田 所 掃 除.cityconomy.mp4
難産なので初投稿です
1997年 天美市 天美第一ビル
決死の撤退支援を行いフウキを失い体力と魔力共に疲弊したアザゼルが、天美第一ビルに帰還して最初に見た光景は、完全に荒廃させられた拠点ビルだった。
窓ガラスは殆ど割られており、ビル内部で一方的な破壊活動が行われた事を示唆している。
「こんな・・・!」
レディススーツの肩を撃ち抜かれたままなんとかオルトロスに肩を借りて歩いているアザゼルは、僅かな望みに掛けて儀式の中枢である地下へと降りていく。
《無理をするな。肩なら貸してやる》
オルトロスが気遣いながら降りて行った先の地下にある広い儀式場は酷い有様だった。
なんとか防衛しようとしたのだろう予備戦力と訓練生達の死体がそこら中に散乱しており、血臭が酷くむせ返りそうなほどである。
そして高台になる位置の儀式場の中央では要になる魔法陣に無数の艶消しされた装甲服の集団がいた。
『遅かったな』
ガスマスク越しのくぐもった声が聞こえると、ブラックタスク社長直属小隊の集団から一人だけ上段から階段を下りてアザゼルの方へと歩いてくる。
小隊達は銃口を二体の悪魔から逸らさず静かに佇んでいるだけだ。
『お前達の負けだ。大人しく魔界に帰るが良い』
もはやシェムハザの復活は無理だ。この街からは手を引くしかないだろう。
しかしアザゼルの意識は目の前の散らばった命だった者たちへと視線が吸い込まれている。
「ぁぁ・・・あ・・・」
アザゼルは一番近くに転がっていた死体を血糊でスーツが汚れるにも関わらず抱いた。
彼は自分が直接スカウトしたサマナー。思い入れのある予備部隊の隊長たる人物だった。
「よくも・・・よくも・・・!」
《仲間を殺してくれたなぁー!!!》
激昂したアザゼルが赤く染まった長剣を握り、クレイグに対して全身に高濃度の魔力を纏い突撃を敢行した。
元々人間への愛故に堕天した堕天使達、人間への思い入れも他の悪魔などとは大違いだ。
『良いだろう、手を出すなよお前達』
それに対してクレイグは片手で小隊を制すると自分も長剣を抜いてその突撃を受け止めた。
受け止めた衝撃で足元のコンクリートが抉れ割れるほどだが、それを受け流し、蹴りを側頭部に喰らわせる。
凄まじい勢いで壁のコンクリートに叩き付けられるアザゼルだが、素早く立て直すと再度突き進み、今度は上段から抑え込むように剣を振り下ろす。
《お前・・・!お前ぇ・・・!!》
振り下ろされた一撃を半身になって避けるクレイグ。避けられた一撃はコンクリート製の床を易々と切り裂いたが、カウンターで額に長剣を突きこまれる。
額を貫通こそしなかったが、人間のカタチをしているアザゼルがカウンターを受け身体を浮かされる。
そこに横薙ぎの一撃が入り続いて足払いで両足が切られ地面に倒れ伏す。
《殺す。殺してやる・・・》
『生憎だがまだこの命を使い捨てる訳にはいかんのでな』
倒れたアザゼルに対して霊基の核へと剣を突き立てるクレイグ。しっかり捩じり、引き抜いて止めを刺した。
ここで死んでも幾らかのリソースを消費すれば再度現実体を作れる悪魔は多い。この堕天使もそうだ。
次に会うときは恐らく復讐も兼ねた報復に現れる時だろう。
《あーあ、これは死んだなオレ》
粒子の様に消えるアザゼルの身体を見ながらオルトロスは静かに呟いた。
当然レベル上限の悪魔など野に放置を許される事も無く、オルトロスは小隊によって滅ぼされた。
これにより、街からグリゴリの影響力は退けられた。それまでの栄華よりは衰退する事で不満は起きるだろうが、天美市はプロテスタントの支配下に変わる。
◇
1997年 アメリカ合衆国 ミシガン州デトロイト市 ブラックタスク管理異界 最下層
まるで聖堂のように内部の構造が変わった封鎖領域の奥で、ウリエルとクレイグが対面していた。
光る様な長い金髪と二対の白い羽根があり炎を纏う剣を持った天使と、艶消しされた漆黒の装甲服姿の男だ。
『契約は果たした。報酬を払ってもらおう』
《当然です。約束は違えません》
ウリエルが祝福の言葉を唱えると、クレイグを始めとしたブラックタスクのオフィサー達が使う剣に炎が迸り、収まる。
これで契約は果たされた。ウリエルのもう一つの存在理由が無くなれば、彼女も天界へと帰るだろう。
祝福された長剣を一目確認しながらも話を続ける。
『世界に光を齎す為と言っていたが、具体的にはどうするつもりだ』
《救世主をこの世界へと再度降ろすのです》
『・・・なんだと?』
余りに荒唐無稽な内容にクレイグが思わず聞き返してしまった。
非常識だ。今の世にキリストを再度生まれさせるなど意味が無い。宗教は既に力を失って久しく、現実的で物質的な法則が世界を支配している。
仮に再度降誕させるとしても、それは世界の時間を巻き戻し、神の時代へと帰らせる事に等しい。
人類の進歩と発展を一からひっくり返す事と同義だ。
《人類は過ちを犯し過ぎました。その歪みを是正する必要があります》
『過ちを犯すのはどのような存在でもする事だ。問題は繰り返さないよう対処する事だろう』
その言葉に今まで目を閉じていたウリエルが初めて瞳を開けてクレイグを見た。
《貴方に何が出来るとでも?》
『歴史と時代を作るのはいつの世も人類だ。出来ない理由が無い』
クレイグの答えに対してウリエルは納得しかねると言う風に目を細める。
《貴方に出来ても他が出来るとは限りません、歴史の汚濁を作ったのも人類でしょう》
『間違いを正すのも人類だ。それぐらいはやって見せるとも』
問答に対して言いたいことを飲み込んだのか、ウリエルは一拍置いてから言葉を出す。
《ならばこの国一つくらい浄化し導く事はやれますね》
『やれるとも。その為に俺は命を懸けているのだ。但し導く先は俺が決めるが』
《その宣誓、しかと受け取りましたよ。クレイグ・アイアンズ。貴方が砕け散るその時まで見守らせてもらいましょう》
神の正義を目の前に、宣誓を行ったクレイグ。
例えその身が枯れはてようとも貫く強い意志の元、戦い抜くと固く誓った。
この年からブラックタスク社は政治的活動も活発に行うようになっていく。
対悪魔のスペシャリストたちとしてだけではなく。プロテスタント教会を通してアメリカ全土の霊的防御を固めるべく活動を活発化した。
決して諦めず、迷わず、違えない。鏖殺の集団は規模を拡大して影響力を拡大する。
なんだか筆が滑って大変なことになっちゃったゾ~




