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35話 文化祭④

「えっ……いやそっか、そうだよね」

 カラメルはそう言って、俺を見る。


「他の皆には時間を作るために協力してもらった」


 全ては今日、告白するために。

。“フィナーレ”の時間は、皆ステージに集まって盛り上がったり、告白する人がいたり……特別な時間だ。俺も乗っからせてもらおう。


「わかった。私も斗真に向き合う」





「ここなら誰もいないし、来ないと思う」


 この時間帯は、ところかまわずに告白したり、イチャイチャしたりと気まずくなる可能性や邪魔される可能性もあるので、人目をつかない場所を選ばなければなかった。

 ただ告白イベントも起きて、なかなか探すのに難航した。そこで、生徒会室を使わせてもらう事で解決したのであった。


「ここ、か。斗真が来たときはビックリしたなぁ」


 カラメルと喧嘩して、生徒会に入って……色んな人と出会って、仲直りして。


「まぁでも、本当に生徒会に入ってよかったよ」

 あの時に動けて本当に良かったと思う。


「うん、嬉しかったよ」

 カラメルはそう言って微笑む。


 

 ああその笑顔が好きなんだ、と改めて思う。俺は今日、君に告白する。でもその前に俺自身とも向きあわなくてはならない。


「なぁカラメル。まだ今も俺の事を好きか? それとも嫌いになったか?」

 俺はカラメルに問う。


「まだ、好きだよ。斗真の事。ずっと好き」


 カラメルはとても嬉しいことを言ってくれる。ここで俺が告白すれば、晴れて恋人になれる。

 でも俺は納得できない。自分自身とも向きあいたい。


「でもさ、本当に俺でいいのか? 性格が悪い所もあるし、何もできないし」

 俺は、ネガティブで自己肯定感が低い。


「確かに思わないところが一つもない、って言ったら嘘になるけどさ。そこは協力したりして直していけばいいと思ってるよ。斗真は考えすぎなんだよ。できないから、ってそんな深く考えなくても良いよ」


「本当にそうなのか? 俺は本当に不器用で何もできない。非力でメンタルは雑魚」


「私はさ、全部含めて斗真が大好きなんだよ。斗真がダメで苦しんだり、辛かったら私が寄り添ってあげる」


 ああそうか。その優しさにも惹かれたんだよな。


「そう、なのか」


「斗真の全てを許容してあげる。寄り添ってあげる。斗真の望みはできる限り叶えてあげる」


「そうか、ありがとう」

 本当に君には救われてばかりだな。


 文化祭は“フィナーレ”の時間に入り、しっとりとした音楽や盛り上がる音楽などが流れ始める。


「でもさ、私じゃないんでしょ?」

 カラメルは、悲しげな表情で俺にこう言った。


「どういうことだ?」

 俺は意味が分からずに疑問を投げ返す。


「斗真はさ、別に好きな人がいるんでしょ? 真緒や瑞希とも仲良さそうにしてたし……斗真は色々言ってたけどさ。私に気を遣ってくれたんでしょ?」


「カラメル」

 俺は言葉を遮ろうとするが、カラメルはさらに話し続ける。


「本当に今日は楽しかったし、これからも友達でいてほしい。だから最後に私が背中を押してあげる」


 カラメルは“良い子”で“空気を読む”。変わらないな、お前も。

 


 恋人、っていうのは、何なんだろうなと思っていた。でも今ならわかる。恋人は、とても大切で好きなもので。ダメな所も許容したり、支え合ったり、助け合ったりして。きっと色々ある理不尽な人生を頑張って生きていくための“支柱”なんだと思う。


 俺にもカラメルにも良い所はあるし、悪い所もあるのだろう。けど恋人なら、気にならなかったり、協力したりして色んな壁を乗り越えていくのだろう。




「カラメル、あのさ」


「うん」


「こんな俺で良いのならさ、俺と付き合ってくれないか? ダメな所も色々あるけどさ……頑張って隣に並べるような人になるから」


「なんだ、そんな事……全然良いよ! うん? あれ? えっ、えっ!?」


「まぁどうせ俺はマイペースだからさ。俺を支えて引っ張ってくれよ」


「えっ、斗真!? ほ、本当に?」


「わざわざこの時間帯選んで嘘なんてつくか。このために色々準備したんだから」


「えっ、そうなの!?」


「流石にこれはやらないといけないと思ったからな。俺は、カラメルと付き合いたい」


「まさか、私が選ばれるなんて思わなかった。でもこんな私を選んでくれて……本当にありがとう。斗真、大好き」




 こうして俺とカラメルは付き合うことになった。カラメルの笑顔は、本当にきれいで可愛かった。





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