」

ナイスアイディア!


《ナイスアイディアじゃないですよ!!》

《頼む大将! もうそれしかない! 草食は嫌いなんだろ!? 敵の力場を削り取るなんて、滅茶苦茶肉食じゃねぇか!!》

《まだ、そのネタ引っ張りますか!? いいでしょう!! だったら見せてください、肉食もいけるところを!!》

《おお、やるやる! あいつ実はたぶん肉食だぜ! 俺は不感症だが!》

《世界法則演算開始! 収集から強奪へ! 砲撃から爆撃へ! 命名・爆撃領域ビーストイーター!》


「今度は、こう来たか!」

レオが叫ぶと同時。

くしゃっと、空間……いや、絶対無敵の盾(イージス)の一部が、握りつぶされたビニール袋のように変形する。

【空気を圧縮して放つ】いつもの砲撃城塞ガンキャッスルの代わりに、レオの力場を削り取る!

……と良かったんだが……。


「……こ、これ以上は……」

ちょっと無理っぽい。


けど!


「頼むぞ、峰ぇーーー!!」

削り取るだけ削り取って、攻撃力に変えて放つ!!

それも下から、かち上げるように!!


「!!」

自身の障壁と同質の攻撃を受けて、レオの身体が浮き上がる。

俺のほぼ真上。

5メートルほどの高さに。


絶対無敵の盾(イージス)、たぶん出力低下!》

《確定情報が欲しいが仕方ねぇ! 悠斗、レーヴァテインだ! 細かいことはいい!! 問題なのは威力だけだ!!》

《あの人の技は、燃費の悪さなら右に出る者はいませんから、簡単ですね! 命名は、【獄炎剣】で行きましょう!!》


発展継承イノベーション幻想剣イリュージョンソード:獄炎剣レーヴァテイン!!」


斬り上げた剣から膨大な炎が解き放たれる。

現代兵器ではあり得ない、炎そのものによる殲滅攻撃。

シーポートの『タワー』がすっぽり収まるほどの炎の体積。

回避がどうとかいう次元ではない。

天をも焦がす炎が、レオの身体を完全に包み込む。


「よし!」

まぁ、どうせ効かないだろうけど。

ただの目くらましだから問題ない。


本命は……!


劣化複写イレギュラーコピー捕食行動マンイーター!」


召喚した『口』が、炎に飛び込んで行く。

二番煎じと笑わば笑え。

あんな化け物とまともにやってられるか!!


《行けますよ!》


レオが咆哮するよりも早く。

『口』がレオが居た辺りを炎ごと飲み込み。


《完璧だ、悠斗!!》


『口』が閉じる。


「勝っ……!」

た、と思った瞬間。


轟音が。

世界を揺るがした。

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