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BMP187  作者: ST
第三章『パンドラブレイカー』
111/336

期待してもいい『運命』

「BMP値が一切変化しないのなら、無理やり変化させてしまえば、幻影獣を消滅させられる」

「そう……なのか?」

「そうなんですよ」

遠い目をしたまま賢崎'。


「誤算……というか、最初から分かってたんですけど、問題点としては、稀にこの原則に当てはまらない幻影獣も居ること」

と、視線は、窓の外に見えるベヒーモスへ。

「『存在基盤』への過干渉が、予測不可能な変性をもたらした……んじゃ?」

「大仰な言い方をすればそうかもしれませんが。要は、BMP値を上げたから、CランクからBランクへランクアップしたんです」

ベヒーモスは襲って来ない。

これが、この新幹線の『機能』だ。

万が一故障でもすれば、一気に戦場だけど。


「最初から……、副首都区がこうなることが分かってたのか……?」

「まさか。『コア』の出力を調整しながら、少しずつ不可侵領域を広げていく計画でしたよ」

「じゃ……、何が悪かったんだ……?」


「『コア』の制御に失敗したんですよ」


「……」

「単純な事故です。別に大いなる陰謀も、不可思議な謎もありません」

「EOFでも……見えなかった?」

「見える見えない以前に。安全管理に絶対はありませんから。一応、ここまで酷いことになる確度は0.1パーセントくらいでしたでしょうか。その確率と危険性を伝えたうえで、賢崎は反対票を投じました。……それでも澄空さんは、私を責めますか?」

「……? ……なんで?」

なんで俺が賢崎'(or賢崎さん?)を責めるんだ。


「そんな顔をしてます」

「してない……よ」

「私に、嘘が通じると思いますか?」

「んなこと……言っても……」

賢崎さんのせいな訳がない。

ただ……。


「賢崎さん自身が……。そんな風に思っているんじゃないかって……。思っただけ……だよ」

「……っ」

そして眠い。

「言いますね、澄空さん。起きている時とは、また違った雰囲気で、魅力的です。ひょっとして、こっちが地ですか?」

「んなこと……ないけど」

まぁ。

起きてる時は、美人と話しただけで緊張してるからなぁ。


しかし、なんで、俺、美人に弱いんだろうなぁ。



☆☆☆☆☆☆☆



「け、賢崎さん……。なんだカ、優しイ顔ヲしてマス……」

「やべ……。クーデレ来たんじゃないのか、これ……。いったい、いつの間にフラグが……?」

「ねぇ、達哉。宗一君の意味が分からないんだけど?」

「時々こうなるんだ、気にするな。にしても、これは、少し……というか、かなり意外だな……」

悠斗席を覗き見ている四人が、それぞれに混乱している。


と。


「……私は、何をすればいいのかな?」

事態を把握しきれない麗華が言う。


「「「「………………」」」」

超難問だった。



☆☆☆☆☆☆☆



「反対票を投じましたが、『積極的に』反対はしませんでした」

「99.9パーセントの成功率か……」

千分の1の確率。

正しいか正しくないかは、俺が決めることじゃない。


「ただ単に都市から幻影獣を追い出すというだけでなく、幻影獣を世界から完全に抹消できる可能性に繋がるプロジェクトでしたから」

「…………」

「ある意味では成功ですね。非常に貴重なデータが取れました」

「……」

「私を軽蔑しますか?」

「しないってば……」

「でも、『軽蔑されたいと思っている』ように見える……とか?」

「そんな風には……見えないな……。『そんなことされても一銭の得にもならないから、解決策を提示してくれた方が有難い』……。みたいに思っているような気がする……」

「…………」

「……くー」

ねみい。

「言いますね、澄空さん。起きている時とは違って、coolです。ひょっとして、こっちが地ですか?」

「違うってのに……」

そんなに違うかなぁ。


「澄空さんは、この副首都区。どう思います?」

「そりゃあ……」

見る。

窓の外を。

…………。


「陳腐な表現だけど……」


悪夢の光景だ。


こんな光景。

三村じゃなくても、ゲームの中だけで十分だ。


「澄空さん」

「ん?」

賢崎'が真剣な顔をする。


「賢崎の悲願は、もちろん幻影獣の全滅ですが」

「ん」

「現当主……私の父と、それからたぶん、私の代の目標は、副首都区の奪還です」

「…………」

「『ほら見ろ、やっぱり気にしてるんじゃないか』みたいな顔をされると、さすがの私もカチンと来るかもしれません」

「いいよ……。せっかく社長業休んで……、学生生活してるんだ……。いつもいつも完璧な澄まし顔じゃなくて……。ちょっとくらい……、羽目を外してもいいんじゃないか……」

「っ……」

くー。


「ホントに、言いますね。ひょっとして、普段、猫被ってませんか?」

「ないつーに……」

くー。


「まぁ、いいですけど。とにかく、私の代で何とか副首都区を人の住める土地にしたいんです。もちろん責任も感じてますし、……たぶん、私の代で解決できないと、かなり後の代まで解決できないと思いますから」

「どう……して?」


「副首都区の奪還には、『コア』の破壊が不可欠。……というより、『コア』さえ破壊できれば、あとはどうにでもなります」

「ふん……ふん……」

「ただ、『コア』は、半ばこの世の物質でなくなっていますから、通常兵器はもちろん、BMP能力でも傷一つつけられません」

それじゃ、どうにもならないじゃないか。


と。

「決して、広範な支持を集めている理論ではないのですが……」

賢崎'は、前置きしたうえで、


「『境界』に到達できる人間なら、触れるかもしれないんですよ」


「え?」

その言葉……。どこかで……。


「『境界』。BMP200。人と幻影獣を分ける、絶対の境界線」

「…………」

BMP200……?

いくらなんでも、それは……。


「分かりますよね、澄空さん。BMPを超える力でも発見されない限り、『かなり後の代』どころか、澄空さん以外にコアを破壊できる可能性のある人間は存在しないかもしれないんです。これが私の代でなければならない理由の一つ目です」

「いや……しかし……」

俺のBMPは187。

200まであと13。


「無理……だろ」

高BMP能力者は、BMP能力値が非常に上がりづらい。

そもそも、麗華さんが登場するまで、人類の限界値は、170と言われてたんだ。

まず無理だ。


と。


「それから、理由の二つ目……」

賢崎'が話を続ける。

「賢崎に私が……。『あのBMP能力』歴代最高の使い手が存在すること」

「『あのBMP能力』……?」

なんだ、それ?


「私も、それからたぶん澄空さんも、運命は嫌いですけど。私達が同時に存在しているのは、運命かもしれませんね」

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