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不良令嬢と残虐鬼辺境伯の政略結婚!!  作者: 桜あげは 


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46/99

46:不良令嬢とかつての仲間

 クレアはサイファスに駆け寄った。


「サイファス! お前、なんて危険な奴を雇っているんだ!」


 突然のクレアの抗議にサイファスは戸惑った表情を浮かべる。


「どうしたんだい、クレア? 何かあったの? アデリオもいるけど……屋敷から出てきたのかい?」

「アデリオは、俺の仕事を手伝ってくれているんだ」

「へえ……」


 アデリオが気まずそうに目を逸らせたが、クレアは気づかなかった。


「第七部隊の隊長――ハクなら大丈夫だよ。クレア、彼は僕が引き入れたんだ」

「引き入れたって、お前はあいつが何者かを知っているのか!?」


 クレアは、ほわほわしているサイファスが心配だった。

 残虐鬼なんて呼ばれているが、そして実際に強いが……クレアの見る限り、サイファスは箱入りお坊ちゃんでもある。

 勘が鋭い部分はあるし仕事は出来るが、そこまで凶悪でも残虐でもない。

 むしろいい奴だ。

 彼には危ない目に遭ってほしくない。

 ところが、サイファスはクレアに穏やかな笑みを向けて言った。


「うん、ハクは密偵でしょ? 彼は元々余所の依頼で私を探りに来たけれど、お願いして寝返ってもらったんだよ」

「えげつないやり方でな。敵に回すと恐ろしい相手だ」


 六十八番は、すかさず口を挟んだ。

 彼は現在、ハクという名前で呼ばれているようだ。


 クレアは「サイファス」と「えげつないやり方」が結びつかない。

 過去にサイファスの戦っている姿を見たことがあるが、強く綺麗な剣技という印象を受けている。

 ひたすら相手をいたぶるような下品な戦い方はしない。


 なので、ハクが大げさに話しているのだと思った。

 アデリオだけは、どこか納得した様子で頷いていた。


「しっかし、七十七番が辺境伯夫人になっているとはねえ! 上手くやったな、お前」

「お前こそ、ルナレイヴで部隊長になっているなんてな。今はハクって言うのか?」

「ああ、便宜上そう名乗っている。主な仕事は隣国や王都の情報収集だな」


「その割に、俺が辺境伯夫人になったことに気づかなかったんだな」

「花嫁の詳しい調査は辺境伯に止められていた。女性をコソコソ嗅ぎ回るような真似はしたくないと……それに、俺はしばらく遠方へ出ていて戻ったばかりだからな」


 紳士的なサイファスだが、「相手は深窓の令嬢だから大丈夫だろう」という油断もあったに違いないとクレアは思う。

 考え込んでいると、サイファスがクレアに尋ねた。


「クレア、ハクとは顔見知りなの?」

「子供の頃、同じ組織にいたんだ。世間は狭いな」

「そっか。仲……いいんだね」


 サイファスがそう呟くと、何故かアデリオとハクが彼から距離を取った。


「七十七……クレア様、お前、辺境伯閣下をなんとかしろ!」

「何言ってんだ?」


 クレアが隣を見ると、サイファスは「どうしたんだい?」と、いつも通りの微笑みを向けてくる。

 ハクが何を恐れているのかわからないクレアだった。


「それはそうとクレア様、第七部隊に入る気はないのか?」

「うーん。今は新人を育てているからな。それが終わったら考える」

「アデリオの方は、どうなんだ?」

「俺はクレアの侍従だから」

「……侍従ねえ。お前、昔から器用だもんなぁ」


 結局、第七部隊隊長の勧誘はうやむやになった。


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