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侍女として見守り続けます。

作者: satomi

よろしくお願いします!


異世界(恋愛)ランキング100位以内に入り、感無量です!!皆々様のお陰であります!記念に写真をスマホで撮りました!

 初めまして。私の名前はリザ=ハウスと申します。実家はこれでも伯爵位を賜っております。私自身は由緒正しき公爵家であるトゥアーズ公爵家で侍女をしております。

 縁あり、この公爵家の長女であらせられるジャスミン様の専属侍女として仕えることとなりました。仕えるからには全力で仕えたい所存であります。


 私はお嬢様がお小さい時より仕えております。

 お小さい頃のお嬢様はそれはもうお可愛らしく、蝶よ花よと育てられておりました。

 奥様もお美しく、私としては心地よい仕事場でした。

 有難いことに、お嬢様には姉のように慕って頂き、私は非常に感激でした。


 しかし、お嬢様のお母様がお亡くなり、旦那様は喪が明けるか明けないかというくらいで後妻の奥様をお迎えになりました。悪いことに、お嬢様の一つ年下の連れ子までいたのです。


 お嬢様はすっかりとうちに籠られてしまいました。

 旦那様は連れ子の女の子を可愛がるばかりです。どうやら、連れ子と言っても、旦那様が浮気をして外に作った子のようで、ますますお嬢様はうちに籠られました。

 お嬢様の年齢がもう二桁になっていたので、旦那様が浮気をしていたこともしっかりと分かったことでしょう。


 お嬢様は亡き奥様によく似て、非常に美しく、儚くも凛とした美しさがあるなんとも形容するのが難しい自分の語彙力の無さを呪いたくなるような……とにかく!美しくお育ちになりました。

 流れるような銀髪に深い海のような藍色の瞳。透き通るようにキレイな肌。

 環境は最悪なのに、よくぞ美しく育った!と拍手喝采でドウアゲしたいくらいです。

 でも・・・、亡き奥様に似ているという事が今の奥様には不満なのでしょうか?毎日のように罵られ、貶され、いびられています。

「なんなの?反抗的な目で見て!」

「そんなつもりは……」

 というような日常です。


 連れ子はというと、事あるごとに姉であるお嬢様の持ち物を欲しがり、お嬢様の手元には碌なものが残されていません。

 お嬢様のクローゼットは無彩色。アクセサリーの類も盗られました。お嬢様のお母様の形見となるブローチのみ大切に肌身離さずに持っていると私は聞いています。

「お姉様ぁのクローゼットの中ってなんか暗ーい。アクセサリーないのぉ?アクセサリーだって、お姉様みたいな内向的な人に所有されているよりも私みたいに社交的で元気な子に持ってもらってる方がいいと思うんだよねぇ」

 ああ、お嬢様の妹にあたる彼女の名前はセビヌです。

 お嬢様の美しさには足元にも及びません。でも旦那様も現・奥様もセビヌ様ばかりをかまっています。


「おい、ジャスミン。セビヌが泣いて、お前の侍女を欲しがっているぞ」

「まあ、姉なんだから侍女の一人くらい妹にあげなさいよ」

「ヒック、ヒック……あの侍女欲しいよぉ」


 多分嘘泣きでしょうね。私も物ではないので、‘あげる’とかそもそもがおかしいですし。セビヌ様には、ジャスミンお嬢様に仕えているように誠心誠意は仕えないですけど?私はジャスミンお嬢様だから全力で仕えているのです。それでも私を欲しているのでしょうか?


「リザの事でしょうか?謹んでお断りします。セビヌにはもうたくさんの専属の侍女がいるでしょう?これ以上必要なの?私には彼女しかいないの」

「旦那様に申し上げます。ジャスミンお嬢様以外には仕えたくありません(嘘泣きをするような人には特に)。私は物ではないので‘あげる’とかは……」

 ここまで言うと、流石に旦那様の顔も赤くなりました。このままなら私の給金を半分にすると言い出されました。

 正直に申し上げて、実家は伯爵家ですから金銭的に困窮しているわけではありません。ただの箔付けみたいなものです。ジャスミン様ならば無償で仕えましょう。


 お嬢様方もデビュタントの年齢になりました。

 セビヌ様の方が一つ年下ですが、デビュタントの年は一緒となります。

 貴族として通う学園の学年も同じですね。

 

