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田所Surge♯2

ケツワープで移動出来たらどれだけ物流革命出来るんだろうか。

彼は疲れていた。


1997年 天美市 オレゴン精密工業株式会社 電子部品生産工場


天美市郊外にある電子部品工場はブラックタスクによる襲撃を受けていた。

彼らも何の備えも行わなかったわけでは無い。ブラックタスクが天美市に移動した時点で防御を固めるべく戦力を集中している。

工場内を異界化し、悪魔を放ちつつ敵の足止め。そして本部への救援要請。


工場は組織が多額の資金を投入し建てたモノで、例え計画が失敗しても、

これからの情報化社会においての資産としての価値も高く、捨てるには惜しいからだ。


しかし、それ故にブラックタスクの攻撃目標になった。

ガンシップに改造されているUH-1C二機がUH-1H四機を護衛してのヘリボーンがやってくる。


グリゴリの数的主力であるサマナー達、その本質は歩兵だ。

全ての基本、最も重要だが最も脆いのが歩兵だ。それを霊格を上げ強度を高め、仲魔を増やし対応幅を上げた事で非常に優秀な歩兵になっている。

だが歩兵の天敵はいつであろうと直接火力支援なのだ。砲兵・近接航空支援に対して非常に弱い。

近代の戦争では歩兵を最も効率よく殺すのはいつだって砲兵なほどだ。


反撃できない距離・位置から一方的な砲爆撃をされると、どんな強兵も容易く潰される。

それがまさに今始まろうとしていた。


『マーブル1、攻撃を開始する』


『マーブル2、攻撃開始!』


ガンシップから放たれた数十発ものM151ロケット弾が弾頭の高性能爆薬で工場正面の外壁殆どを破壊する。

爆炎が上がり、瓦礫が塵や埃と共に落下すれば、次はミニガンの時間だ。


『目標視認!Fire!』


外壁が崩れて中が見渡せるようになれば、M134ミニガンが7.62mm弾を火を吹いているようにしか見えない発射速度でばら撒き、内部の悪魔を掃討していく。


『内部隔壁を視認!FOX3!』


非常用の隔壁が射線を塞いでいれば、邪魔だと言わんばかりに対戦車ミサイルのTOWをぶち込んで破壊し、更に奥を見渡せるようにしてからミニガンが掃射を重ねる。

隔壁の裏で遮蔽物を積み上げて防御していたサマナー達が、ミニガンの暴力的な火力の前に紙屑の様に体のパーツを千切れ飛ばされていく。


ガンシップの副操縦手が赤外線カメラを使い、内部を確認した。


『こちらマーブル1、射撃の有効を確認。見える範囲では敵はいない』


連絡した先は、UH-1Hから降下を完了していた社長直属小隊。

彼らは制圧射撃の間にさっさと降下しており、工場近くまで接近して突入の機会を伺っていた。


『了解、マーブル隊。航空支援感謝する。念の為逃亡者が居ないか反対側も確認してきてくれ』


『了解。マーブル2、工場の敷地反対側を確認してきてくれ』


『了解』


ガンシップの内一機が上昇し、工場の反対側を警戒しに行った。

時折掃射音がするので、逃亡兵が出たのだろう。憐れな事だ。


『直属小隊、これより突入する。警戒は厳に行え、乱戦は避けろ』


直属小隊が開放的にリフォームされた工場内部へと足を踏み入れる。

オフィサー達はチーム毎にお互いの死角をカバーし合い、内部の撃ち漏らした悪魔やサマナー達を淡々と処理していく。

曲がり角で待ち伏せしていたサマナーが出合い頭にM870をオフィサーの頭部に撃ち込んできたりもしたが、

そもそも銃撃に耐性を持つ装甲を貫通出来ず、後続のオフィサーに反撃を喰らって即死した。


『社長より各隊、捕虜は取らない。全て殺せ』


乾いた射撃音と共に命乞いを否定する通信が部隊へと行き渡る。

