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不良令嬢と残虐鬼辺境伯の政略結婚!!  作者: 桜あげは 


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60/99

60:狙われた公爵令嬢

 クレアとエイミーナが路地に入ると、さっそく物陰から、怪しい男たちがわらわらと現れた。

 明らかに、ただ者ではない空気を纏っている。

 かつてのクレアのように、汚れ仕事を担当する者たちだろう。


(ふぅん、予想通りだな。プロが来た)


 体格の良い彼らは、クレアとエイミーナを全員で取り囲む。

 この人数を雇えるのは、それなりに裕福な人間だろう。


(俺の背後にも二人いるな。こちらからは、特に殺気を感じないが……)


 正体に気づいていないものの、サイファスたちのことも、しっかりカウントしているクレアだった。


 路地の建物は民家や倉庫が中心だ。

 今は人が出払っているようで、路地にいるクレアたちを気にかける者はいない。

 怪しげな男は、全部で四人。

 彼らの目はエイミーナを見ており、彼女が狙いなのは明白だ。


「エイミーナ、こいつらに見覚えはあるか?」

「ないですわっ! こんな汚らわしい人たち、知りません!」


 クレアは視線を男たちへと移した。


「……だそうだが、お前ら、何の用があってエイミーナを狙っている?」


 壁際にエイミーナを庇いながら、男たちに問いかける。

  

「個人的な恨みはない。だが、依頼遂行のため、そこのお嬢ちゃんには消えてもらう! 依頼者は、その女がいなくなることを望んでいるんだ!」


 クレアは首を傾げた。


「依頼者がクレオなら、お前らが俺の顔を見て攻撃してくるわけがない」


 仲は悪いが、クレオはクレアの実力を知っている。

 殺しに来るなら、こんな温い手は使わない。


「別口の依頼かな。エイミーナの父親の公爵も敵が多そうだから……」

「おい、一人で何を喋っている!?」


 ぶつぶつと呟くクレアを見て、一人が声を上げた。

 だが、クレアは気に留めず、真っ赤な髪をかきむしる。


「ああもう、犯人を特定できねえわ! お前らをとっ捕まえて吐かせた方が早い」


 クレアの外見は、小柄な青年といったところだ。

 サイファスと同じく、一見優男に見える。

 だからか、男たちはクレアを嘗めて掛かっていた。いつものことだ。


「エイミーナ、目ぇ瞑っとけ」

「はい……! クレオ様……!」


 邪魔なクレアから排除しようと、二人が真正面から突っ込んでくる。

 そんな単純な相手に向かって、クレアは懐から取り出した武器を投げつけた。

 小さなナイフが、男たちの手足に刺さり動きを封じる。

 ちなみに刃には、強力なしびれ薬を塗ってあった。


 残りの二人は、やや警戒しつつクレアを襲おうとし、背後から急襲してきた人物によって一瞬で地面とお友達になった。

 男たちを素手で殴り倒したのは、クレアを追ってきたサイファスだ。


「クレア、大丈夫?」


 突然現れたサイファスを見て、クレアが目を見開く。


「ああ、平気だが。サイファス、お前……もしかして、俺らの後をつけてた?」

「うっ……えっと、クレアが心配で」

「危ねえ。もう少しで、お前まで攻撃しちまうところだった」


 そんなことをすれば、返り討ちに遭うに違いない。

 いくらクレアでも、残虐鬼は相手にしたくなかった。訓練では手合わせしてみたいが。


「ここにいる怪しい奴らに、エイミーナが狙われたんだ。相手は王都の公爵家に恨みを持つ人物だと思うけど、確証は持てない」

「公爵家にはご令嬢を迎えに来るよう頼んであるよ。明日か明後日には着くんじゃないかな」

「地面で伸びているこいつらに聞きたいこともできたし、一旦屋敷へ帰ろう」


 馬車の中に怪しい男たちを詰め込み、クレアたちは揃って辺境伯の屋敷へ戻る。

 御者台には眠そうなアデリオが乗り、二頭の馬の片方にはマルリエッタとエイミーナが、もう片方にはクレアとサイファスが二人乗りしている。


 サイファスは、クレアを後ろから抱えるような形で馬を操縦していた。

 ちなみにクレアは男装中。

 男二人の仲睦まじい乗馬姿を通行人が二度見している。国内では男性同士が親しくすることが珍しいのだ。


 クレアはというと、エイミーナの登場で多少薄まっていた胸の高鳴りが、この乗馬でぶり返し、困惑していた。

 しかし、サイファスは、そんなクレアを強く抱え込んで逃さない。


「怪我がなくて良かった、クレア。帰ったら、二人でゆっくり過ごそう」

「……サイファス。エイミーナが、ものすごい顔でこっちを睨んでくるんだが」


 隣を進む馬の上から、恨めしそうな視線が飛んでくる。


「うう、クレオ様と二人乗りしたかったですわ」

「残念でしたねえ、うふふ」


 エイミーナと同乗中のマルリエッタは、この日もしっかりサイファスの味方をしていた。

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