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BMP187  作者: ST
第三章『パンドラブレイカー』
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思い出探しと結婚活動2 ~まずは自己紹介から~

◇◆~賢崎一族について~


この国……いや、世界的に見ても、『BMP能力者と幻影獣』と言えば思いつくのは、賢崎一族と神一族。

ただ、『実は幻影獣を生み出したのは彼らなんじゃないか』と揶揄されることもある秘密主義の神一族とは違い、賢崎一族は、100年前から一貫して人類の守護者であり続けてきた。

『流れの先を読む』BMP能力を駆使し経済界でのし上がっても、その本質は一切変わらない。

人類を守り、BMP能力者を保護し、幻影獣を駆逐するためだけに存在する一族なのである。


そのため彼らにとっては、幻影獣を倒せるBMP能力者の保護・育成・バックアップこそが最重要任務となる。


ただ。

強力なBMP能力者は、いかんせん絶対数が不足している。

産まれてきたBMP能力者を大切に育てるだけでは、どうしても間に合わない。


よって、賢崎一族は、いわゆる『婚活』を奨励している。

高BMP能力者限定の婚活パーティーとか、婚活クラブとかがあるのだ。

BMP能力さえ高ければ、経費負担一切なしどころか、補助金とか・祝い金とかがバンバン出る。

いや、なんとも羨ましい。ふざけんなって感じだ。


……いや、それはともかく。


強力なBMP能力者の中でも特に優秀なBMP能力者に対しては、結婚の推奨ではなく、一族に取り込もうとすることも多い。

この場合、BMP能力値の高さこそがほぼ絶対的な指標であり、一族の重鎮クラスの家の子女が相手に選ばれることも珍しくない。


ただ、BMP能力者の自由な意思を何よりも尊重する賢崎一族にとって、これらはあくまで『推奨』である。


とりあえず会わせてみて、お互い気に入れば良し、といった軽いノリだそうである。

まぁ、賢崎一族の候補子女は、容姿・能力・財力、全てにおいて恵まれていることが多く、紹介されれば男女問わず断ることはまれなようだが。


……めっちゃ羨ましいわい。どちくしょう。


『季刊BMP最前線VOL163・一線級ハンターの恋愛事情』中の、コラム『結婚って、なんでこんなに難しいの?(筆者・タケゾウお兄さん)』より抜粋。

◇◆


◇◆


~1号車:運転手・式雪風~


「と、いうことです。澄空様!」


と元気いっぱいに教えてくれたのは、武田紬さん。

車の後部座席の真ん中に乗り込んだ俺の右隣で、元気いっぱいの笑顔を向けてくれている。

「でも、この作者の方、書き口は軽いんですけど、内容は意外と誠実なんですよね。好感が持てますよね」

と、『季刊BMP最前線VOL163』を広げたまま、左隣から穏やかな微笑みを見せてくれるのは、上杉時子さん。

同じ雑誌の購読者として、ひょっとして気が合うかもしれない。


いや、気が合うかもしれない、じゃなくて!


「じゃ、じゃあ。これってひょっとして……」

「はい! 婚活です!」

「まぁ、どちらかというと、合コンの方が近いかもしれませんけど」

紬さんと時子さんが両側から言って来る。

さっき、『コンパクトカーだから、目立たなくていいな』と思ったのは間違いだった。

後部座席に三人も座ると、普通に密着してしまう。


「では、合婚ですね♪」

と、意味の分からない発音で助手席から後ろを向いてくるのは、式春香さん。

意味の分からない違和感は相変わらずだが、単純に容姿だけを見ると、この人も凄い美人ではある。


……だめだ。

とてつもなく、落ち着かない。

分乗案は賢崎さんが決める、と約束はしてたけど、まさかこんな状況になるとは……。


「合コンとなると、自己紹介からでしょうか?」

式さんの言葉を受けて、上杉さんが提案する。

というか、1対3でも合コンと言うんだろうか?


