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ホモと見るプリウスミサイル

† 飯 塚 幸 三 †

【日常の崩壊】


1999年 日本 咲原市郊外 山中の研究施設


フェイルノート社の郊外に位置する研究施設は厳戒態勢の元、防衛の準備が完了していた。

M2重機関銃 Mk.19 自動擲弾銃 BGM-71 TOWミサイルと秘密研究施設でないと到底隠せない重武装で固められている。


対する道なき道をM113A3装甲兵員輸送車で爆走しているブラックタスク社は上空援護に社長直属小隊を加えたUH-1H六機とUH-1M4機が随行していた。

完全に戦争する気の編成である。それも当然であろう、相手は世界を滅ぼしかねない研究をしているのだ。


防衛部隊から射線が切れた丘の上から研究施設を観察する、第二中隊長カーク。

双眼鏡越しに防衛体制をチェックすると隣にいる副官と感想を言い合う。


『悪くは無い、が戦闘員は民間企業の域を出ないな。悪魔業界基準なら並だろう』


『これならスペシャルオフィサー達で平押ししても問題有りません』


副官も相手の防衛能力を吟味した結果を素直に述べる。おそらくは正しい判断だ。


『念の為UH-1Mで航空支援し火点を潰しながら前進させよう。固定の対空ミサイルが無いなら携帯式位の筈だ、地上部隊に掃除させればいい』


『了解です、そう伝えます』


開戦の火蓋が切って落とされる。



「衛生兵ー!!来てくれー!!」


秘密研究施設は今、砲爆撃を受けながらの地獄のような防衛戦を強いられていた。

ブラックタスク社による迫撃砲攻撃で制圧射撃を受けた後、前進してきた第二中隊オフィサー達がUH-1Mの航空支援と連携して火点を一つずつ制圧。

彼らの防衛線はいとも簡単にズタズタに引き裂かれるように破壊されていく。

戦線に穴が開けばそこに装甲化されたオフィサー達が雪崩れ込み突破口が拡大され浸透突破が図られる。


気が付けば研究所の内部にまで戦線は後退し、決死の抵抗が試みられるもそのどれもが容易く砕かれてしまう。


「予備戦力を至急前線に寄越せ!でないと持たない!」


「予備はもう無い!ヘリ降下の対応に回ったキリ連絡が付かないんだ!」


そんな阿鼻叫喚の地獄の中、研究所の最奥で立て籠もった研究員たちが最後の悪あがきを行おうとしていた。

研究していたシステムの起動である。


「急げ!連中は待ってはくれんぞ!」


「研究成果通りなら押し返すぐらいは出来るかもしれん、今やらずにいつやる!」


実験室内部では研究員たちが忙しなく動き、システムの準備に見舞われている。

彼らを突き動かしているのは死への恐怖と未知への探求心だ。それはもうこの場において深刻なものだろう。


「チェックリスト完了!いつでも行けます!」


「よし!"ラザロシステム"起動!」


そうしてブラックタスク社は間に合わなかった。



1999年 咲原市 雨宮高校


放課後の喧騒溢れる高校。その教室の一角に男女合わせて四人の高校生が話をしている。


「とりあえずカラオケにでもいこーぜ!」


活発そうな男子、横島浩平が提案する。彼は友達と遊べればそれで幸せなタイプなのだろう。

根が少年のままとも言えるが。


「それも良いけどクレーンゲームに追加されたっていうぬいぐるみが気になるかな」


おしゃれに気を使っている、肩まで栗色の髪を伸ばした女生徒は高浜涼子。部屋にはお気にのぬいぐるみがたくさん詰まっているようだ。

かわいいモノには目が無いらしい。


「それじゃあ駅近くのモールが良いわね、あそこならどちらもあるから」


彼女は桔梗薫。黒髪をショートヘアに抑えた度胸がありそうな女子だ。

実家が男兄弟だらけでそれに影響されたのか男勝りな感じが見え隠れしている。


「決まりだな。モールに行こうか」


眼鏡をかけた利発そうな男子生徒は玄海白江。変わった名前だが至って普通の男子高校生である。

妹を猫かわいがりしており、最近は反抗期なのかそれを悩んでいるらしい。


彼らが駅近くのショッピングモールに到着し一通り遊び倒した頃、咲原市全体を覆うように巨大な結界が発生し、内部が異界の様に悪魔が実体化し始めた。

モール内部にいた彼らはそれには気づかなかったが、モールの外から怪我をした人が逃げ込んできた事から尋常でない様子を感じ取った。


「大丈夫ですか!?今手当しますから!」


高浜がハンカチとテーピング材で逃げ込んできたサラリーマンを手当てすると、男性は必死な声で彼らに呼びかけをする。


「逃げろ・・・!化け物が外を歩き回ってる!」


男性はそれきり呻くと壁に背中を預けて気を失ってしまう。


「化け物だって?何だいそりゃ」


疑問符を上げる桔梗に対して、男性が通って来た出入口から紫色の肌色をした邪鬼:餓鬼三体が扉を開けて飛び出して来た。

咄嗟に距離を取る四人。あまりに醜悪な外見に眉を顰めるが、警戒は怠らないようである。


「なんだこいつ!」


《ギャアッ!》


横島が声を上げるが化け物達は叫び声を上げながら飛び掛かってくる。


「皆気を付けろ!こいつらやる気だぞ!」


玄海が全員に注意しつつ、飛び掛かりを避けた。

そうして態勢の崩れた餓鬼に対して蹴りをお返しに見舞う。


《グギャッ!!》


それなりに効いたようだが、致命傷ではないようだ。

その間に横島が近くの消防用の斧を取り出して振り下ろす。


「オラッ!」


《ギィィィ!》


玄海に注意が逸れていた餓鬼に思いきり振り下ろされた斧は命中し、餓鬼は塵の様に消えてしまう。


「なんだこいつら、手応えがあったのに霧か何かの様に消えちまうぞ」


相手の不思議さにあっけに取られている横島に対して、桔梗が叫んだ。


「横島!右だ!」


《ギャアァ!》


同類をやられて怒ったのか、餓鬼の一体が横島に向かって飛び掛かる所である。

それに対して高浜が餓鬼の横合いから体当たりをしてカバーを行った。


「危ないよ!集中して!」


体当たりで吹き飛んだ餓鬼へは桔梗が追い打ちで小さなナイフを突き立てる。

護身用として兄弟達からプレゼントされた一品だ。

ナイフが刺さり餓鬼が呻いた後に塵と化して消え去ると、残った一体が逃げ出そうとする。


「あいつ逃げるぞ!」


追うべきか悩んだ四人だったが、突如の剣戟が餓鬼を襲う。

真っ二つにされた餓鬼が塵と化した場所には全身を艶消しされた装甲服が長剣を抜き放った態勢で立っていた。

僅かに周囲を見渡す装甲服。その視線が四人を見つけるとガスマスク越しの男の声が掛けられる。


『なんだ、自衛出来ているじゃないか。感心だな』


「お前は何者だ」


玄海が強張った声でなるべく冷静に問う。

小銃と長剣で武装した装甲服の男だ。警戒しない方が可笑しい。


『まぁそう急ぐな、一応敵ではない。味方でも無いがな』


『ブラックタスク社第九中隊ヘフナー少佐。"今回の"事件の担当者だ』


暗く燃える長剣を鞘に納めた男がそう名乗った。

学生達動かすの難しい・・・難しくない?

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― 新着の感想 ―
[良い点] この小説に気付くのがだいぶ遅れたけど、読めて嬉しかったゾ。 こちらの社長も相変わらず殺人的スケジュールだし… 頑張ってね❤️
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