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不良令嬢と残虐鬼辺境伯の政略結婚!!  作者: 桜あげは 


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16/99

16:八つ当たりちびっこ兵

 クレアは徒歩で戦場を駆け回っていた。

 後ろにはアデリオと騎乗した兵士が並んでいる。

 サイファスの部隊は数隊に分かれており、それぞれ彼の指示を受けて動く隊長がいた。

 実はクレアの知り合いのこの騎士、数人いる隊長の一人だったらしい。


「ここにいる敵は、全滅させて構わないのか?」

「おうとも、ボウズ! その意気だ!」


 隊長の隊に交じり、クレアは前方から攻めて来る敵を迎え撃つ。

 取り残された新人兵はあらかた逃がした。


「おい、ボウズたちは馬に乗れるのか? 徒歩より馬の方が動きやすいだろう」

「乗れる!」


 クレアとアデリオの声がハモる。

 乗馬訓練は一通り受けているし、密偵の任務では必須の技術だった。

 またクレオとして出陣するときにも馬を用いている。

 王都で馬を扱えるのは、騎士爵以上の者だけ。残りは歩兵だ。


 だが、辺境の兵士たちは圧倒的に機動力に優れる馬に乗る割合が高い。

 適当な馬を借りたクレアたちは、隊長や仲間の騎士と一緒に敵へ突っ込んでいく。


「お前ら! とりあえず、邪魔な相手を全部をなぎ倒せ!」

「了解!」


 辺境伯家での鬱憤を張らすべく、クレアは嬉々として剣を振り回した。

 密偵の仕事は暗器を使うことが多かったが、クレオとして剣の訓練も受けている。

 伯爵令息として生きていたときは、正々堂々と正面から剣を使って戦う機会が多かった。


 アデリオも日頃のストレスが溜まっているのか、無言かつ無表情でバッタバッタと敵兵を血の海に沈めていく。慣れた手つきだ。

 クレアとアデリオは戦場を駆け回り、新人たちを襲った敵兵に八つ当たりした。


「お、おい……なんだ、あの赤髪のちびっ子兵士は。もう一人の銀髪もヤバいぞ!?」


 クレアたちの暴れぶりを見て、味方の騎士がおののいている。


「あいつら、本当に新人なんだよな……?」

「同じ新人たちに奇襲をかけてきた敵の部隊が、ほぼ壊滅だなんて!」


 そんな会話が背後でされていることに、クレアたちは気付かない。


「アデリー、このまま先へ進むか?」

「そんな命令はもらっていないよ、クレオ。深追い厳禁」

「……だな。そろそろ引き上げるか。敵もいなくなっちまったし」


 当初の目的を果たしたクレアとアデリオは、揃って仲間のもとへ戻ったのだった。

 敵は撤退したようで戦いは終わった。

 一時的かもしれないが、ルナレイヴに平和が訪れる。


 騎士たちも持ち場に戻り、再び国境沿いは静かになった。

 新人たちへの撤退命令が出たドサクサに紛れ、クレアとアデリオは前線から引いて砦へ戻る。


「ああ、久々に体を動かせた」

「……俺は疲れたよ。クレアのお守りは、いつだって碌でもないからね」

「そうか? 結構乗り気で暴れていたじゃないか」


 軽口を叩き合っているうちに砦に着き、クレアは着替えて部屋の寝台に腰掛ける。

 朝まであと数刻。それまでは、大人しくしているつもりだ。

 久々に自由に動けて満足したクレアは、朝までしっかり眠れたのだった。


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