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ただ冒険者になりたかっただけなのに、何故か私は、殿下と一緒に王宮で地下道を掘削しています!   作者: 悠木 源基


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21 地下牢から脱け出すぞ!

 ドラゴン征伐の後の、スクルドことアーノルド王子の様子がようやく明らかになります。やはり彼はただ者ではありませんでした!

「アーノルド殿下はね、四年前に噂通り、城の地下の独房牢に幽閉されたんだよ」

 

「「「・・・・・」」」

 

 オイングスの言葉に、おおよその見当を付けてはいたものの、三人は思わず息を呑んだ。

 

「正妃達は自分達でお膳立てしておきながら、アーノルド殿下に対する国民の熱中ぶりに恐れをなしたんだ。そして殿下自身のお力にも。

 それで地下牢に押し込めたのだが、本当に馬鹿過ぎる… あのお方を閉じ込めておける筈がないって事にさえ考えが至らないなんて」

 

 オイングスはククッと笑った。

 

「陛下は、陛下はどうしてスクルド様をお助けしないのですか? あの人達だって、さすがに陛下が命じれば・・・」

 

 アリアンの言葉にオイングスは首を振った。

 

「陛下は王の権限をアーノルド殿下に譲られ、一切口出しをするのを止められたのだよ。指揮系統が乱れるからね。それにいざとなった時に、奴らに祭り上げられるのも避けたかったし」

 

「でも・・・・・」

 

「そうだよなぁ、考えてみればスクルド様のお力があれば、すぐに逃げ出せるよな。それなのにあえてそれをしなかったという事は、その方が都合が良かったんだろうな」


「えっ?」

 

「恐らくそうだろう。スクルド様は早くドラゴンの王との契約を守りたいと思っていた筈だから、その事を最優先にしたんだ。

 スクルド様が征伐前には既に陛下から継承権を移譲されていたのなら、古城近くでドラゴン達と戦っている最中に、ドラゴンの王とコンタクトを取っていたと考えのが妥当だしな」

 

「えっ? そうなの? 俺、全く気付かなかったけど…」

 

 ヴァーリの言葉にブラギは目を見開いた。そしてそれを聞いたアリアンもこう言いかけて頭を捻った。

 

「それじゃあ、尚更地下牢になんか居たらまずいじゃないですか。契約不履行でまた攻撃され・・・あれ?」

 

 そう。スクルドが地下牢へ幽閉されてから既に四年近く経っているのだ。それなのにドラゴンの数が増えているとか、人がドラゴンに襲われたという話はそれ程聞こえてはこない。それってつまり……

 

「スクルド様、まさか、地下牢の床に穴を開けて城外へ逃げ出して、ドラゴンの古城へ自ら向かったのですか?」

 

 アリアンが意気込んでこう言った。すると、オイングスとマイヤードに惜しい!と言われた。

 

「スクルド様は地下牢の床の下を掘って、ドラゴンの古城まで地下道を繋げたんじゃないですか?」

 

「なるほど、スクルド様なら簡単に出来そうだな。思いつかなかったぜ。さすがだなヴァーリ、頭脳派!」

 

「!!!!!」

 

 

 

 

 ヴァーリの予想は当たっていた。

 

 四年前、地下牢へ入れられたスクルドは焦った。早く地下道を掘らないと、ドラゴンの王の信頼が失われてしまうと。

 せっかく父王が二十年近く努力を重ねてドラゴン王の信頼を得かけたのに、また疎遠になれば、それが水泡に帰してしまう。

 ドラゴン王には父が病に倒れた事を説明して、猶予期間を願ってはおいたが。

 

 脱獄するのは簡単だが、それでは王城から逃げ出すのと同じ事だ。それでは一年前に母同然の乳母のノルンと、最も大切な愛するアリアンを犠牲にしてまで城に残った意味がない。

 スクルドは地下牢の土間(どま)を睨みつけながら考え続けた。そして、ふと気が付いた。自分の役目はドラゴン達の地下道を掘る事なのだ。それならここを掘って、古城の下まで地下道で繋げればいいじゃないかと。

 

 地下牢の見張りは正妃派の騎士がメインだったが、彼らの目をかいくぐって、第一近衛騎士もこまめに様子を見に来てくれていた。

 ある日スクルドは、仲間の騎士にこっそりとある計画を告げたのだった。

 

 そしてそれから三日後の事。

 当番の牢番を薬で眠らせた仲間の近衛騎士二人から、地下牢の柵の食事差し入れ口から保存食品と着替えを受け取った。

 

「お戻りはいつになりますか?