ジャスミンお嬢様は美しさに加えて、聡明ですから気にしないですけど、セビヌ様はどうでしょうか?確か、家庭教師がいらしても邸中逃げ回っているとセビヌ様付きの侍女の方から聞きました。セビヌ様付きの侍女の方は「セビヌ様はワガママ放題」と言い、紹介状が頂けるのならここの侍女を辞めたいと言っていました。

 そうですね。辞める理由が‘セビヌ様のワガママ’となると紹介状は頂けないでしょうね。せめて、セビヌ様付きというのは嫌だと言っていましたが、人事の決定権は私にありませんから、なんともできませんね。

 

 デビュタントまでジャスミンお嬢様には数々のイヤガラセがありました。邸中の暗黙のものです。

 基本的にデビュタントのドレスをなぜだかジャスミンお嬢様の分だけ作ろうとしない。セビヌお嬢様のドレスは作るために採寸をし、かなりの額をかけるようです。目的は同学年となるであろう王子の目に留まるため。

「セビヌ!張り切って、王子の目に留まるのよ!果ては王子妃よ!」

 と、奥様が主に張り切っておられました。


ジャスミンお嬢様には、僭越ながら私がデビュタントの時に着用したドレスをお直しして着て頂くことにしました。

 ジャスミンお嬢様のデビュタントについて旦那様も一切干渉してこない(ドレスをどうするかとか)ので致し方ありません。




 当日、セビヌお嬢様は目立ってました。ドレス自体が輝いていましたから。でも服に着られているというのでしょうか?そのような印象です。

 対して、ジャスミンお嬢様はどうでしょう?ドレスは私が昔着たものです。美しい人は着るものを選ばないのですね。まるで、そのドレスが流行の最先端のような印象を受けました。

 同様の印象は当然その場にいらした方も受けたようで、「あのドレスは誰がデザインしたのかしら?」「あのドレスはどこの工房で買えるのかしら?」等の言葉があちらこちらで聞かれました。


 この事に旦那様、現・奥様、セビヌ様は怒り、ジャスミンお嬢様は3日間食事を抜きという罰を受けることとなりました。

 不条理ですよね。本当に美しさが罪となったのです。何がいけないのでしょう?

 ドレスを用意していただけないから、私が昔着たドレスをお直しして着られるようにして着ただけですし、そのことのどこがいけないのでしょう?

 


 デビュタントも終わり、学園に通うこととなりました。全寮制です。しかし、貴族は各一人のみ侍女を連れていく事が可能ですので、私はジャスミンお嬢様の侍女として学園の寮に住まうことになりました。

 ジャスミンお嬢様が留守にしている間に部屋を荒らされ、貴重品などを旦那様が持ち出すことも考えられました。そんなことなので、貴重品(少量しか所有していませんが)も寮へと持ち込みました。寮内とトゥアーズ公爵家内でしたら、寮内の方が安全です。

 

 ジャスミンお嬢様は公爵令嬢です。

 そんなこともあって、婚約を求める殿方が殺到。

 こちらとしては慎重に候補を選びたいところでしたが、どこから現れたのでしょうかセビヌ様が『この人でよくない?』と非常に適当に釣書の中から選んでしまいました。



 ヴェイブ=ロンガード侯爵令息



本当に適当に拾った割には家柄がよい方だと思います。問題は……人柄です。ジャスミンお嬢様を幸せにしてくださる方でないと私は許せません!


ジャスミンお嬢様とヴェイブ侯爵令息の交際は順調でした。……傍から見ると。

お嬢様も侯爵令息とデートした後はすごく楽しそうにしていました。お嬢様の屋敷では拝見できないような表情を見せてくれるようになりました。もうお嬢様が幼少の頃、亡き奥様がご存命の時に見て以来の笑顔を拝見することが出来ました。その(・・)()に(・)ついて(・・・)は(・)侯爵令息に感謝しています。


しかしながら……私は見てしまいました。

ヴェイブ侯爵令息がセビヌ様とも交際をしている様を。二股をしているという事ですね。しかも姉妹で。そして耳にしてしまいました。二人でジャスミンお嬢様の事を罵っている声を。

「所詮はお父様の寵愛を受けてる私の方が立場が上なのよ」

 立場とかはお嬢様は気にしていませんが?


