9.5話 久遠真緒の独白
私は、久遠真緒。どこにでもいる普通の女子高生、だと思う。
まぁ、昔は色々あったけどね。特に中学の時の“あの事件”はまだ克服できてないと言いますか。まぁ、いいでしょ、そんなことは。
それより好きな人の話をしようよ。その方が楽しいし、ね?
私の好きな人は、普通の子。何なら不器用だし、ちょっとだらしなくてダメな男よりかも。 あ、めっちゃイケメンでもないのかも。
あ、誤解はしないでね!? 私はちゃんと好きだよ。なんかあるじゃん。急に恋に落ちて自分だけイケメンに見える奴。多分それだと思う。え?でもなんでこんな子を好きになったって? 傍から見ればそう思われるかもだけど。
私さ、まとめ役? っていうか皆の姉貴役というか。困ったらまぁ頼られる、とかそういう存在なのね。まぁ、そこまで仲良い子はいないけどね。“あの事件”からそういうのは辞めた。
そうすると、自然と一人でいる時間が増えた。ま、それは別にいいんだけどね? その時に私は見た! という感じなんだけど。
人がぶつかってきても文句は言わない男の子がいて。
皆がやらないから、しょうがなくやる子がいて。ま、めっちゃいやそうだったけど。怒られるよりは自分でやる方がいいんだろうな。全く不器用なんだから。
時折無愛想に見えて、優しかったりして。あ、ティッシュ差し出してきてくれたよね。
ほんと大好き。本当はそんな気なかったはずなのに、見かねて差し出す君が愛おしくて。
そういやたまに君がネガティブな発言をしているのを見る。今日もそうだ。
きっと桜葉さんは気づいているんだろうな。円谷君もかなぁ。唐沢さんはまだかな。
私は人生ってそういうもんだと思うよ。私も失敗したし、今でも怖い。
けどさ、人生だからしょうがないと思うんだ、私は。
色んな辛いことも悲しいこともある。だから、埋めてくれる人を探すんだ。
ねぇ、私なら埋めてあげるのにと思っちゃう。なかなか踏み出せないけどね。
唐沢さんがいた時はまだ安心していた。あの子はなかなか気づかないだろう、って。でも急に桜葉さんが出てきたときは焦ったな。何があったんだろう……まさかと思ったね。
ねぇ、安佐川君。私じゃダメかな?




