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呪われ王子と転生歴女  作者: ももも
第2章
11/21

条件!


翌日、充分な食事と睡眠でエリナは全快していた。



今日も王子の部屋を訪ねている。

昨日と同じようにソファに腰かけ向かい合っていた。



「呪い」が多少外れたせいか、黒い靄も少し薄れて、クラウスが白いシャツらしき物を着ているのが分かった。



『本当にもう具合は大丈夫なの?』


『はい。たくさん食べて寝ましたので。殿下の体調はいかがですか?』


『お陰様で身体が軽いよ。だいぶ強引ではあったけど感謝はしてるよ。だいぶ強引ではあったけど』



皮肉混じりに感謝され、エリナは縮こまった。



『すみません…』


『それで、謝礼の件は決まった?』


『いえ、昨日の不敬を不問にして頂くのが条件だったかと』


『だからそれが君の何の得になるの』


『…得をしたい訳ではありませんし』


『あのね、タダより高い物はないんだよ』



クラウスは今日も一歩も引かない。真面目な王子である。



『う〜〜〜ん…』


『もうイーゴンは貸さないからね』


『かなり根に持ってますからね。主』


『別に』



クラウスはぷいと顔を背けた。

やはり根に持っているらしい。



『う〜〜〜ん』




エリナは必死に考えを絞り出そうと唸った。



『う〜〜〜〜ん』



(私が望む事…私が望む事……)



眉間に皺を寄せて一○さんのようなポーズをとると、ふとヒューの顔が頭に浮かんだ。




『…あ!でしたらウィステリアの孤児を保護出来るように孤児院と学校を設立して頂きたいです!』



『…は?』



クラウスはあまりにも予想外の要求に小さく首を傾げた。



『エボルブルスをはじめとする閑散地では二百年前の反乱から落ちのびた敗戦者達が浮浪者となりスラムが形成され、教育の機会を得られない子供が大人になり、今でもそれがか繰り返されているのだと思います』




ここ数十年でいくらか改善されつつあるがワルト達を見れば、まだ充分ではないように感じていた。




『ですので、一人でも多くの孤児を保護し、教育していけば、その孤児達の将来には選択肢が無限に広がる事になります!()いてはウィステリアの未来を支える人材になっていくはずです!』



力説するエリナに圧倒されクラウスは押し黙った。

そしてさらにエリナの演説は続く。



『浮浪者が浮浪者を生むこの負の連鎖を断ち切るにはやはり教育以外には無いと思います!ソクラテスも「勉学は光、無学は闇」とも言ってますし!』



『ソク…誰?』



まくし立てるエリナは前世の哲人の名前を出してしまったのも気付かずに尚も前のめりに訴えた。




『生まれた環境が違うだけで教育が受けられないなんて絶対間違ってます!私達貴族や王族は社会において責任がありますから人生を選べない事もありますが、彼らは違います!自分の人生は自分で選択出来るべきです!そんな世を造って欲しいのです!』



エリナは息を乱しながらも全ての意見を言い切った。



『それが君の考える条件なの?』


『はい』



クラウスの問に呼吸を整えすぐさま頷いた。



『…平等に人生の選択が出来る世の中…なんて随分と壮大な条件だね。君が生きている間に実現するかは分からないけど、それでいいの?』



『はい!ありがとうございます!』



『なるべく早く教育施設と保護施設は設置するけど、本当にこれが条件なの?君にとっては他国の社会問題な訳だし』



『はい!ワルト達やその子供達がまた歴史を作っていくと思うだけでワクワクしますから!』



目を輝かせて言ったエリナはこれから作られて行く未だ見ぬ歴史を想像し胸を高鳴らせた。



『……………はあ』



もっと即物的な要求をされるだろうと予想していたクラウスは諦めたようにため息をついたが、口元には笑みを浮かべている。



今日もエリナの後ろに控えているノエミはクラウスの表情を見て「その気持ち痛い程分かります…!」と勝手に共感を覚えた。



『やっぱエリナ嬢は大物ですね!』


『そうですとも!』



感嘆するイーゴンの言葉にノエミがすぐに反応する。




『これで殿下の「呪い」外させてくれるんですよね?』


『…お願いするよ』



やはりエリナの思考はクラウスの予想のはるか斜め上をいくものだった。無邪気に笑うエリナに負けを認めたかのようにクラウスは答えたのだった。





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