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不良令嬢と残虐鬼辺境伯の政略結婚!!  作者: 桜あげは 


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98/99

98:潜入操作失敗!?

 チープな商売用のドレスに身を包み、濃い化粧を施したクレアは、流れるような紗を纏う。

 クレアとクレオは計画通り、完璧な花街の金髪美女へと変貌を遂げた。

 若干ケバくて下品なのは、この辺りの娼婦の標準的な出で立ちである。


 着替えに協力してくれたのは、不満顔のマルリエッタだ。

 彼女はまだふくれ面でクレアに文句を言っている。

 

「クレア様。娼婦の真似事なんて、いくらなんでも危険すぎます。男性のクレオ様はともかく、あなたは生物学的には女性なのですよ?」

「心配すんなって、マルリエッタの気にするようなことは起こらない」


 そうして、クレアとクレオは、それぞれ目的の二軒の店へ乗り込んだ。

 店と言っても、薄暗く簡素な建物内に、申し訳程度のテーブルと椅子が置かれているだけだ。

 窓や壁はボロボロで、少し離れた場所についたてと階段がある。


 娼婦たちが働いているのは、主に上階のようだ。

 店主の了解を取り付けた上で、娼婦に化けたクレアは二階へ上がる。


「女将、普段見ない怪しげな客がいたら、俺の方に回してくれ。報酬ははずむ」

「任せとくれ!」


 一階で準備をしている女将は上機嫌で、比較的いい部屋を貸してくれた。

 安物の香が炊かれた室内の床には敷物が敷かれており、小さなテーブルと大きめの布団が一つずつ置かれている。


「わかりやすいな」


 テーブルの上に客用の酒がいくつか用意されていたので、クレアはさっそく拝借した。

 明らかな安酒で、あまり美味くはない。


 しばらくすると、女将が「指名が入った」と言って、客を連れてきた。

 彼女は何故か気まずそうな目でクレアを見てくる。


「どうした?」

「いえ、その……わ、私はここで失礼しますよ」


 逃げるように階下へ去った女将を眺め、クレアは床に座ったまま首を傾げる。

 客の方は入り口に取り残されていた。

 ひとまず部屋に入るよう、客に声を掛けたクレアだったが、相手を見てあんぐりと口を開ける。


「……サイファス? なんでお前がここに?」


 あろうことか客として現れたのは夫だった。


「何やってんだよ。誘拐犯をあぶり出すのが目的なのに、お前が客になってどうすんだ」


 完全に捜査妨害である。


「だって、クレアが心配でたまらなくて。女将に手間賃を支払って連れてきてもらったんだ。やっぱり、私はこの作戦に反対だ。どこの誰とも知らぬ男が、私のクレアに触れるなんて……絶対に許せない」


 まるで、そんな相手がいたら切り捨てると言い出しそうな不穏な雰囲気だ。


「心配性だな、サイファスは。女将を買収してまで、こんな場所に来るなんて」

「クレアは嫌じゃないの? 潜入捜査とは言え、見知らぬ男に体をなで回される恐れがあるんだよ!?」

「ぶっ飛ばせばいいだけだろ?」

「それができない相手だったら?」

「そんな相手はいないんじゃないか? 近づかせるまでもなく脅すから心配は要らな……」


 話の途中で、サイファスがぐいっと距離を縮めてきた。


「……っ!?」


 流れるような動作に戸惑っている間に、サイファスはクレアの両手を緩く握りしめ動きを封じる。


「これでも?」


 吐息がかかるほど近くで囁かれ、クレアはいつになくサイファスを意識してしまう。

 いつもなら軽口を叩くところだが、息が詰まったかのように言葉が出てこない。


「クレアは不用心すぎる。太ももまでスリットの入った、布面積の少ない服を着て、これを見て何も感じない男なんていないよ」


 サイファスも、その中に含まれるのだろうか。

 誠実で紳士的な彼がそんなことを思うなんて、想像がつかない。


「お前はいちいち大げさすぎるんだ」


 反論すると、サイファスは真顔で言い含めてきた。


「何を根拠に言っているのか知らないけど、少なくとも私は今すぐ君に不埒な真似をしたくてたまらない」

「ふっ、不埒……!?」


 まさかのサイファスの発言に、クレアは再び言葉を失った。


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― 新着の感想 ―
[一言] めちゃめちゃ面白いです! 続きを待ってます!
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