世界一素敵な国
その国では、王が贅沢の限りを尽くしていた。
当然国の予算が削られるので、王は国民に重税を課していった。
しかしそれでも、ありきたりな税の徴収ではお金のやりくりができなくなった。
そこで王は一番頭の切れる側近に解決を命じた。
するとその側近は、今までに無い税を提案し始めた。
道を歩く歩数に応じて課せられる「徒歩税」、寝ている時間に課せられる「睡眠税」、言葉を話すと課せられる「会話税」など
王はその全てを国民に課した。
それは、この国に税金がかからない物は無いと言って良いほどだった。
ついに国民の怒りは限界に達し、全国民が王の宮殿を取り囲んだ。
身の危険を感じた王は、震えながら側近に尋ねた。
「このままではワシは殺されてしまう。側近である君も捕まったらタダでは済まないだろう。なんとかここから抜け出す方法は無いのかね?」
「あいにくですが、さすがの私もこの状況から安全に逃げる方法は思いつきませんね」
と言って彼は窓から下に群がる国民に目を向けた。
国民からは、今にも宮殿に突撃し王の命を奪わんとする明確な殺意を感じたが、誰一人として声を荒げるような事はせず、ただ静かに無言の圧力をかけていた。
なぜなら何か言葉を発すればすぐさま税を取られてしまうから。
「王、この状況を打開する方法がありました!」
「なんだね、早く言いたまえ」
「『感情税』を取りましょう」
そしてその国は、争いごとが一切起こらない、世界一素敵な国になりましたとさ。