一話
よろしくお願いします
後書きには簡単なキャラ説明が乗っています。飛ばしても全く大丈夫です
「・・・でさー、明日の放課後・・・」
「おっけー!楽しみにしてるわー!」
「見て見てー!超可愛くない?」
「やばー!マジ可愛いんですけどー!」
・・・あれ、もう学校終わったのかあ。6時間目、居眠りしちまったしなあ
目が覚めて起きると、クラスの大半が既に帰っていた。残ってるのは、話しているヤツらだけだ
窓を見ると橙色で、夕日が地平線の少し上くらいにあった。時計を見ると、もう5時で、そろそろ部活終了時刻だ
今日は部活をサボってしまったが、顧問は緩いし、まあ多分大丈夫だろう
ググッと背伸びをし、後ろのロッカーから学校指定のバックを取り出し、チャックを開けて教科書やらノートやらを詰めていく。最後に水筒を入れ、チャックを閉めて背中に背負い、教室を出ていく
下駄箱に着くと、上履きを靴に履き替え、少し歩いて校門を出た
・・・にしてもまあ、
「・・・つまらないなあ」
いつもと変わらず、ただ学校で勉強して部活して帰るだけの日々。本当につまらない
でも、多分これが幸せな日常とやらなんだろう。アフリカの子供たちとかと比べたら、とんでもないくらいの幸せと贅沢を味わっているんだから
・・・というか、何でこんな事考えてんだ。私は漫画の主人公かなんかか
なんて、変な事を考えながら30分ほど歩き、家に着いた
「・・・ただいまー」
バタン
「・・・・・・?」
・・・おかしいな、何時もは何かしらの反応が返ってくるはずなんだけど
靴を脱ぎ、ゆっくりと音をたてないように廊下を歩く
自分の服から出る音と、私の呼吸音しか聞こえない。静かで、不気味に感じながらも、足を進めていく
そして、リビングと廊下を隔てる扉の前まで来た
深呼吸をし、ドアノブに手をかける。ゆっくりと、力を込めて下ろし、押し出す
ギィィイィィイイ・・・
大きな音をたて、扉が開いた
「・・・なーんだ、何もいな・・・ッ!?」
何もいない、と安堵した途端、後ろからグイッと何かに力強く腕を引かれた
急だったため、踏ん張れずにすんなりと後ろに倒れる。そして、誰かの胸に頭が当たった
「そこは危ないぞ。糸に引っかかったら包丁が飛んでくる」
「・・・え?」
確かに足を置こうとした場所を見ると、光が反射した細く透明な糸がピン、と張ってある
・・・待てよ?なんでこの人はそれを知っていて・・・というか何で家ん中に知らねぇ奴がいるの!?
バッと後ろを振り返ると、胸が見えた
・・・いや、そりゃ当たり前だ。胸らしきところに頭が当たったんだから
少し上あたりを見ると、暗い青色の目と目が合った
・・・なんか某目と目があって好きだと気づいた曲が頭の中で流れたけど、違うそうじゃない
まあ、とりあえず聞かなきゃいけないことがあるな
「・・・誰ですか、不法侵入者ですか、それとも母の不倫相手ですか」
「前半2つは良いが、後半最後の1つはどういう発想なんだよ・・・。あと、急に引っぱって悪い。それと、不法侵入じゃあ無いからな」
少し罪悪感があり気に苦笑し、パッと離してくれた。話せばわかる良い奴だな、多分。あと、不法侵入者じゃないということは、両親の知り合い?だったりするのかな?
じっ、と顔を見つめていると、また苦笑しながら、話し始めた
「あ、自己紹介がまだだったな。俺は志多楽羽 侑だ。まあ、これから多分永いこと宜しくな」
「・・・永い、ことですか・・・?」
なんか、漢字が違う気がするケド・・・?まあ、いいか。良くなさそうだけど、気にしない気にしない
ジトォ、と見ると少し焦ったように笑う。・・・こいつ、笑うの好きやなあ
「・・・ところで、まあ、立ち話もなんですし・・・。取り敢えずリビングにどうぞ」
「え?あ、あァ・・・。その、自分で言うのもなんだが、あっさり通すんだな・・・」
「・・・あー、それに関しては・・・
これがあるんで。多分全然抵抗出来なさそうですけど」
ジャキンッ
「あ、アハハ・・・ソウデスカ・・・」
(物騒ッ!この子供凄い物騒だ!!!)