あ、いや……。


「じゃあ、まず運転手から紹介しましょうか? 悠斗様、気になってるみたいだしぃ♪」

式さんが、人差し指の腹を見せる独特の姿勢で隣の運転席を指し示す。


そう。

こんな状況でも、実は俺は、彼のことが一番気になっていたりする。


「この運転手の名前は、式雪風。私の弟で、小学生です」

「やっぱ、そうですよね!!」

俺は思わず叫ぶ。

そうなのだ。

どう見ても小学生にしか見えない男の子が運転席に座っていたから、ずっと気になっていたのだ。

まぁ、もう車、動いてるけど!


「大丈夫ですよ、澄空様。彼の胸元を見てください」

「え?」

上杉さんに言われて、雪風君の胸元を見る。

彼の首から何かがぶら下げられている。


「許可証か何か……?」

「BMP法第167条適用の許可証ですっ」

武田さんの言葉に、足りない頭の記憶を探ってみる。


……確か、道交法の規定年齢に達しない者の運転を可能にする特別規定か何かだったような……。


「その通りです、澄空様。ただ、条件が厳しいので、あまり適用者はいませんけど」

「ちょっと待てば、普通に免許取れるしねっ」

時子さんと紬さんが頷き合う。

確かに、黙っていても年は喰う。

ということは、この雪風君は、それも待てなかった理由があったということだろうか?


赤信号で。

緩やかな減速の後、車が止まる。

運転に不安なところは一切ない。


と、バックミラー越しに目線のあった雪風君が、まるで『御安心ください』とでもいうかのように微笑んだ。

顔の造作で言えば、文句なしの美少年。

浮かべる微笑は、経験豊かな執事のソレをベースに、儚さといじらしさをブレンドしたかのような。


……俺にも分かる。


この子、将来、とんでもないプレイボーイになる。

間違っても、三村のような残念美形にはなるまい。


「澄空様? その子は、男の子ですからね」

「は、はい!」

右隣から紬さんに言われて我に帰る。

やべぇ。変な所に飛びそうだった。

「一応、ノンケとの報告は受けていたのですが、油断は禁物ということですね」

「いえいえ……」

油断してください。その情報は、極めて正しいので。


「ま、まぁ、とにかく。よろしく、雪風君」

挨拶すると。

コクリと頷いて、そのままアクセルを踏み込む雪風君。

とても礼儀正しい仕草と表情ではあったが……。

今の流れなら、「こちらこそ、よろしくお願いします」くらい、あってもよさそうなもんだが……。


……いや。

というか、俺、この子の声、一度も聞いていないような気が……。


「あ、悠斗様。雪風は喋りませんので」

「はい?」

いきなり式さんに言われて、ビックリする。

喋らない? 喋れないじゃなくて?

「ちょっとしたポリシーです。不便なこともありますが……。その分、私が賑やかですのでw」

と、式さん。

会話文に『w』を御使いになりやがった……。

得体のしれない違和感と合わせて、ここまで好対照な姉弟も珍しい(※もちろん雪風君には『違和感』はない。それどころか、癒しオーラがバンバン出てたりする)。


「なにはともあれ、負けてはいられませんね!」

と、いきなり右隣から闘志が膨れ上がる。

「澄空様。まずは、この私。武田紬から、アピールをさせていただきます」

「は、はい!」

御手柔らかに!


「武田紬。武田家の三女で、中学三年生。BMP能力名は七天天舞バトルダンサー。クラスは防衛者ガード。BMP能力値は、157です。紬、とお呼びください!」

「は、はい」

自己紹介の半分以上が、BMP能力に関する話とは……。

こういう時、もっと趣味とか好みとか話すもんだと思ってたけど……。

さすがは、賢崎の関係者といったところか。

というか、157って凄い高いな。この子、実は、賢崎の中でも、かなりの実力者なんじゃ……?

