ガ ン ボ ル ブ レ イ カ ー こ わ れ る. GX-0036
毎日投稿兄貴ほんとやべーので初投稿です
【正義の反対はまた別の正義である】
1995年 日本 白崎市 白瀬区
展獄組から回収された資料によって、ファントムカンパニーが白崎市で悪魔テロを企んでいるとの物証が得られ、即日日本政府との取引が成立したブラックタスク。
そこで次なる襲撃先はファントムカンパニーとの繋がりが発見された市議会議員を拉致するために、議員の自宅がある高級住宅街へと決まる。
汚職議員を直接尋問して口を割らせつつ家宅捜索も並行して行う予定だ。
未だ襲撃がバレていない間におこなう電撃戦だ、ここで得られる情報量次第で事件の重篤さが変わるまであるだろう。
そうこうして複数のハイエースが夜明け前の山城議員の自宅前に止まって、中から黒塗りの装甲服達が次々と降車しだす。
同時に周囲を結界で覆う事で隔離を行い、戦闘と逃走防止に備える。
未だ暗い周囲に溶け込みながら装甲服の集団が豪華な一軒家の窓と言う窓、扉と言う扉で突入準備を行った。
そうして配置が完了すると、無線で連絡を取り合い一斉に突入する。
夜陰に紛れて夜明け前に奇襲して相手に何もさせずに制圧。襲撃の基本手順に則った攻撃だ。
『Black task! Open Up!』
「応戦しろ!奴らを入れるな!」
大声で威嚇し同時に突入。ガラスと扉の木材が砕け散る音や金属がひしゃげる不協和音を奏でながら48人の死神達が襲い掛かった。
相手が抵抗しようものなら即時に射殺。標的である議員本人である場合を除いて生死は問われない。
一軒家内部で護衛用に設置されていたであろう悪魔達や異能者達が一斉に応戦しだした。
結界を敷設し周囲と隔離された段階で既に気づいていたのだろう。腕のいい護衛がついているようである。
「糞がっ!ブラックタスクだと!?どこから情報が漏れた!」
「今はそんな事より目の前に集中しろ!ぶち殺されるぞ!」
しかし腕が良い程度の護衛ではブラックタスク社のスペシャルオフィサーを止めるには力不足で有った。
護衛や悪魔達が銃弾や炎、吹雪、雷、衝撃を撒き散らしても、彼らはそれを平然と受け止めつつ反撃で薙ぎ倒していく。
『Firing the on!』『flag out!』『move!move!』
「連中ここが市街地だってわかってんのかよ!」
ブラックタスクにおいてオフィサーに求められる現在の平均練度が30と言われているが、これは他の組織においての幹部級の能力である。
レベルが20もあれば一流の業界においてこれは非常に高い水準で、10Lvの差は実力面で二倍の差がある現状、彼らは圧倒的格上から数と質と戦術の暴力で殴られていた。
圧倒的に不利な状況で防衛戦をしている彼らに援軍が到着した。といっても外からではなく内側からだが。
《おのれ蒙昧な連中が!組織の邪魔立てをするとは良い度胸だ!死をくれてやる!》
奇襲で混乱していた護衛対象である山城議員が悪魔人間としての力を全力で振るいながら立ち上がったのだ。
彼は市議会議員としての仕事が本業であり、力だけはあるが扱いには慣れていない。だからこそ護衛を配置している。
しかしここで敗れれば身の破滅は確実。ならば未熟ではあるが強力な力を振るわない訳にはいかないだろう。
その力はレベルに換算するとおよそ40、邪神:デミウルゴス。大組織の主要幹部や中小組織のトップに相応しいだけの力だ。
彼は力を存分に振るい、全体爆撃のように魔法を放って住宅敷地内に侵入していたオフィサー達を一瞬黙らせた。
しかし・・・。
『Open fire!Open fire!』
「嘘だろ・・・あんなに強いのに一瞬じゃねーか」
だがそんな事程度、第四中隊長ジェラルディン・ハーヴィスが想定していない筈がない。
彼女の想定により、強力な悪魔を相手取る為に状態異常弾と対装甲兵器が十分な数運び込まれていた。