そんなことがあったので私はジャスミンお嬢様にヴェイブ侯爵令息との交際を考えなおした方がいいと助言をしました。

「そうね、まずヴェイブ侯爵令息を私に勧めたのはセビヌだし、あの子が私の物を欲しがるというのは今に始まったことじゃないわ。きっと、婚約者も欲しがるんでしょうね。婚約をしたわけじゃないけど、リザが耳にしたような事を口にする方とは婚約できないわ。生涯の伴侶なんて絶対無理!教えてくれてありがとう!」

 ジャスミンお嬢様の幸せが私の幸せです。


「でも……次から次と婚約をするたびにセビヌに盗られるんじゃ、ねぇ?どうしましょ」

「お嬢様、私に考えがあるのですが……いっその事、家を出て隣国へ留学するというのはどうでしょうか?お嬢様の学力でしたら問題なく留学できるはずです。対して、セビヌお嬢様の学力では隣国へ留学するというのは難しいでしょう」

「そうね、この家を出てしまうというのがいいかもしれないわね」


 お嬢様に大事な事を伝えておきました。

「現在のトゥアーズ公爵家当主は不在です。旦那様は入り婿ですよね?そういう理由で、現在の状況は旦那様が公爵家当主代理をしているにすぎません。ジャスミンお嬢様が18才になった時にはジャスミンお嬢様が正式に公爵家の当主となります。そのように、法令で決まっております。現在お嬢様は16才。あと2年の辛抱です。旦那様はご自分が当主だと思い込んでいるようですが、間違いです。お嬢様が家を出ることで正式に家族が出来るとか訳の分からないことを思っているようですが、2年後にお嬢様は旦那様達を邸から追い出す権利を有することとなります。ゆめゆめお忘れなきように…」

 

 2年後というとお嬢様が留学を終えて帰る頃となります。


 そのようにお嬢様に伝え、私とお嬢様は隣国へ留学することにしました。

 トゥアーズ公爵家で「隣国に留学する」と伝えると、喜ばれた。私はジャスミンお嬢様について隣国へと行くことにしている。きっとトゥアーズ公爵家を自分のものにしたと錯覚しているのでしょう。きちんと貴族として学んでいないからこのようなことになるのです。


 隣国での学園は全寮制ですが、各部屋にキッチンがついており、侍女を連れて来ている人は侍女が料理できるようになっているようです。

 そういえば、学園の学費ですが…トゥアーズ公爵家は出していませんね。ケチ臭い。お金ならあるはずなのに。学園からは奨学金制度というものを提案されたのですが、幸い私の実家が援助をしてくれるということで甘えることとしました。

 お嬢様が美しい銀髪を切ってお金にしようとしたのを見た時は背筋が凍る思いでした。

「お嬢様っ、なんて事を!あぁっ、刃物など危ないものを手にして怪我などしては一大事です」

「リザは過保護よ。髪は勝手に伸びてくるんだからいいじゃない?」

「お嬢様の髪は特別製です!」(私の中で)



そして、学園の入学式となりました。

お嬢様、…お美しい。制服だけどお嬢様の流れるような美しい銀糸のような髪、制服が合わせているかのようなお嬢様の凛とした深い藍色の瞳。はい、目立ってます。


新入生代表の挨拶。あら?この国にお嬢様と同学年にも皇子がいらっしゃるの?調査不足でした。

チラチラとお嬢様を見てる?いやそりゃあお嬢様は目立つから仕方ないけど。

その他の殿方の視線もちらほらと……。

流石はお嬢様です。


「初めまして、美しい人。お名前を聞いても?私はこのヴェルフック皇国の第二皇子でレイルール=ヴェルフックと申します」

「畏れ多くも初めまして。私は隣国ソテーリオより留学してきましたジャスミン=トゥアーズと申します。彼女は私の侍女のリザ=ハウス」

「初めまして、リザ=ハウスと申します。ジャスミンお嬢様の侍女を仰せつかっております。トゥアーズ家はソテーリオでは公爵家にあたります。よろしくお願いいたします」

 

 流石、お嬢様。殿下からお声がかかりました。

 殿下もザ・皇子といったビジュアルで、上背もあり、筋肉質で皇家だからでしょうか?金髪碧眼です。


「私は殿下と言っても兄上のスペアだからね。兄上はいたって健康で皇太子として全く問題が無い。そういう訳なんで、私は騎士団に所属して陰ながら兄上を支える所存でいる」

 なるほど、それで筋肉質なんですね。包容力がありそうな感じです。元・婚約者よりもずっと頼りになる感じです。

 そういえば……元・婚約者様と婚約解消をして留学手続きをしたんでしたっけ?うーん、手紙であの人と婚約を解消するということを伝えよう。

 おそらく、婚約解消には確実な理由が求められ、元・婚約者様がセビヌ様とも交際をしている。二股をかけている。と訴えても、証拠がない、などと言われるんでしょうね。でも、セビヌ様の方がお好きなようですし……。


