第十八話――収束(オシマイ)
「『魔力よ消し飛べ』!」
閃光弾が炸裂したように、辺り一面が瞬時に白飛びした。
ブリーゼが唱えたのは、魔法物質消滅魔法。
場の魔法物質を瞬時に燃焼、消滅させる、〈魔法封じ〉とも呼ばれるこの魔法は。
ごくひと握りの魔道士にしか扱えぬ、高難度の魔法である。
「う……ゲボ、ゴボ……」
ドス黒く変色していたシーの手足が、徐々に正常に戻っていく。
身体からあふれ出ていた黒煙が消失した堕天男は、糸の切れた操り人形のように、床に倒れこんだ。
体のあちこちから噴水のように出血が止まらず、ジワジワと赤い血の池が広がっていく――
「『氷結せよ』」
ブリーゼの魔法によって瞬時に氷づけにされ、仮死状態となった堕天男は。
空気を読んで駆けつけたブリーゼの魔法生命執事によって、どこかへと運ばれていった。
「この勝負、引き分けねえ」
ふー、と大きなため息をついたブリーゼが、何だかくたびれた顔でそう言った。
*
瀕死の重傷を負っていたにもかかわらず、ブリーゼの高位治癒魔法ですでに万全の状態にまで強制的に回復させられた堕天男は、あいも変わらず師匠の欲求の吐け口にされた。
「あなたが〈第三世界収容所〉に囚われる前に何をしていたのか、お姉さんにはだいたい見当がついたわ。なるほど、だから高位の天使が二体も監視についていたのねえ」
肌をツヤツヤさせ、堕天男の隣で一糸纏わぬ姿で横たわるブリーゼは満足げにそう述べた(なお優秀な布団のフォローによって胸から下は覆い隠されていたため、投稿サイトの規程には引っかからない)。
堕天男には、ブリーゼの言う意味がよくわからなかった。
「何の話だ……?」
シーの衝撃魔法ですでに意識を失っていた彼は、後に自分の体から放出された正体不明の黒煙についての記憶がない。
「さっきの魔法試合であなたが解放した、闇の魔力。あれはおそらく暗黒神か、それに近い高位の悪魔との契約によるもの。あなたの魂が第三世界(現代日本)に囚われていても、それは失効していなかった。でなければ、魔法初心者であるはずのあなたが、あの場でシーを闇に葬ることなどできはしないでしょう」
「シーに何かあったのか!?」
唐突な物騒な物言いに取り乱す堕天男に、しかしブリーゼは頭を振り。
「あら。何も覚えてないのねえ。大丈夫よ。間一髪だったけど、私が介入して鎮圧したから」
そして――まるで未知の実験に挑む科学者さながらに活き活きと眼を輝かせながら、こう言った。
「気が変わったわ。ダーリンには、あの馬鹿弟子にも教えていないとっておきの魔法を教えてあげる。ついてらっしゃい」




