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不良令嬢と残虐鬼辺境伯の政略結婚!!  作者: 桜あげは 


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50/99

50:誘拐犯が見つかった(サイファス視点)

 夜――サイファスは一人机に向かって仕事をしていた。

 昼間にクレアやアデリオが倒した男たちは、隣国の密偵だったのだ。

 クレアが狙われたのは、輿入れ、買い物時、訓練中の三回。

 まだ狙われ続けていると見て、間違いないだろう。

 今日捕らえた者たちの供述によると、二回目と三回目の犯人は同一人物だ。そして、身近にいた。

 訓練中にクレアを襲った相手は、前に来た者と違い、すぐ口を割ったのだ。

 失敗続きに焦り、なりふり構わずの人選をしたのかもしれない。


「……レダンド子爵か」


 先の戦で新人兵に大きな犠牲を出し、部隊の金を横領した元第十部隊隊長である。

 サイファスに殴り飛ばされた後、彼は屋敷で謹慎中というか軟禁状態。

 力のある貴族の息子なので、勝手に殺せないのだ。


 王都にいる彼の保護者には連絡済みだが、受け取りを拒否されたので任期を終えるまで王都に返せない。


(身内の受け取りって、拒否できるものなの!?)


 彼は向こうでも鼻つまみ者で、訓練を理由に辺境へ厄介払いされたクチだった。

 けれど、自分の行動を改めることなく、毎日逆恨みから周りに迷惑ばかりかけている。

 そんなレダンドは、今度はサイファスへの腹いせにクレアを付け狙っていた。

 サイファスも彼をどう扱うべきなのか判断しかね、困り果てている。


 とりあえず、砦にある囚人向けの地下牢へ移動させ、誰とも面会できないようにした。

 これ以上、余計なことをされては迷惑だ。


 まさか、そんな扱いを受けるとは思ってもみなかったのだろう。

 今になって、レダンドは泣き叫び始めたが知ったことではない。

 甘えた考えを捨てさせるいい機会だ。


(本当に……殺されないだけマシだと思って欲しいな)


 クレアを狙うような男を、本来ならサイファスは生かしておかない。

 今回は彼の親の顔を立てたが、次に同じようなことが起これば誰が止めようと、サイファスはレダンドを葬り去るつもりだった。


「私はお前を許す気はない」


 そう告げたサイファスは、地上に向かう階段の手前にある、重い鉄の扉をゆっくり閉じる。

 暗闇に取り残されたレダンドの表情は絶望に満ちていた。



 その後、サイファスはクレアにこのことを話すか逡巡した。

 だが、迷いながらも、サイファスはクレアに真実を話そうと決める。

 愛する妻に残酷な事実を告げたくはないが、彼女の性格からして嘘を教えても納得しないだろうと思ったのだ。


 クレアは事情をある程度分かっていたようで、特に驚きもなく事態を受け入れた。

 逞しく頼もしい妻だが、繊細なところもある。サイファスはクレアが心配だった。


 本人は無自覚だが、ずっと気を張り詰めて生きていたのだろう。

 それほどに、クレアの人生は過酷だ。

 だからサイファスは、これからは自分が彼女の心を守ろうと決意している。


(そういえば……昨日から、クレアの様子がおかしいけれど。どうしたのかな)


 彼女はなんとなくサイファスを避けている。だが、理由が思い当たらなかった。


(クレアの瞳から嫌悪感は感じられないし)


 嫌われているというよりは、むしろ好……


(もしかして。いや、まさかな)


 意識してもらっているなどと考えるのは、思い上がりだろう。

 サイファスは自分を戒める為に、ゴンゴンと執務机に額をぶつけた。

 その様子を、ちょうど仕事で部屋に入ってきたマルリエッタが、奇妙な生き物でも見るような目で眺めていた。


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