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BMP187  作者: ST
第三章『パンドラブレイカー』
138/336

vsラプラス3

「アイズオブゴールド、来たー!」

なぜか、小野の頭をグリグリしながら叫ぶミーシャ。


「引きこもりの安全装置が表に出るとは……。愛されてるねぇ、悠斗君」

なぜか、紅茶とコーヒーをブレンドした訳の分からない飲み物を飲みながら、ミーシャにグリグリされたままで格好をつける小野。


「で、どうなの、あれ?」

どこから取り出したのか、ポッキーを口に咥えながら澄空悠斗の方を指す、くつろぎ過ぎのミーシャに。

ため息一つつきながら、小野が答える。


「まぁ、とりあえず、相手が悪いよ」



《《《《《《《



「なんて女だ……」

思わず呟く。


あまり都合のいいことは考えてなかったが、まさか、前兆なしのゼロ距離電撃を、あのタイミングでかわすとはな……。


「澄空……さん……?」

「ふん……」

呼びかけを一蹴し、体表面をめぐる電撃の感触を確かめる。


相手は賢崎藍華。

出し惜しみをして勝てる相手じゃねぇな……。


「き……金色!?」

「あー……。轟け迅雷、貫け閃拳っと!」


頼むぜ、姉御!


劣化複写イレギュラーコピー電速パルス!」

「!」


ひたすら直線の、悠斗お気に入りの超加速システムアクセルとは違う。

優美な曲線を描く、最速の移動攻撃。

ヤツの右側に回り込んで、雷を纏った右拳を撃ち出す!


撃ち抜く必要はねぇ。

熊でもなければ、触れただけで、いー気持ちになる!


「……あ?」

が。

ヤツが妙な動きをする。


素早い動作で、右手のオープンフィンガーグローブを脱ぎ去ったかと思えば。

その右の掌で、俺の右拳を受け止めやがった!


「んだと!」

「…………」

派手な音を立てて電流を走らせる俺の右拳が、あっという間におとなしくなっていく。

……電流が消えていく。


無効化……?

いや。

これは……。


「なるほど……。さすがは、賢崎の後継者様ってことかよ……」

「あなたこそ……一体何者です? 澄空さんとは、言動も技もあまりに違いますし。それに、その目……。金色……ですか?」

「ただの安全装置だ、よっと!」

左手を引いて……。


任せた、旦那!


劣化複写イレギュラーコピー怪力無双ドラゴンバスター!」

臥淵の旦那のパワーを借りた、左のアッパーカット。

「っ!」

もちろん、当然のごとくかわされるが。


そんなものは想定内。

大きく飛びずさって体勢の崩れる着地点目掛けて。


「うっしゃ」

決めろよ、光!


劣化複写イレギュラーコピー天閃レイ!」


最強の遠距離攻撃の模倣。

四つの光線が、四方からヤツに迫る!


いくらヤツでも、着地の瞬間に四発の同時攻撃がかわせる訳がねぇ!

悠斗を心配してくれたのは有難いから、気持ちだけもらっておくな! 大怪我すんなよ!


「あば…………よ?」

……。

…………?


…………まじか。


四本の光線が通り過ぎた後も、ヤツは何事もなかったかのように立っている。

俺からはすり抜けたようにしか見えなかったが……。

着地と同時に、その場で回転しながら微妙な動きで全弾かわしやがった……。

いくら、未来が読めるっつっても。これは、いくらなんでも……。


「攻撃パターンは、だいたい把握できました」

「…………」

「その瞳が私の知っているものと同じなら、少してこずりそうですが」

「…………」

「そちらも、ブランクは長いようですね?」

「…………」


……やべぇ。

やっぱ大将、めっちゃ強えぇ。


ロートルにどうにかできる相手じゃねぇ。


「くそったれ……」

顔に手をやる。


「戻すぞ、悠斗」

役に立たなくて、すまん。



》》》》》》》



「……っ」

な、なんだ?

一体……?


確か、賢崎さんの脚で落とされそうになってたはずだが……。


「…………」

「……?」

当の賢崎さんは、3メートルくらい離れた場所から、滅茶苦茶怪訝そうな顔でこちらを見ている。


俺もいつの間にか、立ち上がっているし……。

とりあえず、何とか危機を脱したみたいだけど……。

一体、全体、何が起こった?


「……」

「……?」

「…………」

「…………?」

「……澄空さん。……ですか?」

「はい?」

……そりゃ、澄空さんだが。

賢崎さんは、一体、何を……?


「目の色も戻っている……。やっぱり、元に戻ったみたいですね」

「え……」

元に戻る?

なんのこっちゃ?


「澄空さん」

「は、はいな?」

「澄空さん。心の中に、何か飼っていますね?」

「へ?」

なにそれ、格好いい。


《そんな大仰なもんじゃねぇよ。ただの安全装置だ》


って、あんた、誰!?


《? 俺の声が聞こえてるのか?》


あ、ああ……。

ばっちり聞こえてるけど。


《ちっ。お互い緊張状態が長く続きすぎて、一時的に精神の壁が薄くなってるのか……》


あ、あんた、ひょっとして……。

前に三村とエリカが見たっていう、例の第2人格……?


《あまりいい状態じゃないが……。おい、悠斗!》


は……はい!

なんでしょ、アニキ(※誰か知らんけど)。


《こうなった以上は、俺も協力する。絞め技系はなんとかするから、お前は打撃に集中しろ》


それは、ありがたいけど……。

あんたは、一体……?


と。


「解せませんね。貴方も私と同じ気持ちのはず……。どうして、邪魔をするんです?」

唐突な賢崎さんの問いかけ。

頭の悪い俺にでも分かるが、間違いなく俺に聞いてきてはいない。


《うちのバカは、言っても聞かねぇからだよ……》


だるそうに答える、俺の中の人。

その答えが、賢崎さんに聞こえるはずがないのだが……。


「子供の教育方針で揉める夫婦みたいですね……」

まるで聞こえたかのように、ため息を吐きながらこぼす賢崎さん。

「とはいえ、これで本当に打撃以外は封じられましたね……」

オープンフィンガーグローブを着けなおしながら呟く。


今度はマジっぽい。

これ以降は、絞め技でいきなり落とされる可能性は低くなった。


けど……。

打撃戦しかなくなったということは……。


「澄空さん」

「ああ……」


「少し、痛い思いをしますよ……?」


飲み過ぎた旦那をしかる新妻のように。

少し上目使いで賢崎さんが告げてくる。


《悠斗……》

ああ……。


《あいつ……》

「あの人……」


《メチャ怖えぇ》

滅茶苦茶怖い。

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