 やはり、手紙で伝えましたが『なんていう濡れ衣をセビヌに着せるのだ?』と逆に怒られました。

 ヴェイブ=ロンガード侯爵家に送った手紙では、家の中で手紙の真偽が問われたようです。ヴェイブ=ロンガード侯爵令息がセビヌ様とお付き合いをされていたことは使用人の中でもわりと知られていたことで、ロンガード侯爵家としては『誠に愚息が申し訳なことをした。婚約解消を受け入れようと思う』との回答を得られた。

 しかし、トゥアーズ公爵家とロンガード侯爵家の力関係を考えると…。公爵家の意見が通ってしまうのが悲しいかな貴族社会というものです。

 ヴェイブ=ロンガード侯爵令息はセビヌ様をお慕いしているようですから、このままジャスミンお嬢様と婚約解消をして、新たにセビヌ様と婚約…という運びになるのが理想的なんでしょうけど、セビヌ様は侯爵家よりも高位の貴族と婚約できると思っているのでしょうか?侯爵家でもよい方だと私は思います、


 勉強は嫌いで碌に教養を身につけていなく、性に奔放。そんな女性が今後高位の貴族に重宝されるとはとても思えません。夢を見過ぎだと思います。まぁ、お側にジャスミンお嬢様という完璧なお嬢様がいらっしゃるから、見る目が辛くなるかもしれませんが、それが事実です。……侯爵夫人の座で辛抱していればいいのに。このままじゃ行き遅れることになりかねません。


 あ、2年以内に決めてしまわなければトゥアーズ公爵家から追放されるのですから、急いだ方がいいですね。ジャスミンお嬢様の決断にかかっていますが。


 

 明日から、本格的に授業に参加します。

 クラスは成績順のようで、私も幸いお嬢様と離れることがなくAクラスとなることができました。

「リザ、ちょっと耳にしたんだけど聞いてくれる?」

 お嬢様の頼みなら何なりと!

「セビヌも留学手続きをしたみたいなのよ。でも学力が足りなくて……」

 でしょうね。それを見越しての留学ですから。

「それは想定内です。あのセビヌ様です。必ずやお嬢様に負けまいとして(何か得ようとして)同時に留学をしようと目論むでしょうね。でも家族に『ジャスミンお嬢様を追い出して正式に3人で生活ができる』とかなんとか言われてその気になったんじゃないですか?」

「……そうね」


 授業内容はそんなに難しいものではなかった。

 私でもそうなのだから、お嬢様にとっては全く問題外だったんじゃないでしょうか?

「レディ・ジャスミン!同じクラスになれて光栄だよ。ジャスミン嬢とお呼びしても?」

「殿下、昨日ぶりでございます。私の事はなんなりとお呼びください」

 流石はお嬢様です。見事なカーテシーに鈴を転がすような声で挨拶を!

「あ、リザのこともリザ嬢とお呼びください」

「仔細、承知した。貴女のことが気になってちょっと調べさせてもらったよ。その内容について話し合いたいのですが……ここではなんですので、是非会話の内容について気にする必要のない皇城に来てもらえないだろうか?」

「……わかりました。では次の学園の休みの日にお邪魔させていただきます」

「楽しみに待ってるよ」


 なかなか不敵な人物のようです。簡単には気が置けないですね。

 彼が調べた内容ですが、おそらくはトゥアーズ公爵家の過去ですか。それからお嬢様が未だに婚約解消できていない現状でしょうか?

 皇室の影を使って調べたのでしょうか?お嬢様にはそれだけの価値がありますから。



 翌休日。私はお嬢様と共に皇宮へと行きました。

「招待状もなく皇城に入ろうとするとは、不届き者!」

「私は第二皇子のレイルール=ヴェルフック様に直接招待いただきました。どうかお取次ぎを」

 私達が皇城に着いた時には元気だったというのに。

門番の顔色が青くなっていくのがわかります。なんだか不憫です。あの時(皇城行くと約束をした時)一筆でも書いてもらえば良かったと後悔します。

「待っていたよ。ジャスミン嬢、リザ嬢!……例の話をしたいんだ、さあ応接室にでも行こうか」

 そういう皇子には護衛と思しき方が3人ほどついてらっしゃいます。当たり前ですね。皇城の中とは言え、どこで暗殺されるか分からないのが王族のサダメ。

 