広々とした工場内の各所で次々と命が散っていく。

そうした中で、クレイグは工場の中枢を目指して歩いて行った。

隔壁を爆薬でブチ破り、内部へ催涙ガスグレネードを投げ込む。


しかしなんの反応も無い事に不審に思ったオフィサーが鏡を使って内部を確認すると、スーツ姿の一人の男がなんの問題も無いかのように立っているだけだった。


『社長、敵幹部と思わしき男です』


オフィサーはそのまま判断を上役に投げた、相手の能力も未知数な現状不用意に突っ込むことは得策ではないからだ。


『掃射しろ、属性弾装填。マーブル隊!工場中央にて敵幹部を発見、航空支援を要請。位置を送信する』


『『『了解』』』


なのでまず行われたのは火力投射である。相手が余裕ぶっているならば火力で圧殺してやればいい。

続々とオフィサー達が弾倉を交換し属性弾を装填、マーブル隊が上空までやってきてTOWとミニガンをばら撒くのを皮切りに一斉掃射が始まった。

耳に痛いほどの響く銃声と爆音が連続して鳴り響くなか、スーツ姿の壮年の男が両腕で顔を守りながら煙を突っ切ってクレイグに向けて突っ込んで来る。


《随分と優雅さの無い挨拶じゃないか、鏖殺の英雄》


『強大な悪魔を相手に悠長に会話を選ぶのは俺の流儀ではない』


クレイグに向けて急速接近して空中から取り出した剣を振り下ろす悪魔。それを部下のオフィサーがナイフで弾くが、痛烈な蹴りで廊下の端まで飛ばされてしまう。


《私の名はバラクィヤル。よろしく頼むよ》


名乗りと同時に鋭い突きが喉をめがけて走る。喉は装甲の脆弱点の一つだ。貫通されれば致命傷は免れない。

その致命の一撃を手甲で逸らし更に踏み込むとバラクィヤルの顔面へと握られた拳が振り下ろされた。


『よろしくする理由が無い。悪いがお前には死んでもらう。勝つのは俺だ』


カウンター気味に振られた拳は見事に悪魔の顔面に直撃し、人体が出してはいけない音を出しながら体がふらついた。

続けての連打が至近距離まで詰められたバラクィヤルの上半身を襲う。

しかしその状態から彼は態勢を崩して後ろへと飛び、距離を開けた。


《いやはや近距離もお得意とは中々どうして隙が無い》


だが距離を開ければ待っているのは銃撃と爆撃の嵐だ。すぐさまクレイグの傍に居た分隊から射撃と対戦車攻撃が飛んで来る。


《我々貴方方を正直侮っていました、大天使以外敵ではないと。認めましょう貴方方は敵であると》


それらを高速移動で避けつつ命中しそうな弾だけを剣で叩き落とすとまだまだ元気な様子で語りを続けた。


『そのまま死んでくれ。お前達の行為は人の成長を妨げる』


バラクィヤルはその言葉を聞くと嫌そうな顔をしてクレイグの主張を否定した。


《いいえ、違います。現に我々の手が入る事でこの都市は繁栄し成長しています》


それについては事実だった。グリゴリの組織がここに根付くことによって産業が振興され経済の好循環が天美市では起きている。

だが英雄の答えはNOだ。


『だがそれはお前達が持ち込んだものだ。人は自力で生きていける、お前達のそれは甘えだ』


互いの主張は平行線。人は自活できるし、失敗も自己の責任として受け入れるべきだと、独立した"人類"を主張するクレイグ


《人は正しさだけでは生きていけない灰色の生物です。未だ人は揺り籠の中で育むべきです。みなが貴方のようには成れません》


人類は独立するにはまだ早い。その愚かさも賢さも未だ途上、上位者による庇護と育成が要るのだとするバラクィヤル。

互いの主張が揃ったのなら、後は自らを押し通す為にぶつかるだけだ。



天美市 オレゴン精密工業株式会社 電子部品生産工場


