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ただ冒険者になりたかっただけなのに、何故か私は、殿下と一緒に王宮で地下道を掘削しています!   作者: 悠木 源基


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39 ライバルを値踏みするぞ!

 いよいよドラゴン(ファイヤードレイク)の姫とアリアンが対面します。どちらが強いのでしょう?

 他人から守られているような女はアーノルド殿下にはそぐわない。横に並び立つ資格などない。

 ドラゴンの姫は思わず叫んだ!

 

「貴女にはアーノルド殿下は渡さない! 貴女ではアーノルド殿下とは釣り合わない。だから殿下に会わせる訳にはいかない。直ちにここから去れ!」

 

 ドラゴンの言葉が解る人間はドラゴン王と契約した者だけだ。だからその女性に自分の言い放った言葉が分かる訳はないだろうが、少し清々した気持ちになった。

 すると、その女性は意外にも怯えるというよりも、最初は呆気に取られた顔をしていたが、やがて真っ赤な顔をして何か喚いていた。そして、四人のおじさん達に引きづられるように、城から出て行った。

 

 ドラゴンの姫が暫くポカンとそれを見ていたら、やがてアーノルドがヒュドラの雌に送られて帰ってきた。

 その時ドラゴンの姫はようやく我に返って、自分が勝手な真似をしてしまった事を反省した。そして正直に先程の話をした。

 

 すると、アーノルドは驚いた顔をしていたが、とても嬉しそうな顔をした。そしてドラゴンの姫を怒る事はなかった。ただ彼女の勘違いを訂正しただけだった。

 

「多分、その子は僕の大切な友人には違いないと思うが、僕の想い人ではないと思うよ。

 僕の思い人は、黒い髪に黒い瞳をしているからね。それに、鼻の上に僕の守り神の印である七つの星があるから、すぐにわかるよ。どんなに長い間離れていても……」

 

 アーノルドは彼女を思い出しているのか、とても幸せそうな顔をしていた。

 

 そしてそれから間もなくして、アーノルドは例のニヤニヤ笑いをするようになったのだ。自分の城へ帰った際に、想い人に関する良い知らせがあったのだろう。

 一体それがなんなのか、ドラゴンの姫は知りたいと思ったが、聞いたら聞いたで癪に障りそうだったので聞かずにいた。

 ただそれから暫くして、アーノルドがニヤニヤ顔から一転、切なそうな、憂いのある顔をしながらこう呟くのを聞いた。

  

「僕だけの一方的な想い込みなんかじゃなかったんだ。彼女も僕を忘れずにいてくれたんだ。彼女はいつでも僕の為に戦ってくれていたんだ。

 会いたい。早く会いたい・・・」

 

 ドラゴンの姫の胸もキュッと鳴った。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 そうだ。確かにあの時、ドラゴンの姫の胸はキュッとなったのだ。とても切なくて。ところがだ!

 

 今目の前でドンと仁王立ちしている少女を見て、ドラゴンの姫はドン引きしていた。

 その少女がアーノルドの想い人である事は間違いないだろう。黒い髪に黒い瞳をしていて、愛らしい色白の顔の中央には、小さな星が七つ並んでいたのだから。

 

 その少女は確かに可愛らしい愛らしい顔をしていた。まるでお人形のように。しかし小柄な上にスレンダーで、まるで少年のようだった。

 しかも動作も雑で品位が無い。せめて彼女の隣に立つ、以前にも会った金髪娘くらいには上品で色気があればいいのに。

 そんな事を心で思った瞬間、その少女は悲しい顔をして、隣の例の女性に向ってこう言った。

 

「リリナー姉様。お姉様のおっしゃった通りだったわ。一刻も早く一目スクルド様にお会いしたくてここまで来たけれど、今の私じゃ雑で品が無くて、スクルド様に相応しくないってドラゴンの姫に言われたわ。

 今日のところはスタンプだけ押して一旦帰ります」

 

「「「えっ?」」」

 

 ドラゴンの姫だけでなく、金髪女性やその周りにいた六人の男達も瞠目した。

 

「折角ここまで来たのに、スクルド様に会わないでいいの? 確かにドラゴンの姫の言う通り、今のアリーは雑で品位はないけど……」

 

「ううっ! 辛いけど、少し姉様に教育し直してもらってからまた来ます。スクルド様にがっかりされたら、私もう立ち直れないもの」

 

「でも、お前に色気が出るのを待っていたら、いつになるかわからないぞ」

 

 ヴァーリにまでそう言われて、アリーは涙目になったが、彼は今度はドラゴンの姫の方に顔を向けてこう言った。

 