 応接室内にはお嬢様と私の他にレイルール殿下とその護衛(?)3名と室内には殿下の専属侍女でしょうか?2名ほどいらっしゃいます。けっこう大所帯となります。

 侍女の方にお茶を用意していただき、私・お嬢様・殿下・殿下の護衛様・殿下の侍女様の計5名で話をすることとなった。


 殿下が報告をしてくださいます。

「調査の報告をしよう。ジャスミン嬢はかつてはごく普通に生活していた。公爵令嬢として。しかしながら、実の母親が突然亡くなり父が連れ子を連れた後妻と再婚。連れ子の年齢から、母が生前より後妻との不倫関係だったことがわかる。

その後は父の様子も変化。継母はいびってくる。連れ子できた妹は何かと物を奪っていく。ジャスミン嬢の宝飾品はほぼ全て連れ子であるセビヌが持っていく。最近では婚約者を奪う。この件については婚約者としては、婚約を解消して連れ子であるセビヌと婚約したいと考えている。しかしながら、セビヌを含め、残された君の家族はセビヌならもっと高位の貴族と婚約が可能だと考えている。親バカか?」

「僭越ながら、私は親バカだと思います」

私はキッパリと言い切った。セビヌ様は碌に教養を身に着けてらっしゃいませんよ?親バカ以外に何がありましょう?色眼鏡で見ているとしか思えません。

「あの、残された私の家族と仰いましたが、私が本当に家族だと思っているのはこのリザくらいです。あの人達はもう知りません」

「ああ、そうだな。君の留学期間を終えると同時に公爵だと思い込んでいる人は代理だと思い知らされ、家族が家から追い出されるのか?」

「そうですね。私はその予定です。その際にセビヌには私から奪っていったものを返してもらおうと思います。婚約者は要りません。あの人はセビヌを慕っているようですから」

 お嬢様、毅然とした態度で素敵です!

 そこまで調べているのかと感心してしまう。


「それがな……。トゥアーズ公爵家の連中、自分達は公爵家だと権力を振りかざし放題で服飾店や宝飾店でやりたい放題。それならまだしも、領民に当たり前のように迷惑をかけ、領地への税金の税率を上げ、自分たちのやりたい放題」

「なんとも恥ずかしい……」

 お嬢様がうなじまで真っ赤になっています。元々色白だというのに、よほど恥ずかしいのでしょう。

「2年後に貴女が公爵として戻った時にすべきことは、まず領民への謝罪ですね。このままでは領地から領民がいなくなってしまいます」

 なんてことでしょう。能がない。脳もないとは思っていましたが、領民に迷惑をかけているとは。貴族としてなんて恥ずかしいことを!


「このことはここにいる5名だけが知る事だ」

「私は覚悟を決めて留学が終わったら、家に戻る事にします」

 それまで領民が残っていればいいのですが……。


「それでだなぁ……君が領地を何とかするのを手伝いたいんだ」

 ああ、お嬢様の頭に『??』が見える。お嬢様はミラクル鈍感なんでしょうか?殿下はおそらくお嬢様と生涯を共にしたいと遠回しに仰られていると思われます。

 仕方ないので、殿下に「どうやらジャスミンお嬢様は鈍感なようなので、思っている事をドーンと単刀直入に仰らないと伝わらないようです。どうぞ、ドーンと」とお伝えしました。小声で。

「ジャスミン、貴女がこの国に来てまだ少しで留学期間もまだまだある。その間を婚約期間にしたい。私と婚約をしてもらえないだろうか?」

「あの、非常に嬉しい話なんですけど、私はまだ婚約解消できていないんですよね……」

 殿下と顔を見合わせて「そうだったー!!」と思った。

「私がジャスミンと婚約したいから、ヴェイブ=ロンガード侯爵令息との婚約を解消してほしいという手紙をジャスミンのソテーリオの家に送ろうか?」

「それでは皇子がセビヌ様に奪われます。皇子は心変わりしないかもしれませんけど、セビヌ様にとっては王家に嫁入りできる♪となるでしょうね」

「留学をする学力もなく、姉の婚約者を奪うような悪女は王家に不要」

 と、言っても書面で契約されるのです。

「手紙で送る際に私の名前のスペルをあえて間違えよう。そうすれば……」

「セビヌと殿下の関係は確立するかもしれませんが、ジャスミンお嬢様が婚約解消ということにはならないのでは?」

「ロンガード侯爵家に私のスペルをあえて間違えた手紙を送るというのはどうだろう?ロンガード侯爵家は間違いなく婚約解消しようとするだろうな。婚約を催促するような手紙にしようか♪」

