はじまり
ある日自分が転生者である事に気付いた伯爵令嬢
エリナ・ルナール。
彼女の前世は歴史研究家の歴女だった!
私…今流行りの異世界転生しちゃったって事…?
なるほどなるほど…。じゃあ……
こっちの世界の歴史も研究していいと言う事ですね!?
神様ありがとうございます!!
大興奮で歴史研究に勤しむ中、自分にはある「能力」がある事に気付く。
そんな「能力」と歴史について調べるため訪れた隣国で
エリナはとある陰謀に巻き込まれていく…!
隣国王子クラウスと織り成す歴史探求冒険譚!
更新頻度がまばらになるかとは思いますが読んで頂けると幸いです!誤字脱字多いかもしれませんがご指摘ありましたらよろしくお願いします!
『いやああああああああああ!!!』
自身の悲鳴が古びた石造りの廊下にけたたましく谺する。
全力疾走している足音さえ掻き消すほどに。
凡そ貴族令嬢が出していい声量ではない事は分かっている。
そもそも貴族令嬢はドレスの裾をたくし上げ、あまつさえ全力疾走など言語道断である。
けれど、今は令嬢の嗜みなどエリナには気にする余裕はなかった。
どうしてこんな事に!?
『はあ…っはあ…!』
久しぶりに走ったので肺が限界を越えようとしている。
喉は焼けるように痛かったが、それでもエリナは走った。
涙目になりながら後ろを振り向くと、アレはもうすぐそこまで追い付いて来ていた。
どうしよう!!どうしよう…!!
アルトラガルス公国ルナール伯爵令嬢であるエリナは、
どう言う訳か、謎の生物に追いかけられていた。
まず、どう考えてもおかしい点がある。
謎の生物は町娘のような格好に外套をかぶっているが、
その身体中には剣やナイフがこれでもかと言うほど刺さっていた。
足や腰には奴隷がつけるような鉄球付きの鎖を引きづっているし、真っ黒いサングラスをかけている。明らかに人間ではない。
謎の生物はゾンビよろしく生命感なくよろよろと
小走りで迫ってくる。
『待って……、待って……!』
待てるかああ!!
走り続けて呼吸すらままならないエリナは心の中で叫ぶ。
『はぁっはぁっ』
『待って……!』
ひいいいいいい!!
ごめんなさいごめんなさい!!
謝るから、だからもう追って来ないで下さい!!
『……っ!!!』
とうとう足に力が入らなくなったようだ。
頭もくらくらして目の前がくらんで来た。
私……詰んだかも…。
身体全体が痺れるような感覚に包まれて、それから浮遊感を感じた後意識が暗転した。
是非に及ばず……