 見張りの事もありますので」

 

「とりあえず半月後、昼の見張りの交代時間でどうですか? まあどうせ、見張りはもう付いていないとは思いますが」

 

「了解しました。どうぞお気をつけて」

 

 そう騎士が言い終わった直後に物凄い爆発音が数回鳴り響いた。その音に合わせて、スクルドは土魔法をかけて足元に直径1メートルほどの穴を開けて、そこへ食料と着替えなどの入った袋を投げ入れた。

 そして片手を振ると、自分自身も穴の中に飛び込んだ。するとすぐにその穴は下から蓋がされ、元通りになった。

 


「王城に爆弾をしかけたんですか?」

 

 アリアンが目を剥いた。

 

「花火だよ。土魔法で穴を開ける時、どれくらいの騒音が出るのかわからなかったからね。目くらましだよ。

 だが、結果的には殿下は物音なんて全く出さずに穴を掘り、騎士達は拍子抜けだったらしいが。その後はずっと別に工作をせずとも、殿下は自由に地下牢と地下道を行き来されているよ」

 

「今もですか? ばれていないんですか? スクルド様が居なくなる事を?」

 

 ブラギは呆れたようにこう尋ねると、オイングスは『まさか!』と笑った。

 

 最初にスクルド様の姿が消えた時、城内は大騒ぎだったらしい。牢の扉の鍵が開けられた形跡はなかったし、地下なので窓もない。それに見張り番もついていた(本人達には眠っていたという認識はないので……)

 

 正妃の配下の者達が城内いたる所、そして王都中すぐさま捜査したが、当然スクルド様を見つける事は出来なかった。

 

 神隠しだ・・・

 ドラゴンの呪いだ・・・

 

 城内では色々な噂が飛び交った。

 

 それなのに、二週間後に突然スクルドが地下牢に戻ってきていた。

 何処へ行っていたのか、どうやって出入(ではい)りしたのかと詰問されても、ずっとここに居た。一体ここからどうやって出られるのか? そんな方法があるなら是非とも教えて欲しいものだ、とスクルドに返されたので、正妃達は何も言えず黙り込んだそうだ。

 

 元々スクルドの信頼おける者しか、彼が魔法が使える事を知らなかった。魔法訓練は防衛魔法の使い手グリームニル第三近衛騎士隊隊長によって、シールドが張られた極秘空間の中で行われていたからだ。

 

 その後もスクルドが地下牢から消えたり現れたりしていたので、城の者達は皆怯えて、地下牢には近づかなくなった。それはスクルド達には好都合だった。連絡が取りやすくなったからである。

 

「四年経っているのだから当然、ドラゴンの古城とはもう繋がっているんですよね?」

 

 ヴァーリがこう尋ねると、騎士達は頷いた。

 

「最初の十日で到達したそうですよ」

 

「「「ヘェ~、凄い!!」」」

 

「今では既成の地下道のメンテナンスが修了し、新しい地下道を掘り始めたらしいですよ」

 

 マイヤードの説明にヴァーリはボソッとこう言った。

 

「つまりそれは、やろうと思えばとっくの昔に、スクルド様は城を攻め落とす事が出来たという事ですよね?」

 

「えっ? どういう事? ヴァーリ兄様!」

 

「あっ、そうか。ドラゴンの古城から城の地下牢まで地下道が繋がってるわけだから、ドラゴンに一、二匹城まで来てもらえれば即陥落させられるもんな」

 

「あっ!」

 

 アリアンははっとした。そうか。さっき、マイヤードさんとオイングスさんが言っていたじゃないか。スクルド様は逃げようと思えばいつでも逃げ出せたと。

 でも、城に居座る連中をただ追い出すだけじゃ駄目なんだ。これからのこの国の道筋を整えなければ民衆が困るのだから。

 

 人は大きな敵、いや大きな障害には一人では立ち向かえない。いやむしろ立ち向かってはならない。何故なら独りよがりになってしまうから。

 多くの人々の助けを得て達成する事で、そこに意味を持たせるのだ。そして、その準備が整うのをスクルド様はじっと辛抱強く待っていらっしゃるのだ。私達を信じて。

 

『騎士だというのに、我々がやっていたのは文官の仕事だったよ』とオイングスが苦笑いをした。

 騎士隊の隊士達は新しい国造りを目指して、他国の行政制度を調べたり、商人を通してフレイヤ王国の上層部と連絡を取り合ったりしていたのである。

 

「君達は我々が思っていたより、成長がかなり早い。だから、このまま口を挟まないつもりだったのだが、少し事情が変わってな……」

 

 オイングスが言いにくそうに口ごもったので、マイヤードがその後を続けた。

 

「早くアリアン嬢がアーノルド殿下とお会いにならないといけない、とリリナー嬢が強く主張なさったんだよ」

 

「えっ? リリナー姉様が?」

 

 意外な人物の名前が出てきて、アリアンは小首を傾げたのだった。

 

読んで下さってありがとうございます!

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