 うん、それでしたら婚約解消ができそうです。婚約解消した折には連絡をするようにとも手紙に書いておくといいですね。おそらく、セビヌ様がまた、ジャスミンお嬢様の婚約者を奪うようにレイルール殿下との婚約を試みるでしょうね。でも、名前のスペルが間違ってるのですから神殿に提出しようとも無効ですね。


 早速殿下はこの方法でロンガード侯爵家にお嬢様と婚約したいから、ヴェイブ=ロンガード侯爵令息がジャスミン嬢と婚約解消をしてくれと手紙を書いた。レイルール=ヴェルフック第二皇子の名前をレイロール=ヴェルフックと態と書き間違えて……。


 ロンガード侯爵家からは「すぐにそのように手配をします」というように返事が来た。レイル公爵家からは「レイロール=ヴェルフック殿下は我が家の次女のセビヌと婚約を。同時にジャスミンの婚約解消はそのように手続きを進めます」とあった。

 レイロール殿下とは誰でしょう?いない人物について言われても……。


「では、ジャスミンとヴェイブ次期侯爵の婚約解消が確認されてすぐに、ジャスミンと婚約しよう」

「婚約について、親の許しなどは必要ないのですか?」

 お嬢様は親とも思っていないですけれども、一応です。

「我がヴェルフック皇国では親の許しなど必要ない。親に準ずるものか?ジャスミンならリザ嬢では?」

「親ではありませんが、いまのところ唯一の家族ですから」

 お嬢様に頬を染められて言われると、なんだかドキドキしてしまいます。

「私の父、皇帝はすでに学園の情報を耳にしており、ジャスミンの有能さを知っている。私は第二皇子だし、ジャスミンの領地を守る手助けをするように逆に言われてしまった。言われずとも、そうするつもりだったのだが」

 ヴェルフック皇国の第二皇子がレイル公爵家に婿入りするという事でしょうか?なんだか贅沢な感じです。




 月日が流れるのは早いもので……。年齢を感じてしまうのは何故でしょうか?

「それじゃあ、ジャスミン。行こうか?」

「はい、レイ様」

 想いは通じ合ったようで、お二人は無事婚約し、今日は留学を終え公爵家に戻る日です。


「何をしにうちに来たんだ?おまえが戻る場所なんかない!」

「そうよ?どうしたの?一人前に男なんか連れて」

「あ、もしかして!レイロール様?!」

 セビヌ様は存在しない人物の名前を呼んだ。

「なにっ?!レイロール=ヴェルフック皇子殿下か?セビヌの婚約者の」

 セビヌ様は存在しない人物と婚約してるんだなぁ。と私は思いました。

「狭い所ですが、どうぞお上がりになってください!」


「フンっ狭い所とは失礼だな?」

「きゃ~、私をかばってくれたのね~?」

 セビヌ様は頭の中がお花畑のようですね。

「これからこの邸はジャスミン=レイル公爵の物だ。お前達3人はどこぞで暮らすといい。…ああセビヌと言ったか?お前はジャスミンからこれまで奪ったものを全てジャスミンに返すことだな」

「皇国の皇子ともあろうお方が判断がおかしいですぞ?どうしたのです?」

「そーよ、そーよ。ジャスミンみたいなのがどっかで暮らせばいいのよ。平民とかぁ?」

「そうね?ジャスミンにはそれがお似合いだわ」

「ハハハ」

「「ホホホ」」

 三人とも頭が湧いてるのですか?

「きちんと説明しなければわからないとは、愚かな連中だな。公爵!……は今までご苦労だった。と言っても碌に仕事をしていなかったが。ジャスミンの母親に婿入りしていただけで、己は公爵という爵位ではない。公爵を継いでいるのは、ジャスミンだ」

「そっ…そんな」

 きちんと貴族について学習していないからこのような目に遭ったのです。セビヌ様だけでなく、旦那様もまた頭の中がお花畑だったのですね。

「えっ…そんな……公爵だというからあなたと付き合って、セビヌまで産んで、公爵夫人になって贅沢放題だと思っていたのに……」


「新公爵として申します。今までご苦労様でした。と言っても、領地について何もしていないというか、イタズラに税率を上げてしまったようで、全く大迷惑です。今後、私はその後始末に追われるわけです」

