ホモと見るスパイス
ディスカバリーチャンネル好き。AbemaTVで軍事関連だけ全カットされるのひで。所詮アサヒ
《GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!》
叫び声が響き渡ると、実験室の中央に目で分かるほどの濃さで白色の気体が集まって塊になる。
『エネミーソナーに感あり!悪霊属:レギオンです!』
実験室内にいたオフィサー達が速やかに銃を手に取ると戦闘態勢に移行する。
それと同時に四人も身構えるが、横島が皆の疑問を口にした。
「解除すれば終わりじゃないのかよ!」
『死に過ぎたんだ。咲原市全体でな』
レオナルドが短く結論を口に出した。
余りにも理不尽な死が大量に発生した場合、大抵それらは悪霊や怨霊としてその場に発生する。
しかし今回は一個の地方都市全体、約10万人以上が一つの異界で死んでその殆どが弔われていない。
反動が生じるには充分過ぎる理由だろう。
『お喋りはそれまでだ、片付けるぞ』
カークが愛用のM240Bを取り出し給弾しつつ構えた。
それと同時に白色の塊が無数の人の顔を内包し叫び声を上げながら白江に襲い掛かろうとする。
『そこだ』
同線上に割り込んで長剣で突進を受け止めたのはカークだ。
この場で装甲化されていない四人に近づかれるのは射線を通すうえで面倒、という判断の元割り込み防御に入る。
僅かに後ろへと押されるが、無事突進を止めると周囲のオフィサー達が援護射撃を開始した。
「豪雷撃!」「豪風撃!」「攻撃高揚!」「防御高揚!」
そこに白江、薫、涼子、浩平による定番ルーチンが入る。
速度に勝る電撃と疾風属性の魔法攻撃を行いつつ魔法で攻撃力向上と防御力向上を最初に行いアドバンテージを稼ぐ格上相手の堅実な戦い方だ。
この戦術の欠点は、魔法攻撃前に詰められて後衛が崩されると乱戦で簡単に各個撃破される事だが、今はカークがタンク役を引き受けている。
鍛え抜かれた筋肉と数多くの修羅場を潜った霊格と技量が、容易くレギオンの攻撃を受け止め弾く。
『対戦車攻撃は禁ずる!装置に当たれば面倒だ!削り殺せ!』
レオナルドの命令に沿って駆けつけた第二中隊の一部が攻撃を続行する。
嘆きの塊と化したレギオンに次々と命中する銃弾。
それに合わせてより激しく叫ぶ声に、ダメージを与えている事を確認出来るが、いつ殺せるかは不透明だ。
僅かな隙にたっぷりと弾丸を吐き出したMG3に次の弾倉を装填しながらレオナルドはカークの状態を確認する。
『カーク!まだ行けるか!』
『容易いわ!戯け!』
レギオンの巨体による攻撃を弾きながらもする返事に力が篭っている事からまだ大丈夫なようだ。いざとなれば変わる必要はありそうだが。
実際にこのレギオンは容易くコンクリート構造物を破壊出来るだけの攻撃を先ほどから何度も繰り返している。
それと打ち合い、弾き、時には押し留めるカークの方が異常なのだ。
「眠って!」
涼子の唱えた魔法により氷結した大きい雹が幾つも発射され、レギオンを打ち据える。
「いい加減にしろぉ!」
浩平がキレながら放つ火球は炸裂しながら嘆きの叫びを燃やしていく。
「黙れ!」
薫の疾風がレギオンの身体を切り刻みながらその形を少しずつ削った。
「安らかに逝け!」
白江は連続で放つ電撃で相手の身体を痺れさせながら焼き潰している。
同時進行でブラックタスクのオフィサー達が部屋中に薬莢をばら撒く勢いで銃撃を加え続けており、それらは甚大な被害をレギオンに与えていた。
『充分見た、死ね!』
全ての攻撃がレギオンの巨体とその耐久力を削り尽くそうとした段階で、ひび割れ崩壊を迎えそうなレギオンが最後の突撃をカークに繰り出す。
それをカークは見切り、突撃を長剣で受け流すと返す刀で一閃。レギオンを両断した。
《GAAAAAAAAAAAAAAA!!!!》
最後に悲鳴を上げるとレギオンは塵が崩れ落ちるように消えていく。
咲原市における問題がやっと解決した瞬間であった。
◇
日本 咲原市 同日夕方
ブラックタスクが結界が解けてまず最初にした事はプロテスタント教会と連絡を取り、連携して生き残った住民の記憶処理に奔走する事だった。
悪魔の存在を公に広めるのは現状マイナス要素が強く、よろしくないからである。
それらの作業が慌しく進められる一方で、ショッピングモールの一角。
管理事務所となる場所で拘束されている神原拓海と面会する一人の青年がいた。
オフィサーが小銃を抱えて待機している状態だが、面会と聞いて神原は疑問符が頭をよぎる。
妻は研究所で拘束されたと聞き、面会に来る人などいない筈だと。
事務所の扉が開き現れた青年は、記憶を探るが知り合いでもない。
故に第一声は決まっていた。
「君は・・・誰だい」
「俺は只のメッセンジャーです。貴方の娘さんから伝言があります」
白江は複雑な表情を浮かべながら目の前の座っている人物を見ていた。
とんでもない事をやらかした人物でありながら、真実ただ娘に帰ってきて欲しいだけの親なのだ。
神原はレオナルドと対峙した時の様な狂気は無く、只打ちひしがれたかのように弱っているだけの人間に見える。
複雑な感情を浮かべてしまうのも無理はないだろう。
「さくらの!?」
驚き思わず立ち上がろうとする神原だが、嵌められた手枷と足枷により思うように動けなく、オフィサーによって椅子に戻された。
「これは受け売りですが、システムによって魂だけは帰って来たとの事らしいです。魂だけの状態で夢に干渉して伝えてくれました」
「泣きながらですが、わたしは幸せでしたと伝えて欲しい。そう言ってました」
ただ絶句しながら白江の伝言を聞く神原。聞き終わると共に、自然と溢れ出した涙を両手で隠すように顔を伏せる。
少しずつ漏れ出るように聞こえる嗚咽。
愛に狂った親に対して、子供からの涙ながらの別れを告げる言葉。それはさぞ苦しいが最後の言葉なのだ、受け止めるしかない。
一つの家族の置き去りにされた愛がやっと終わりを告げる。
事務所を出て待機を言い渡されたベッドに向かう途中、レオナルドが待ち伏せたかのように白江に声を掛けた。
『俺にはわからんが愛や情は人を狂わせる。お前も精々気をつけるんだな』
『それと・・・事態が収束してからで良い。四人で地元のプロテスタント教会を尋ねろ、俺達からの紹介なら悪いようにはされない。そこで将来を考えておけ』
「人生をBETした代償ですか・・・」
首を傾げながら腕を組み壁を背に口にするレオナルドが続きを話す。
『この業界に入ったのなら何処かの後ろ盾があったほうがやりやすい。個々人なら食い物にされるな』
「分かりました、後日尋ねる事にします」
こうして新しいグループが悪魔業界にまた放り込まれることになった。
しかしブラックタスクの戦いは終わらない。今回が運悪く顕在化しただけで、彼らが放り込まれる鉄火場はまだまだ世界に多い。