神経毒、麻酔、悪魔にも有効な麻痺毒を次々と撃ち込まれ、動きが鈍った所をM72 LAWとSMAWが八方より叩き込まれた結果、山城議員は奮闘虚しくあえなく沈んだ。
こうなれば待っているのは虐殺である。
僅かに揺れ戻された戦力バランスはまた一気に傾き、そのまま戻る事は無かった。
そして一時間後、地下のセーフルーム内に隠されていた金庫から幾つかの書類が運び出され、気絶した山城議員と共に搬出される。
此方でも結界に時限式の自壊術式が設定されており、撤収作業は滞りなく終了した。
◇
同年 東京都 総合商社 社長室
そこには学生風のファッションをした若く美しい女性と如何にも部長といったスーツ姿の男性が揃っている。
どうやら男性が報告書を持ってきてそれの説明をしている様だ。
「やられました、ブラックタスクです。既に展獄組と山城が襲われて現地の工作情報が抜かれたモノと考えられます」
「良くないわね、白崎市での儀式はまだ途中よ。封印された姫の力はまだ使えない。現地の工作員は?」
「デズモンドが現地で活動しています。しかし彼だけではまともにぶつかるのは厳しいです」
状況を理解した女性は腕を組んで少し考える。
やがて考えを纏めたのかスーツ姿の男性に指示を出す。
「岡島、フレッチャーを部隊毎送って。山城だけでも奪還か始末しないと本丸に攻められるわ」
彼女の決断は本社で育成していた悪魔召喚師部隊の投入だ。
ここで辿られる線を消しておかないと将来に禍根を残すと考えたのだろう。
「了解しました。直ちに手配します」
業界初の大規模な悪魔召喚プログラム同士のぶつかり合いが始まろうとしていた。
◇
同年 白崎市郊外 ブラックタスク駐屯地 夜
白崎市の郊外、人里離れた山の別荘群にブラックタスクの仮拠点が設置されていた。
バブル期に避暑地として造成され、崩壊と共に投げ売りされていた場所を仮の拠点として購入している。
ここは白崎市での活動に必要な物資集積所、ヘリの整備拠点、部隊の休憩所として使われていた。
周囲をライトで照らされて警戒されており、山の中ゆえ幹線道路は監視しておけば重装備の部隊がくれば簡単に発見できると中々の守りである。
先日運び込まれた展獄組と山城議員の自宅で得られた情報は既に支局を通して本社にも送られてはいるが、山城個人の身柄はまだここにあった。
ファントムカンパニーはこの山中の要塞に奇襲攻撃を仕掛けようとしているのだ。
「まだ見つかってはいないな?」
「このルート使って見つかっているならとうに襲撃されてるぞ」
デズモンドのコードを持つ若い日本人男性とフレッチャーのコードで呼ばれる同じく日本人男性がそれぞれ迷彩服を着こんだ十数人率いて山中を歩いている。
歩いている場所は幹線道路から遠く離れた山登りの遊歩道。
そこから道を外れてコンパスと地図を使い、ブラックタスクの拠点に向かっていた。
現在までの行程は概ね順調。発見された気配も無く目標へと近づいていく。
「静かに」
デズモンドが現地の工作員としての土地勘を生かして、発見されにくい道を使いとうとう拠点が肉眼で見える距離まで近づいた。
そうまで近づいたら、フレッチャーが連れて来た仲間達に作戦の内容を再度通達し始めた。
「今回の目的はあくまで奇襲であり陽動、山城を奪還するか殺すかだ。連れていく余裕は多分無いだろう、殺してやるしかない」
「重要なのは誰も捕まったりしない事。真面にやり合おうなんて考えなくていい、捕まりそうなら最悪自決用の爆薬を使え」
「俺達が山城を片付けたらお前達も事前の合流地点まで森の中を散りながら撤退しろ。連中は重装備のせいで山歩きは苦手だ」
仲間達がそれぞれ頷いていく中で、銃器の最終点検を各々がこなしていく。
当たり所が良くてもあの装甲服相手では気休めにしかならないが、あると無いとでは大違いだ。
「此方で目標を達成すれば信号弾を撃つ。それを合図に撤退だ。以上、散れ!」
フレッチャーが各員に説明を終えると、ファントムカンパニーの部隊がブラックタスクの拠点を包囲する形で散開しだした。