「言いがかりだ!」

「どうぞ、ソテーリオ国王にでもいい付けて下さい。ああ、貴方はもう公爵でもなんでもないのですから、登城できないのでしょうか?」

「新公爵、幸いなことにまだ領地に残っている領民がいるということです」

 私、リザはジャスミンお嬢様の側近として働く所存でございます。侍女兼任で。

「うん、早急に領地へ赴き、これまでの謝罪をし、税率を見直し……ああ、することが沢山」

「そのために私がいるんだよ」

「レイ様……」


「レイロール=ヴェルフック様は私の婚約者よ!」

「「「そう(なの)?お幸せに」」」

 私達3人は突き放した。もはや関係ないから。

「因みに私の名前は、レイルール(・・・)=ヴェルフックだ。レイロール(・・・)とは誰だ?私とは全く関係ない。それに私はすでにジャスミンと婚約している。最近庶民の間で流行っていると聞いた。エンゲージリングという指輪を身に着けている。ジャスミンとペアの指輪だ!」

 何もそんなに力強く言わなくても……。誰かに自慢したかったんですね?

「レイロール=ヴェルフック……レイルール=ヴェルフック……ちょっとしたスペルのミスじゃない!」

「でもその書類が神殿に受理されている以上、その人(存在しない人物)と婚約関係なんだろうなぁ。私とジャスミンは皇国で皇国の法に基づいて婚約している。皇帝の許可も得ているし、ジャスミンの方は親に準ずるものが承諾しているので全く問題ない」

「そんなの無効よ!!」

 叫んでも無駄です。セビヌ様は存在しない方とこれから一生婚約を続けることとなります。解消をしようにも書類にサインをする人間が存在しないのですから。


「そういうわけで、わかっていただけたかしら?あなた方3名はこの邸には不要よ。どこへなりとも行ってください。ああ、ここへ来る道すがら。レイル公爵家の別宅には元・公爵は受け付けないようにいってあります。そちらのほうには既に私が新・公爵となっているという事を伝えてあります。ご心配なく」

 皆様、落涙して大歓迎なされていたわ。流石はお嬢様です。


 お嬢様は新・公爵として登城し、ソテーリオ国王に謁見することとした。

「面をあげよ。其方の手腕は全く見事。国王としてレイル公爵家をどうするか考えていたんだよ。このままではレイル公爵家の領民が暴動を起こしかねない段階まできていたからな」

「一応、身内が貴族として恥ずべき行動を行っていたことを恥ずかしく思います」

「うむ、しかし……そなたレイルール=ヴェルフック皇国第二皇子であろう?」

「はっ。公爵と婚約をし、公爵家に婿入りする予定です」

「ハハハ。新公爵はいい男を捕まえたなぁ?この男は、この男が小さい時から知っておるが武術に長けておるし、頭の回転もなかなか速い」

「恐れ入ります。恥ずかしいのでこの辺でおやめください!」

「そうか?」

「今後はボロボロになった領地をなんとかするのが課題です。面倒ごとを残してくれたものだとおもっています」

「全くよのぉ。自分が公爵代理(・・)だということもわからんで、贅沢三昧しおって」



 ジャスミン公爵とレイルール殿下が出かけている隙に、またあの三人が邸に入り込んでいる。

「警備兵!この三人をつまみ出して」

「ジャスミン、実の父親になんという仕打ち!」

 実の娘にしてきた仕打ちについてはどう考えているんでしょう?

「おい、セビヌ。邸から宝飾品を盗むとかしてないよなぁ?」

 レイルール殿下が質問するとあからさまに目を逸らしました。盗んでいるんでしょうね。恐らく継母もでしょうね。

「警備兵、不法侵入に加えて、窃盗もだ。この二人は邸内の宝飾品を盗もうとしていたぞ」

「なによ?たくさんあるんだから少しくらいいいじゃない?」

 いいわけないでしょう?そんなことは幼子でもわかります。どんな理屈ですか、ため息がでます。

「門番もあの三人を手引きしたんだろう?話を聞こう」

 レイルール殿下が怖いデス。嘘でも言ったら、即首が胴から離れそうです。

 

 門番曰くというか、まぁぶっちゃけお金で買われた。と言ってます。そのように忠誠心のない人間は即レイル公爵家から離職していただきます。またいつ賊を招き入れられるかわかりませんからね。

 きちんと、紹介状を書きますよ?ただし、離職理由の件に、レイル公爵家への忠誠心はなかったため。と書きます。後の事は知りません。全てが自業自得です。




 領地のことも収まりというより、領地にジャスミン公爵様の親衛隊のようなものが作られました。公爵様に一生ついて行く!と豪語しています。


 そのようなものにレイルール殿下は少々嫉妬をしているようですが、天候にも恵まれた今日の佳き日!ついにジャスミン公爵とレイルール殿下の挙式が行われます。王都で行われるので、国王陛下も出席なさると聞きました。


