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その二十七、おとぎ話はおとぎ話だからよ

 あのカートの身内ならば、三美神もかくや、ぐらい美しい方々であるのも当たり前な事なのだろう。

 そして美しきカートの姉達は私に悪感情は抱いてはいないけれど、私がカートの配偶者になることは反対という意見は一致している。


 子供過ぎるから。


「た、確かに、子供過ぎますわね」


「そうよ。あなたはもっと大海を泳いで遊ぶべきなの。世間には楽しい事件がいっぱいなのよ。たくさんの人とお話して、沢山の情報を手に入れて、時には人を操って遊ぶ。そのぐらいのお遊びぐらい覚えないと」


 カサンドラは私の顎に人差し指を添えて、私の瞳を青い瞳で覗き込む。

 操る?情報を手に入れる?


「全くそうよ。読みたい本を読んで研究に明け暮れるのも楽しいわね」


 ブリュンヒルデが勇ましいとしか見えない笑みを顔に浮かべた。

 すると、二人を押しのけるようにしてアレクシアが前に出た。


「妹達の戯言何て聞き流してくださいな。私達は長く女だけで楽しく暮らしておりましたから、男性との結婚に幸せを望みませんの。ですが、人生は人それぞれ。納得しての選択ならば何も言いません」


「でも、私には言いたいのですね」


「ええ。結婚はおとぎ話ではありませんのよ?あなたのような可愛らしい妹が出来るのは私達には喜ばしい事ですわ。けれど、あなたは若過ぎてか弱すぎますの。あれの仕事をご存じ?」


 私は昨日カートが軍人で英雄だって事を知ったばかりだった。

 そう、英雄!!

 私は彼と結婚した場合のパレードのことを想像し、その恐怖で両手で顔を覆ってしまった。


「怖がるのも当たり前ですわ。軍人など、お嬢様方には野蛮極まりない職業でしょう。それに弟は海軍の者。あれは海に出ればひと月もふた月も船で過ごさねばならない身の上よ。あんな生活はあなたが夢見る生活ではないと思うの。あなたが時々されるお船の旅ではありませんのよ?」


「あれはあれで楽しいと思うけど?お姉様はアランと楽しんだでしょう?」


「恋人とは何をしても楽しいものなの。ブリュンヒルデ。夫のいるあなたこそ分かっているでしょうに」


「夫は愛してますけど、私の夫は船になんて乗らないし、身ぎれいにできない環境では二日しないで亡くなってしまいますわ」


「お姉さまの旦那は研究に没頭すると物凄く臭くなっちゃうし、植物の品種改良で日がな一日農場にいらっしゃるから、お風呂環境がお姉さまにこそ必要ってだけでしょう?」


「カサンドラ。独身のあなたには、妻の為に身ぎれいにしたい男の気持なんてわからないのかしら」


「二人でお風呂に入りたい気持ちはわかるわ」


「もう!!」


「あなた達、少しお黙りなさい。それでミゼルカ様。あなたは弟に恋をなさっているのかしら?あれはとても美形ですけれど、顔貌なんてすぐに衰えるものですわ。結婚は、一生相手を愛せるかどうかだと思いますの」


 私は、ああ、と声をあげるしか無かった。

 カートに恋なんてしていない。

 素敵な人に微笑まれて、そして、守りたいと懇願されて、私は逆上せてしまっただけなのだ。


 本当に私は考え無しだったわ。

 結婚式でのパレードに物怖じするよりも、結婚後の男性との暮らしを考えるべきだったのよ。

 結婚したら旦那様と一緒にお風呂に入らなきゃいけないものなの?


「皆様、お嬢様にあれこれ話しかけられる前に、ここに侯爵夫人がいらっしゃることをお忘れなく」


 キリアが三人の美女を凍えさせるぐらいの厳しい声音で彼女達を制した。

 三人はキリアの言葉によって母の方へと一斉に顔を向ける。


 まあ!!

 三人が出現するまで弱々しい貴婦人でもあった我が母が、女王様のように凛とした気迫を醸しているわ。


 母はカートの姉達に何も言わず、ただ、傲慢そうに視線を彼女達に動かしただけである。

 すると、アレクシアが長女として動いた。

 母に向けて文句がつけられない礼をして見せた後、まるで軍隊の司令官のようにして姿勢を正したのである。


「大変失礼いたしました。美しく可愛らしいお嬢様を目にした事で、私達は慎みを忘れてしまったようですわ」


「我がエバンシュタイン侯爵家と縁戚になれると勘違いなさった方は皆そうですわね。ほんとう、勘違いはよくあります」


 母の言葉が終わると同時に私達の椅子の脇にホテルボーイ達が立ち、私達は一斉に朝食の席を立った。

 キリアはカートの姉達にけん制するようにして、私の横に立つ。


「お嬢様、紹介の無い方へのご挨拶は無用ですよ」


 え?


 母はもう歩き出しており、私はキリアに誘導されるまま母の後を追う。

 でも、これじゃあカートの姉達に対して失礼すぎないかと振り返ろうとしたが、きゅっとキリアに腕を抓られた。


「キリア?」


「縁のない下々にお愛想など不要です」


 縁が無い?

 私はぴんと背筋を伸ばした母の後姿を見返した。


「ミゼルカ。淑女はね、殿方に結婚をしてもらうものではないの。結婚してさしあげるものなのよ。勘違い甚だしい相手はあなたが苦労するだけ。いくらでも切り捨ててしまいなさいな。これからもね」


「奥様のおっしゃるとおりです。顎をお上げください。お嬢様。どこに出しても恥ずかしくないあなた様ですのよ?」


 母はたった今、私とカートの婚約を破棄されてしまわれたのね!!

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