「色気だけばどうにもならないので、その辺はどうかご容赦下さい、ドラゴンの姫様!」

 

「ひぇー!」

 

 ドラゴンの姫は久しぶりに悲鳴(咆哮)を上げた。どうして私の心が読めるの? あれ? どうして私も彼女達の言葉がわかるの? アーノルド殿下の時みたいに……」

 

「ああ。私達三人は神官の一族なんですよ。ドラゴン王と契約したのは王と当時彼の婚約者だった聖女だったでしょ。その二人の子孫が王族と神官に分かれたんです。私達はその神官の直系なんですよ」

 

 ヴァーリの言葉に絶句したドラゴンの姫をよそに、アリアンとヴァーリとブラギの三人は、最後のスタンプとなるファイヤードレイクの爪を腕に押すと、カラドック達と共に古城を出て行ってしまった。

 

 そして暫くして我に返ったドラゴンの姫は慌てふためいて、オロオロしながら辺りをドタンドタンと歩き回った。

 

 どうしよう、どうしよう……

 アーノルド殿下が首を長くして待っていた想い人を、自分が追い返してしまった。

 いや、別に追い返そうとした訳じゃないし、彼女がアーノルド殿下に相応しくないと本気で思った訳じゃなかった……

 

 そう、ドラゴンの姫はアリアンを一目見て、彼女がアーノルドの番だという事がわかった。いや、ドラゴンじゃないのだから、そもそも番とは言えないかもしれないが、二人が絶対に切れない縁で結ばれている事だけは感じとれた。

 第一アリアンにはドラゴンの精気が漲っていたし、その上多種多様な魔物から得た魔力が彼女の体内に籠もっているのが感じられた。

 本気で戦ったら彼女には勝てない、そう姫は本能で感じた。

 この少女は人に守ってもらわずとも自分一人で立つ事が出来る者だ。その上で大切な人、大切なモノを守り切れる人間。そう、アーノルドに相応しい人間だと瞬時でわかっていた。

 ただ、ドラゴンの姫の描いていたアーノルドの想い人とは、アリアンがあまりにもかけ離れていた為に、ちょっと驚いただけだったのだ。それなのに結果的に追い返してしまった。

 アーノルドに嫌われてしまう。恨まれてしまう。

 

 それから暫くして、ドラゴンの姫が何の解決策も見い出せないうちに、アーノルドがこの日はフェニックスに乗って帰ってきてしまった。そしてドラゴンの姫からその話を聞き終えた後、彼は姫の想像した通り、その場に崩れ落ちたのだった。

 

 アーノルドは決してドラゴンの姫の事を怒ったり、罵ったり、恨み事を言ったりはしなかったが、かなり落ち込んで、一晩中なにやらブツブツと呟いていた。それも当然だろう。

 

 アーノルドはもう五年以上、一日千秋の思いで想い人に会える日を待ち望んでいたのだ。そして今日その望みが叶うところだったのだ。それなのに彼女に会えなかった。ショックを受けるのは当たり前だったろう。

 

 それから一週間ほど経った。

 アーノルドはそれこそ寝食忘れて地下道を掘削していた。仕事に集中でもしていないと、焦燥感で身動きがとれなくなりそうだったのだ。

 

 やらかしてしまった自分が言うのもなんだが、彼女は多分近くの宿にでも泊まっているのだろうから、自分から会いに行ったらどうか、とドラゴンの姫は提案してみた。

 

 するとアーノルドは言った。

 自分からは会いには行けない。君から会いに来て欲しいと手紙に書いたのだから。

 大事を前に自分が勝手に動いて、もし敵側に自分が牢を抜け出している事がばれてしまったら、仲間達のこれまでの努力を無駄にしてしまう。

『千里の堤も蟻の穴から』

 という諺があるだろう? それを十分自覚しなければいけない。

 

 さすがは天に選ばれし王子だ。彼はどんなに恋に溺れていようとも、自分の置かれた立場や義務を忘れはしない。

 それからアーノルドはドラゴンの姫をジト目で見て、こう釘を刺した。

 

「お願いですから、余計な事はしないで下さいね。これ以上こじらせないで下さい。今はこの国にとっても、ドラゴン族との契約を守る為にも最も大切な時なんですからね」

 

 しかしそうは言っても、最後の締めをする為には、アーノルドの守り人であるあの黒髪の彼女が居ないと始まらないのだ。

 

 あーあ。あんな事を思うのではなかったと、ドラゴンの姫は深くため息をついたのだった。

 

 読んで下さってありがとうございました!

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