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4 ルーカンド王国へ戻るぞ!

 アリアンは受験仲間のいくつかのパーティーと連携して、順調に依頼を受け、それをきちんと全てに成果を出して、友人以外の冒険者や各冒険者ギルドからも着実に信頼を得ていった。


 そして彼女はコツコツと金を貯めては、一人でもやっていけるように、必要なアイテムを買って準備をした。

 ただ、アリアンが冒険者になる最大の目的だった幼馴染みの情報は全く耳には入ってこなかった。

 

「銀髪にエメラルドの瞳の冒険者? いるにはいるけど、そいつはあんたが探してる奴とは違うと思うぞ。年齢が違うから」

 

「美形じゃない奴なら知ってるけど」

 

「スクルド? 未来って意味か? 随分たいそうな名前だな。悪いけど聞いた事ないな」

 

「そんなに目立つ容姿でキザな名前の冒険者がいたら、仲間内で話題になって、噂になってる筈だぜ。ほら、あんたに『流れ矢アリー』って二つ名があるようにさ」

 

 そのダサいネーミングはやめて欲しいとアリアンは思った。この通り名は元々は『流れ星の吹き矢使いアリアン』が縮まったものだ。鼻の頭に小さな黒い黒子が七つ散らばっていている容姿と、いざという時に効果的に使用する吹き矢が特徴的だからというが・・・

 この通り名のせいで皆男だと思うらしくて、実際に会うと驚かれる事が多い。こんなに小柄(女子としては普通だが)なおとなしそうな少女だったとは!と。まあ、それはともかく、

 

「だからさ、噂が全くないのはおかしい。そいつはまだ冒険者になってないんじゃないか? もしくは既になる気がなくなったとか。誰でもなりたいからって冒険者になれるわけじゃないし、そもそも夢なんか変わったっておかしくないだろう?」

 

 そう冒険者の一人に言われて、アリアンははっとした。言われてみればその通りだ。どうして自分はそんな当たり前の事に思い至らなかったんだろう。

 スクルドは先に冒険者になって、自分を待っていてくれるものだと、何故かアリアンはずっと信じて全く疑わなかったのだ。

 

 いつも明るく能天気だったアリアンの心に、初めて黒い影が差し込んだ。スクルドに何か良くない事が起きたのだろか? 今は何処で何をしているのだろうかと。

 アリアンはようやくを決心した。本格的にスクルドを探しに行こうと。

 

 

 冒険者になってから一年後、アリアンは再び大河を渡って母国ルーカンド王国の地に足を踏み入れた。父と共に追っ手から逃げるようにこの地を離れてから五年近く経っていた。

 

 フレイヤ王国を出る前に、親友二人にはきちんと挨拶をしに行った。

 今ではロナンの婚約者になっていたフノスは、いつものように少し心配そうな顔をした。

 しかしたった一人ではなく、馴染みの冒険者達数名も一緒だと聞くと安心したように微笑んで、早く幼馴染みに会えるように祈ってるわと言ってくれた。

 そしてロナンはアリアンの耳元でこっそりこう囁いた。

 

「ルーカンド王国、ますます治安が悪くなっているらしい。政情不安定になってきてるみたいだから気をつけろよ。それと、カラドックさんも今はあっちに居るらしいぞ。会ったらよろしくな」

 

 自分が冒険者になってから一度も出会わなかったし、スクルド同様に噂にもなっていなかったので、多分父親は国へ戻っているんだろうとは思ってはいたが、やはりそれは正しかったようだ。

 

「二人の結婚式には絶対に帰ってくるからね!」

 

 アリアンは二人に手を振って、友人達と旅立った。

 

 

 そしてロナンが言っていた通り、ルーカンド王国の荒廃は思ったより進んでいるらしく、国境を越えるとアリアン達はすぐに大勢の魔物と遭遇した。

 アリアンと三組のパーティーの十五人ほどで次々と魔物を退治しながら進み、最初の冒険者ギルドでその獲物を渡すと、とても感謝をされた。そしてアリアンの銀色のパスポートを見ると、初めて見たと酷く喜ばれた。

 

 せっかく国をあげて『古城スタンプラリー』なるものを立ち上げてはみたものの、スキルやレベルが元々高い冒険者にとっては、全く魅力がないイベントだ。しかも報酬が安いんじゃそもそも問題外だ。

 だからこのスタンプラリーに参加する者達の多くが新人か、もしくはレベルが1、良くて2レベルの冒険者だ。このレベルの冒険者じゃ、大物の魔物をやっつけてもらいたいというルーカンド王国の野望なんて叶うはずがないのだ。

 冒険者ギルドだけじゃなく、一般国民だってそれくらい分かってる。そう、分かっていないのは国の内情なんかに気をとめないで、権力争いをしている愚かな王城の連中だけだ。

 

 アリアンはレベル4で、他のパーティーメンバーも全員レベル3だ。冒険者になってたった1年でこのレベルになれる者はそうそういない。何故か1年前の冒険者認定試験の受験者は優秀な者達が多かったのだ。

 

 アリアン達は冒険者ギルドの職員達に熱い眼差しを向けられたものの、スタンプラリーを制覇するつもなどは全く無かった。自国の魔物処理は本来自国の騎士の仕事だろう。彼らはそれ程お人好しではない。

 自分が必要としている属性の魔物の爪がある古城を調べ、現在そこに集まっている魔物の退治に適したメンバーを組み、計画を立てて、着々と無駄なく行動に移していった。

 

 三か月程でほとんどの者達が自分の欲していた属性のスタンプを古城でゲットし、スキルアップに成功した。

 多くの古城周辺にいた魔物は、いわゆる雑魚モンスターと呼ばれるスライム、ゴブリン、バット、キラービーなどで、割と簡単に古城へ辿り着けたのである。

 

 これ以上スタンプラリーを続けて、雑魚キャラを売っても大した値段にもならないし、程よく強くてレベルアップの対象になる魔物が多く生存するフレイヤ王国へ戻ろう。誰ともなくそう言い出すと、ほとんどの友人達は自然とそういう流れになった。

 

 この国にももちろん大物の獲物はいる。グリフィン、ヒュドラ、ヘェンリル、サラマンダー、そしてドラゴン・・・・・

 このままスタンプラリーを続ければ、今では数が減ってしまったこの貴重な魔物達とも対戦出来るだろう。しかし、これら大物と対戦するには英雄クラスのレベルの人物が、最低でも一人は必要なのである。

 せっかくスキルアップ出来たところだし、今はドワーフやトロール、妖精、フェニックス当たりに挑戦してレベルアップしたい、そう考えるは至極当然の事だった。

 

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