 ジャスミン公爵は流石です。

 この世であのようなマーメイドラインのウェディングドレスを着こなせるのはジャスミン様だけでしょう。スーパープロポーションですね。

 レイルール殿下の金髪を意識しているんでしょうか、金糸での刺繍がなんとも美しく、ジャスミン様の銀髪との対比が素晴らしく美しいです。

 アクセサリーは二人の瞳の色である。青ですが、サファイアはちょっとお高いので、ポイントポイントはサファイアですが、ガラス玉を用いていたり、東方原産でしょうか?の石を用いているようです。ああ、勉強不足が恨めしい。ジャスミン様はもうこの世に舞い降りた、天使様?女神様?聖母様?と思うように美しく、数年経っているというのに語彙力の不足でジャスミン様の美しさを表現しきれないこの力不足が恨めしいです。

 レイルール殿下は、騎士服でしょうか?皇国の騎士団に所属していますし。

しかしながら、ジャスミン様の髪を意識したような銀糸で刺繍を施し、カフスなどにサファイアを用いて二人とも独占欲だらけです。

 二人でいる様は、神々しいですね。普段も美男美女ですけど、挙式当日の今日の二人は特にキラキラと輝いております。


 ジャスミン様をレイルール殿下の元へ連れていく本来ならば父親、若しくはそれに準ずるものがする者がするエスコートを私がすることになりました。

 美しく着飾ったジャスミン様を、バージンロードを歩き殿下へとエスコート。正直に言いますと、私は恥ずかしかったです。ジャスミン様の人生において大事な時にエスコートするという大仕事を仰せつかったことは非常に名誉なことですが、ジャスミン様があまりにも美しすぎて、私など隣にいても誰も見ていないのでは?と思ってしまうのです。

「私の大事なジャスミン様をくれぐれもよろしくお願いします!」

 と、私は殿下にジャスミン様の手を預けました。「任せてくれ」って言ったし。


 その後、二人は誓いの言葉と口づけを交わし、王都をパレードすることとなりました。

 ジャスミン様は「パレードなんかしなくてもいいじゃない」と言いますが、公爵になって半年足らずで領地は安定し、今後の見通しも立ち、なんとかなりました。その手腕を買っての王都でのパレードとなります。国王陛下からの結婚祝いのようなものです。

 ジャスミン様の親衛隊の方もパレードを見学に来ているようです。涙を流しながら見学中です。うーん、領地を何とかしていてくれた方が助かりますが、絶対的忠誠心がある事で必ず結果を出してくれると私は信じています。ジャスミン様もレイルール殿下も思っていることと思います。


 今後レイルール殿下の事は‘旦那様’と呼ぶべきでしょうか?ジャスミン様の事は‘奥様’でしょうか?

「リザ、今まで通りでいいわよ」

 そうすると、‘ジャスミン様’ですか?人妻になんだか申し訳ない。


 当然のことながら、お二人の間には玉のようにお可愛らしい・愛くるしい御子が2人誕生なさいました。男の子と女の子です。

 お二人とも可愛らしくかつご聡明でいらっしゃるから将来が楽しみです。

 公爵家ですが、どちらが継ぐことになっても問題はないとジャスミン様も旦那様もお考えのご様子。僭越ながら、お二人ともご聡明ですし全く問題ないかと…。しかも領民にも愛されてらっしゃいますね。まさか公爵家のお子様達が率先して、畑仕事を体験するとは私、リザも思いませんでした

 

 そんなわけで、領民のハートを鷲掴みにしてしまったお二人の御子達。

 男の子の方がお兄様で、女の子の方が妹です。お名前は……




END







これ以上は…。名付けは苦手だし。


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― 新着の感想 ―
トゥアーズ公爵家の長女ジャスミン様にお使えする専属侍女リザの奮闘記だね。ジャスミンの母上は他界。トゥアーズ侯爵殿下は喪が明けない内に後妻と義妹セビヌを邸に入れるか。しかも、後妻は、正妻が存命だった時の…
お嬢様も大概鈍感だけど、リザ自身はどうなんだ?殿下の周りとかにいなかったのかな?
面白かった。 「ジャスミン様のお子様の乳兄弟生むんだ!」イベントが有ったか無かったか、あった場合の顛末が気になる。 この話題だとリザがポンコツでレイルールとジャスミンが頭抱えそう
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