そして大団円
ヘルマンの開催した音楽祭は成功のまま幕を閉じた。
最終日には、ヘルマンどころか現国王の母でもある美しきクロイッツェラー様が、数年ぶりに着飾ったお姿を披露してくださったのだ。
実際は大成功と言うべきであろう。
音楽祭の裏では、カロル王子の国への裏切り行為を隠密に解決できたし、子供達は私が引き受けることで安全を手に入れている。
彼ら二人の救出こそ、カロル王子を捕まえる決め手になるだなんて。
これは、リュイをアルが守り切ったからであり、両親の言葉をカートに伝えることが出来たリュイの功績ね。
留学経験のあるリュイの父親は、ヘルマンと交友があったそうだ。
そこで国で政治犯と名指しされた時、一縷の望みとして彼らはヘルマンを頼って我が国に逃げて来たのだ。
彼らは出国前にヘルマンに救いを求める手紙を差し出しており、その手紙の返事として受け取った手紙を元にファルマーに来たが、助けがくるどころか追手にみつかり殺される結果となった。
もちろん、手紙を横取りして彼らが死ぬままに任せたのはカロルだったそうだ。
途中で自分が交信していた相手がヘルマンではなくカロルだったと気が付いたリュイの父が、ヘルマンだとして贈られた証拠品をどこかに隠していたらしい。
隠し場所は、リュイのお洋服。
彼らが絶対に手放さず、絶対に死なせまいと誓った彼らの宝物。
そして彼女の衣服は賢いアルによってしっかりと隠され、アルの証言によってカート達がそれを発掘して決め手となる証拠を手に入れた、そういう事だ。
それが見つからねばヘルマンこそ反逆者として牢に繋がれていただろう。
よって、ヘルマンには恩人で誰よりも功労者な子供達は守られるべきで、二人が一番望んだ形で私とカートに保護されるのが一番良いのだと決まったの。
「カロル王子はどうして悪いことをわざわざしたのかしら。何もしなかったらお金も地位もある王子様のままだったのに」
「ヘルマンは何もしていないようで色々しているんだよ。だから実は色々と頼られているんだね。誰にも何も期待されないのは辛かったのかもな。同じ年齢で、ヘルマンは正統な王子。そして自分は、実は陛下ではなく陛下に仕えた側用人の子供だったのでは、何て噂も出ている身の上だ。さあ、こんな話はこれからの俺達には必要ない。踊って頂けますか?愛するミゼルカ」
「はひゃあ」
言葉にならない変な声が出たけれど、私はちゃんとカートの手に自分の手を重ねていた。
カートと踊る、それが慣れっこになったのではない。
だって婚約者として踊るのは、音楽祭の後夜祭となる今夜の挨拶にて、ヘルマン王子直々に私達の婚約発表がなされたので、初めて、なのだもの。
だから、カートが変な私に慣れたらしい、が正しい。
言っていて自分が悲しいけれど。
「踊りながら俺達は考えようか。ヘルマンが余計な事を言ったからな」
カートは少々不機嫌そうにして、ダンスの輪へと私を連れて進んでいく。
カートがプリプリしているのも仕方がない。
ヘルマンが、結婚式は来年、それも大々的なパレードなどをして盛り立てよう、なんて余計な事を勝手におっしゃったからよ。
「まあ、君のお父さんが言い張った三年の婚約期間と比べればかなり短いから、ヘルマンに感謝するか。俺もパレードについては賛成な気持ちだしな」
「どうして?あなたもお嫌だったのでは無いの?」
「どうして?それは最高な君が俺の嫁だと見せびらかしたくなったからだよ」
カートは私に囁いた。
私は再びおかしな声を出してしまった。
顔なんて絶対に真っ赤だわ。
そんな私をさらに追い込むようにして、カートは微笑んで私を蕩けさせる。
ガツ。
私はハッと我に返った。
踵に衝撃を受けたそのせいで、私はバランスを崩しかけて危うく転ぶところだったのである。
カートと私が踊る横に私を虐めるあの人が接近してきて、私を転ばせるためにわざと自分の足をぶつけてきたのだ。
私はカートの手と肩に添えている両手に力を込めると、ケイトリンの足に私が受けた仕返しで同じ様にして足を大きくぶつけようと動かす。
が、私はケイトリンの足を蹴れなかった。
目的が果たせなかった私の足は、踵を床に滑らせて転びかける。
私の腰に当てたカートの手にぐっと力が籠り、私を転ばせるどころか私をとてもギリギリな所まで仰向かせてゆっくりと回す。
逆さまに見えた視界はいつものと違ったからか、色々なものが見えた。
カートによる私へのリフトに賞賛を向ける視線。
そして、ケイトリンとそのお相手は、ダンスが止まっているだけでなく、なんだか着崩れている?
「君の攻撃を避けたはいいが、君と違って次の足を置く場所を間違えた。脛を蹴られた青年は、お相手の体重を支え切れずにべちゃって潰れた」
「ま、まあ」
彼女はそれで衆目の視線を全身に受けることとなっているみたい。
嘲笑も?
私以外にもいじめをしていたのかしら?
「さあ、戦果を確認したならば、俺こそ見つめて貰おうか」
再び体を元通りの位置になった私は、カートを掴む手を添えるという状態に戻すどころか、さらにしっかり力を込めて掴んだ。
カートは私の考えを読み取って笑う。
「このお転婆め」
「だって、楽しかったのだもの。もう一回して」
「いいよ。俺が望む時に同じお願いを聞かせてくれるなら」
カートは音楽が再びターンの音調になると、先程よりもダイナミックに私を振り回してターンを決めた。
「ああ楽しい!!明日はハピュアー修道院に今度こそ二人で行きたいわ」
「今度は何を企んでいるんだい?」
「駆け落ち婚よ。婚約者でもダンスが一回だけなんて悲しいわ。私はあなたとずっと踊っていたいもの」
カートは笑う。
私も笑う。
会場の外ではたくさんの花火が打ちあがっている。
まるでこれからの私達を祝うようにして!!
長々とお読みいただきありがとうございました。
2023年中に終わらせたかったのに、年を跨いでしまいました。
2024年もどうぞよろしくお願いします。