「澄空様の近くに居る人に例えると、峰さんが近いですね。あの方よりは、多少、接近戦よりですけど♪」

いたずらっ子がブレンドされたような弾ける笑顔で語る紬さん。

凄い可愛い笑顔だけど……。


この子、たぶん、峰より強い。


俺より年下なのに、全身から揺るぎない自信が感じられる。

……なんか、格好いいなぁ。


「そして、安産型です」

「は、はい……」

そして、安産型らしい。

額から脂汗が出てきた……。


「では、次は私ですね」

「は、はい!」

脂汗を流しながらも、精いっぱいの笑顔を浮かべて、上杉さんに向き直る俺。

俺って、こんなに女の人に囲まれる状況、苦手だったのか!?


「上杉時子。上杉家の次女で、大学一年生。BMP能力名は千陣戦速トップスピード。クラスは重突撃者バスター。BMP能力値は、158です。時子、とお呼びください」

「は、はい」

こっちも、158?

俺、ひょっとして、とんでもない人達を紹介されてるんじゃ……。

「少し年上ですけど。澄空様もお若いですし、年上も悪くないですよ? 激戦で疲れた殿方を癒す術は心得ておりますので……」

「は、はい!」

艶やかさな仕草で言われて、思わず上ずってしまう俺。

まぁ、俺まだ激戦するほど一人前でもないですが。

「澄空様の近くに居る人に例えると、三村さんが近いでしょうか?」

例えが悪すぎる。

スピードタイプってことしか、分からんではないか。

まぁ、どう見ても三村とは天地の実力差がありそうだが。


「ちなみに、その二人に鈴木さんところの直ちゃんを加えると、お嬢様を除いた現状の賢崎若手TOP3なんですよー。悠斗様、凄いですねぇ」

と、とんでもないことを言い出す式さん。

横で雪風君が運転しながらコクコク頷いているところをみると、どうやら本当らしい。


「そして、安産型です」

「はい……」

そして、やっぱり安産型だそうです……。

……帰りたい。

この合コンは、あまりにもレベルが高過ぎる。


「では、最後に私ですねw」

「はいぃ」

そして、明らかに『w』の使い方を間違っている式さんの自己紹介が始まってしまう。


「式春香。式家の長女で、高校二年生。ウリはなんといっても、この外見!」

「……はい?」

あれ?

なんか、前二人のテンプレと違うぞ。

「母様ゆずりのこの外見こそが唯一の自慢なのです。中身スカスカですけど」

「ス……スカスカなんですか?」

「はい。能天気と言ってもいいかもしれません」

「……そう言うと、少しだけ可愛いですね」

「可愛いでしょうw」

ほんとに少しだけだが。

というか、『w』使いすぎだ。


「特にこの胸。これほどの美巨乳は、高校レベル……いえ、大学レベルでもそうそうお目にかかれないかと」

「は、はぁ……」

シートベルトを挟みこむ二つの豊かな膨らみを持ち上げながら力説する式さん。

た、確かに……大きいけど。

「美巨乳の春香……と、お呼びください」

「本当に、そんな呼び方でいいんですね!」

思わず、叫んでしまった。


「大丈夫です。現在、悠斗様の近くに居る女性の中で私より美巨乳なのは、天竜院透子くらいです」

「は、はぁ」

いや、美巨乳の真贋を確認した訳ではないんですが。

それに、天竜院先輩は、俺と近しくもなんともないんだが。


「そして、安産型です」

「…………」

もう帰りたい。


《もてんなー。悠斗》

「いやいやいやいや」

俺がもててる訳じゃないし。

BMP能力値だけだし。


……?

いや。

ちょっと待てよ。

俺、自分のことばかり考えてたけど。


「? どうかしました? 澄空様?」

「いや……」

問いかけてくる紬さんに答える。


「いくらBMP能力が高いからって……。皆さんは、俺なんかが相手で、本当にいいんですか?」

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