【EP11】続・77歳元暗殺者の親爺 『玉藻ちゃん vs マイアミ大企業重役親子』
ガンダムはZまで派侍
1999年 アメリカ合衆国 ミシガン州デトロイト市 ブラックタスク社管理異界最下層
白を基調とした聖堂の内装を持つ部屋で、ウリエルとクレイグは対峙していた。
明らかに強い意志の元立っているクレイグに超然としたウリエルが言葉を投げかける。
《日本の咲原市で非道な実験が行われています。これは世界規模の災害を呼び起こすでしょう》
「そこに行くことに異論は無い。此方でも動向ぐらいは掴んでいる、何か悪魔関連の研究をしているとな。問題は詳細だ」
ウリエルの予言に対してクレイグは落ち着いた口調で言葉を返す。
そしてより情報を詳しく話せと要求した。元々大洪水をノアに伝えたウリエルだ、詳細を語る権能くらい持っていておかしくない。
《フェイルノート社の極秘研究に人間の深層共通意識に関する装置の開発があります。これが原因です》
「わかった、介入の準備を進めよう。それで報酬だが・・・」
ウリエルの言葉に話が進む。そして報酬へと話が変わるが。
《悪魔と対峙するのに必要な能天使達を手足として貸しましょう》
「それは必要ない。誰がどう天使の力を借りるかは部下の裁量に任せている。現在のスカウト方式で問題ない」
クレイグは余り天使に依存する戦闘形態を好まないようだ。その為今まで通りの悪魔交渉による適時仲魔にする形を維持する事を望んだ。
《では呪詛から身を守れるよう教会の祝福を強化します。それでよいですね》
「それで良い。話は纏まったな」
あくまでも人の手による強化が主眼となっている事が望ましいとのスタンスを続ける様だ。
《えぇ・・・貴方が砕け散るその時までは良い関係でいましょう》
「決して砕けない。勝つのは俺だ」
神々しい金髪を浮かべながら目を閉じて相対するウリエルが圧を込めながら祝福の言葉を紡いだ。砕けたその時が終わりだと。
それに対してクレイグは決して譲らぬ、成し遂げるのは己だと覇気を伴い何度でも宣誓する。
お互いが互いに決して譲らぬ主張を持って相対している。もしぶつかる事があれば、場所の方が先に持たないかもしれないほどの圧だ。
黒塗りの装甲服のままその場を退出したクレイグ。その足で今から咲原市への介入の準備に向かったのだろう。
残ったのは、空中に浮かんだまま目を瞑りただ超然と過ごすウリエルだけとなった。
◇
1999年 日本 キャンプ座間 ブラックタスク社日本支局 レオナルド・ヘフナー
第九中隊として本日付けで日本支局へと着任したレオナルド。浅黒い肌と特徴的な金髪を晒しながら支局内を歩いている。
装甲服を外したインナーに作業着を羽織った格好で支局長室のカーク・マイルディの元へと向かった。
支局長室に到着すると、ノックをした後に発言して入室する。
「ヘフナーです」
「そうか、入れ」
如何にもな白人の巨漢といったマイルディの低い声が響き、入室を許可する。
ヘフナーは木製の扉を開けて中へと入った。
支局長室は一般的な局長級のオフィスと違わず、応接用のソファも置いてあったので、ヘフナーはそこにどさりと座った。
普通に考えれば礼がなっていないと注意を受けるところだが、ヘフナーとマイルディの関係では問題ない。
「喜べ、着任してそうそうだが作戦行動の予定が入った」
「そいつは良いニュースじゃないか。楽しめるんだろうな?」
部屋の中で隔離された空間になると、お互い言葉遣いがラフになり、遠慮のない口調で会話が弾んだ。
これはマイルディが元はヘフナーの同期筋であり、そこからヘッドハンティングしたからである。
野獣の様な覇気に満ちた男であるヘフナーはなぜ軍人をやっていたのか不思議なくらいだ。
「それで?相手はどこの誰なんだ。教えてくれよ」
「咲原市のフェイルノート社。CEOは神原拓海、これを強襲して殺す。目的は実験施設も同時強襲する事だ」
科学系のそれなりに大きい企業で、業界トップでは無いもののそれなりの規模と市場を持っている大企業の一角である。
事前調査の結果として、自前の私兵集団を持っており自動火器も行き渡っている。初陣には持って来いだろう。
「特級の獲物じゃないが、慣らしには丁度いい。戦争するには悪くない」
「お前が満足出来る相手を常に欲しているなら中南米に配属されればよかっただろう。軍人や特殊部隊崩れがそれなりにいるぞ」
投げ渡された資料を読みつつ、ヘフナーは足を組み直しながらその言葉に異論を唱えた。
「それも悪くないが、焼け付くような命の取り合いがしたいのなら最前線の日本だと言われてな。それに乗ったのさ」
戦いのスリルと現実の利益を両天秤に掛けて両方を取った選択肢でここに来たのだという。
何処までも自分の欲望に率直な男だ。これでいて最低限の筋は通すのだから扱いが難しい。
「ならそれは正しい判断だな。ここではステイツ程兵力に余裕がないにも関わらず問題の量と質が高い。殺し合いなら楽しめるだろうよ」
第二中隊だけでは飽き足らず、第九中隊も日本に駐留させるとなれば一個中隊では問題を処理しきれないという証だ。
ヘフナーの求める闘争はここでは絶える事が無いだろう。
「悪いが咲原市への介入は政治の準備がまだ済んでいない。些か時間が掛かる。その間に日本に慣れておけ」
マイルディがそう告げると、ヘフナーは立ち上がって書類をテーブルに置くと右手を差し出した。
「ならそうさせてもらうさ。これからよろしく頼むぜ」
「あぁ。精々よろしくな」
ヘフナーの差し出された右手をマイルディは同様に右手で握手し、離す。
日本にこうして闘争に飢えた野獣が解き放たれることになった。




