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材料屋でクビになったNYN姉貴

ヒロイン(宿敵)と出会ったので初投稿です


【多くを轢殺する運命の始まり】


1996年 アメリカ合衆国 ミシガン州デトロイト市 ブラックタスク社管理異界 最下層


灰色の壁がほのかに光り、地面が大理石の様な地質になっている異界最下層。

本日もクレイグは自身の鍛錬の為に毎日欠かさずLv40以上の悪魔が出る最下層エリアでの悪魔狩りを行っていた。

M4と聖別された直剣で、恐らく国内で最大規模の異界の底を悪魔を倒しながら進んでいる。

粗方自然出現していた悪魔を狩り終え、全身黒塗りの装甲服のまま帰投しようとすると、エネミーセンサーに奇妙な反応があった。


階層の奥地、今まで何もなかった部屋から強力な悪魔の反応を感知したのだ。

しかし、同時に強い神聖な波動も同じ場所から押し寄せている。


『直属小隊。至急最下層まで降りて来い』


『了解。急行します』


異常事態発生につき急いで上の階層で狩りを行っていた小隊を呼び出す。

そしてその到着を待ってから異変が起きている部屋へと向かう。この管理異界の上層では今も悪魔業界関係者が訓練に勤しんでいるのだ。問題は座視できない。


『この先だな。突入用意』


明らかに気配が尋常ではない部屋の扉をブチ破る勢いで開ける。

その先に合った光景は予想も出来ないものであった。

広がった部屋に居たのは二対の白い羽根を持つ強烈な後光と共に空中から降りて来た人型だ。

ガスマスク越しでもはっきりとわかる神聖さと光に満ちた金髪の女性である。とてもではないが尋常な存在ではない。

しかしエネミーセンサーにははっきりと悪魔としての反応が出ている。

だが相手には戦意が今のところは感じらない。どう対応するにしても、言葉を交わす余裕くらいはありそうだ。

クレイグが相手に問いかけをするべく一歩踏み出す。


『問おう。何の目的でこの地に降りて来た』


相手が誰であるかより、何が目的かを問うあたりなんと危機感に溢れた言葉だろう。

それに対して天使と思わしき存在が言葉を返した。


《危機を知らせに。そして世界に光を齎すためです》


その声を発するだけで、周囲の空気が熱を持ち浄化される。非常に高位の力を持っているのだろう。

危機を知らせに来たと言うが、もう一つの目的もあやふやであり気になるところである。


『危機ならば我々の仕事だな。対象と報酬はなんだ』


《日本の天美市で、一年後シェムハザが解き放たれようとしています。これを食い止めてください》


随分と大物の名前が出て来た。エノク書に書かれている堕天した天使たちの頭目ではないか。


『自分達ではやれんのか』


《私達が直に力を振るうと多くの人の子を巻き込みます。だからこその貴方です。鏖殺の英雄》


クレイグへの物騒な呼び名はひとまず脇に置いておいて、まず間違いなく今までで一番大荒れになるだろう仕事だ。投入される戦力も多くなる。

目標はとりあえず判明した、次はそれを実行する為の報酬が必要だ。慈善事業では無いのだ。それは官僚社会である天界でも通じるだろう。


『只でやるのは論外だ。何かを代価に寄越せ』


《それでは貴方方の剣にそれぞれ炎を与えましょう。一人一人の魂に応じた太陽の炎です》


平然と天使に代価を要求したクレイグはこれで体裁は整ったとしたようだ。頷くと話を受けることにしたらしい。


『分かった。それで良い、仕事を請け負う』


《感謝します。私はここに残り経過を見守りましょう》


それきり天使ウリエルは静かに佇む事にしたらしい。

クレイグも話すことは終わったと言わんばかりに小隊を引き連れて部屋を出ていく。

契約関係によって互いを縛った事で信用は出来るのだろう、その足に迷いはない。


『此処であったことは秘匿しろ。そしてこの部屋も封鎖だ。俺の許可なく開ける事は許さん』


