黎明
立ち尽くすクラウスは窓の向こうから目が離せす呆然とそちらに釘付けとなっていた。
久しぶりに光を受けた瞳が映したのは銀色の長い髪を風にたなびかせた女性だった。
この朝空に染まったかのような紫水晶の瞳に涙を浮かべていた。零れた涙も燦爛たる朝日に照らされ光り輝き一幅の宗教画のように神々しい。
『殿下…?』
クラウスは慣れ親しんだ声にハッとする。
『君は…』
言いかけた途端、声の主はクラウスに駆け寄り笑顔を浮かべた。
『見えるのですね?』
『ああ…、うん』
クラウスはやはり聞き覚えのある声に確信を抱いた。
『ありがとう…。君のお陰』
『はい…!ようやくお目通り叶いまして感慨も一入です』
エリナは眩いばかりの笑顔をクラウスに向けるのだった。
『殿下の瞳は澄んだ湖のような翡翠色ですね…』
エリナの瞳からはまたも涙が零れた。
『…どうして泣いてるの?』
『だって…枕草子が…曙…すごくて……』
よく分からない単語だったので日本語だろうとクラウスは推測した。そして疲れて情緒不安定な事も。
『殿下の瞳……綺麗で……涙…』
エリナは段々と言葉が続かなくなり、かくんと糸が切れた人形のように崩れ落ちる。
クラウスは力無く傾くエリナの体を慌てて支えると、すやすやと小さな寝息を聞き息をついた。
(寝てるだけか…)
そして軽々と抱き上げベッドに寝かせた。精魂尽き果てたように寝入るエリナの顔色は青白く無理をしていたのを物語っている。
顔にかかった髪の毛を直してやり、ぽつりと零した。
『予測不能だな…。本当に』