電子部品工場の中央管理室にて一人と一体の戦いは佳境を迎えようとしていた。

長い年月で練られたであろう鍛錬から見て取れる鋭い身のこなしと高速の剣先を振るうバラクィヤル。

実戦で鍛えあがられたブラッディな剣術と霊格を上げた事で素早さと力強さが強化された肉体を十全に操るクレイグ。

どちらも余人が介入する余地のない高速での近接戦闘を繰り広げ、剣を打合わせ、時には避け、時には弾く。

クレイグの袈裟切りをバラクィヤルが弾き踏み込むと共に胴体を切り抜けようとするも、弾かれた衝撃を生かした後方への短い跳躍で機を逸する。

バラクィヤルの鋭い三段突きをクレイグが肩部装甲で無理やり弾き、タックルで潰そうとするが、手馴れた重心移動でひらりと躱された。


このままでは埒が明かないと見たクレイグは一度フェイントを入れてからの蹴りで距離を開けると、上空と付近に居た部下に指示を出す。


『やれ!』


UH-1Cと地上のオフィサー達が次々と対戦車火器を放ちバラクィヤルを仕留めに掛かる。

それをまともに受ければ大悪魔とはいえ死は免れない。素早く身を翻すとその場から逃げ出した。


《決着はまた今度という事で。それでは失礼しますよ》


『無理に追撃するな。損耗を抑えろ』


撤退した堕天使に追撃を加えることなく、ブラックタスクは工場を破壊すると撤退していく。

今回の襲撃の目的は敵の収入源の破壊。つまりは工場の破壊活動なので目的は達成された。

相手に切り札クラスの幹部が混ざっており、想定外の戦闘が発生したが。今夜を期に天美市での戦闘はさらに激化していくだろう。



天美市 市庁舎 第三ホール


翌日の天美市は大騒ぎだ。何と言っても銀行と港湾倉庫、稼ぎ頭の電子部品工場が襲撃を受けて、犯人が解っていないのだ。

現場には大量の銃弾の痕跡や爆発の跡は有っても、犯人を特定する証拠がどこにも無い。

非常に怪しい最近やって来た連中はいるが、それと直接関連付け出来るモノがなければ意味が無い。司法が働けないのだ。


そんな騒がしい朝の市庁舎のホールではスーツ姿の男女が近くの会議室へと入っていく。

バタンと扉を閉じる音と共に溌溂とした元気に満ち溢れた栗毛の女性がバラクィヤルへと言葉を投げた。


「連中、相当頭が逝ってるとしか思えないわね。一日で同時に三か所も襲撃するなんてイカレ野郎よ。住民を巻き込まないようにはしているけど最低限しか考えていないわ」


ロマンスグレーといった風貌のバラクィヤルは手で顎を撫でながら昨日の戦いを振り返る。


「天体魔法こそ使えなかったが、使っても大半が生き残っただろう。それだけの実力者揃いだ。何より彼らの頭が光狂いであるのが救えない」


長い髪を指で弄りながら、女性は「そうね」と短く返して部屋いた他の仲間達にも指示を出す。


「皆聞いて。ブラックタスクとまともにだらだらと戦争なんかしていたら今までの成果が全部おじゃんよ」


部屋にいる仲間の堕天使や人間達はその点では一致した見解を持てているようである。みなが頷いた。

光を掲げる者たちは多くを巻き込み轢殺していく。その大半は悪党だが、彼らの様に別の正義を掲げる者も対象となる。

その場合はどうなるか。答えはやはり闘争だ。


「今夜一気にケリをつけるわ。予備や訓練中を除いた動員可能戦力を全てを叩き付けてあいつらをこの街から叩き出すのよ」


日本は先進国でアメリカ以外の唯一人口が一億を超える国だ。そこから汲みだせる霊的基盤はやはり大きく、古くからの霊的機構や文化も残っており世界的にも裏業界では激戦区。

次の戦いはブラックタスク社とグリゴリの総力戦になりそうだ。

次回、糞眼鏡の糞眼鏡

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