運命に出会い、ついに事態は動き出した。あとは終わりまで駆け抜けるのみ。英雄譚はここに始まった。



1996年 アメリカ合衆国 ミシガン州デトロイト市 ブラックタスク社管理ビル


管理異界の地下第一層は普通のコンクリート製地下室に見える風景が続いていた。

そこでは来年に実戦配備を目途に訓練を日々行っているスペシャルオフィサーの卵たちが日夜訓練に勤しんでいる。

誰も彼もが退役軍人で構成され、元から鍛え抜かれた肉体を持っている彼らに対して通常の負荷トレーニングは最低限で充分だ。

軽く肉体トレーニングを済ませたら、次は地下室を出てビル上層階で異界や悪魔に関する情報を学ぶための座学である。

現代の軍人とは装備や兵器のスペシャリストでなければならないので、知能が足りないと言う奴はいない。

常に変化する最新の悪魔情勢に対応した学習が必要なのだ。属性、耐性、特徴、嗜好等を叩きこんで行く。

座学が終われば実戦でそれを試すのが重要だ、やはり知識を身に着けるには実際に行動するのが一番だ。


地下異界への突入前には全員装甲服の着用が義務付けられている。その理由は身に着ける事で異界での安全を確保しやすくする為だ。

これは創業以来の特殊鋼とセラミックの複合材で、通常の装備と込で全備重量約60kgとなる激重アーマー。

そしてその効果は抜群であり、物理攻撃と銃撃に対して強い耐性を誇っている。現在は更に耐性面の強化の為に改良が加え続けられていく。

一部オフィサーは重量軽減なりパワーアシストを求めているが、稼働時間の問題から解決にはまだ遠い。


装甲服とM16A2で武装したオフィサー達は異界でグループ毎に行動し悪魔と実際に戦闘を重ねていく。

浅い階層ならばそれこそ最弱クラスの悪魔が湧き、階層を潜るごとに脅威が上がる方式だ。

これを繰り返す事で徐々に対処できる悪魔のレベルと範囲を広げ、次に遠征で外界の悪魔事件に駆り立てるなどして経験を積ませる。

それらを一年間みっちりこなすことで、ようやくブラックタスク社のスペシャルオフィサーとしての資格を得るのだ。



同年 ブラックタスク本社ビル 会議室


会議室の中央にはテーブルに世界地図が広げられ、欧州、中東、日本と三か所に駒が建てられており、アメリカにも駒が三つ置いてある。

議題は天美市における堕天使の活動情報を纏めたもので、どういう戦力配置をするべきかについてであった。


「日本に駐屯している第二中隊からの連絡では、堕天使の活動を裏付けるモノが得られています。動員についての是非はありませんね」


第四中隊長ハーヴィスがテーブルを見下ろすようにしつつこの場の全員に確認をした。

今の会議室に居るのはクレイグ・アイアンズ社長・第一中隊長サンソン・第四中隊長ハーヴィス・第六中隊長エイムズの四人。

中隊を追加で送る必要があるのは確定だが、どれだけの規模で誰を送るかで問題になっている。


「確実性を期するなら第一中隊と第六中隊の二中隊送る事が望ましい」


「ステイツを手薄にはしたくない。二中隊は必要だ」


サンソンが堕天使討伐目線で発言するが、エイムズはステイツの防衛の観点から反対意見を出した。

どちらも言っている事は正しい。実際に堕天使討伐が出来なければ霊的バランスが大きく崩れるので重要視するのは当然で。

ステイツでの増加した悪魔事件の円滑な解決には二個中隊が必要なのも例年の傾向からして当然である。


「ならば第七中隊の練兵を待つしかありません、どちらも重要でありますのは必定ゆえ」


「逐次投入の愚を犯すしかあるまい。ならば俺が行こう。それなら負けはしない」


「はい社長」


ハーヴィスとクレイグが結論を出す。

逐次投入の愚を犯すだけならば、最初から最大戦力を送り込む事で不利をひっくり返すつもりなのだ。

他の二人も納得したようで、議題はそれで終了した。鏖殺の英雄が直接乗り込み堕天使達を殺し尽くす。


英雄譚の序幕が今開ける。

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