制服のポケットから、勢いよくハサミを取り出す
上手く扱えなくても、多少は抵抗できるだろう。見た感じ、こいつは丸腰っぽいし
そう言うと、冷や汗をちょっとかかれた。いやぁ、これくらい良いじゃないか(?)。そんな怯えなさんなって
張ってある糸をまたぎ、リビングへと案内する。横を見ると、マジで包丁がスタンバイしていた。・・・誰が仕掛けたんだよ
そしてリビングに着き、志多楽羽さんをソファに座らせ、私は夕飯を食べる時の椅子に座る。ソファ1つしかないし、隣に座るのは癪だから仕方ないな
「・・・で、単刀直入に聞かせていただきますが、何の用で?あと、私の両親は何処に?」
「嗚呼。まず用についてだが、アンタに用があってな」
「・・・私ですか」
まさかの私か。何もした覚えないし、コイツとは面識がないはずなんだが
・・・まさか、両親から聞いたとか?いや、両親は私の事をあまり外に話さないはず・・・。でも、もしかしたらあるかもしれないな・・・
「実は、アンタにはこれからとある仕事に就いてもらいたい」
「私、まだ中学二年生ですが」
「それに関しては、問題ない。あ、学校は出来れば辞めてもらいたい。仕事は住み込みになるしな、多分通っている時間が無い」
「・・・具体的に、どのような仕事で?」
「・・・それに関しては、就いてもらうかを決めてもらわないと言えない。悪いな、昔からの決まりなんだ」
・・・昔から・・・?結構由緒ある仕事だったりするのかな?
まあ、由緒とかどうでもいいけど。けど、内容は教えてもらえないのかあ・・・
「それじゃあ、収入はどのくらいですか?」
「・・・まァ、このくらいだな」
ずいっと差し出された電卓を受け取り、見ると、そこには普通の月収と比べると、とんでもないくらいの金額だった
金持ちなのかな、会社。やべぇな
「・・・そうですか。ちなみに命の危険性はありませんか?」
「・・・ないとは言えないな。まあ、基本死なねェよ」
「あ、じゃあ就職します」
「・・・は?」
就職する、と言うとすごい驚いた顔をされた。・・・そりゃまあ、そうか。あっさり認めたんだし
でも、学校も飽きていたし、丁度いい機会だ。あと、さっさとこの家から離れたかったし。理由は言わないけど
それに、今から仕事に就けるなら、将来も安定してそうだし
・・・まあ、考える事は子供らしくないけど、仕方ないね
「・・・なんというか、本当にあっさりしてるな。この話、嘘かもしんないのに・・・」
「ぶっちゃけ、嘘だろうとホントだろうと、どうでもいいので。それに・・・」
「それに?」
「・・・なんか、嘘じゃない気がする、から・・・?」
「疑問形かよ・・・。まあいい、承諾を得られたんだ」
スっと、座っていたソファから立ち上がり、少しこちらに歩み寄って手を差し伸べてきた
・・・握手かな?これからよろしく的な
取り敢えず、差し出された手を握り、立ち上がる
「・・・これから宜しくな、永遠に」
「・・・エ゛ッ」
ニコッと、とんでもない発言と共に微笑まれた、と思った瞬間、地面からとてつもない勢いの突風が吹き始めた
辺りにあったものは飛散し、風に乗って空中をぐるぐると回っている
なんだこれ!?こんなの、アニメとか漫画とかしかで見たことない!ラノベかよ!!
心の中で悪態をつきながら、光り輝き眩しくなっていく辺りに目を細める
そして、眩しすぎて目を瞑った途端に意識が途切れた。・・・最後に、志多楽羽さんの少し罪悪感を含めた笑みが見えた。ホント、この人笑うのが好きだな
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「・・・・・・・・・、」
・・・眠い・・・って違う、そうじゃない。危ね、二度寝すんとこだった
目を擦りながら起き上がると、パサリと何かの布がずり落ちた
擦ってない方の目で音がした方を見ると、何やらシンプルながらに高そうな掛け布団がかけられていた
どうやら、意識を失ったあと今寝ている布団に運ばれたらしい。ちなみに部屋は和室です
「・・・んー、ここは・・・」
「侑くんに運んでもらったんだよ。どうやら生身の君には衝撃が強すぎたみたいだからね!」
「ヴェッ!?」
「何その声!ふふふっ」
・・・物音ひとつしなかった・・・ビックリした・・・
後ろを振り返ると、口に手を添えて優雅に笑う・・・見た目も声もとんでもなく中性的だから、性別が分からないわ。服の色薄ピンクだし、女の子でいいか
「・・・あの、貴方は?あと、志多楽羽さんっていう人をご存知ですか?」
「僕は焱天宮 霊朝、可愛い可愛い男の娘ダヨ♡」
「・・・ん?」
この人、今自分のこと自分で可愛いっつたよな・・・。しかも、男の娘・・・???・・・まあ、別にいいか
私には関係ないことだし
つーか、自意識過剰、ナルシスト・・・では無いな。でも確かに可愛いな、顔とか仕草とか・・・
あ、じゃなくて、意識を話の方に戻さねば
「あと、侑くんはお仕事で海外に会議で行っちゃったよ。彼、日本支部のトップだからね」
「・・・そうですか」
うーん、色々と聞こうと思ってたんだけどな・・・。何故か仕掛けられていた包丁の事とか。聞きそびれたんだよなあ
あの包丁が凄い気になるんだけど・・・。あ、あと両親のことも。まあ、いいか、志多楽羽さんが帰ってきた時にそれは聞こう
・・・にしても・・・
私は、なんだかんだ拉致られた感あるけど、これからどうなるだ?
主人公
死んだ魚の目をした女の子(14)
志多楽羽 侑
苦労人な死神代表兼守護霊代表(見た目は17)
焱天宮 霊朝
自分の可愛さと価値を分かってる男の娘(見た目は11)