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GOOD LUCK〜十秒だけは異世界最強  作者: 染谷秋文
第1章 彼方から始める異世界生活
9/72

九、グラン・イプシロン

少し説明回続きそうです。早くヒロイン出したいな・・。因みに、第一ヒロインの名前は“ミア”になります。

子猫の鳴き声、ミャー→ミヤー→ミヤ→ミアです。

 

 ソフィアが去り日がすっかり沈んだ頃、眠っていたグランが漸く目を覚まし、カナタは自分が勝負に勝ったことを嵩に、気になっていたことを次々とぶつけていた。


「なるほどなぁ・・・。もう一度確認するぞ?

 まずお前の名前はグラン。グランなんだっけ?」


「イプシロンだ!グラン・イプシロン!」


「おお、すまんすまん。それでグランは不死身ではないが、例え頭を吹き飛ばされても回復は可能なんだな?」


「何度も言わせんな!今はまだ時間がかかるし、再生の途中で魔力が切れたりすりゃ死ぬっつってんだろ。

 それと、本当の不死身なんてこの世には無いってソフィーが言ってたぞ!」


「不死身の奴は居ない・・か。一見死なないように見えても殺す方法は必ずあると、そういうことか。

 なるほど、それは有益な情報だ。

 で、グランの場合だと頭部を完全に再生するにはかなり時間がかかるから、頭を吹き飛ばされて動けなくなっている所へ攻撃を受け続ければ、いずれマナが尽きて再生が止まり、結果的に死ぬわけだ。

 それでーーー特級魔法ってのは何だっけ?」


「凄い魔法のことだよ!お前、覚える気あんのか!? 特級魔法は普通の魔法と違って、自分だけが使える特別な魔法で、効果も戦い向きからそうじゃない物まで色々だ!

 加護にも色んな種類の力があるけど、才能さえあれば何人でも同じ力を持てるのが特級魔法との違いだ。

 例えば、火の加護ってのを持ってると力が強くなるんだ!」


「あぁ、そうだったそうだった。一人だけの特別な力が特級魔法で、色んな奴が使えるのが加護か!よし、覚えたぞ!グランは物知りなんだなぁ。

 ん?というか、火の加護ってのは火の魔法を使えたり、魔法の威力を強くしたりする加護じゃないのか?」


「まぁソフィーに習ったからな!こんくらいは当然だな!」


  完全に飼い慣らされる少年ことグラン・イプシロン。

  既にカナタから質問される事に快感すら覚えるようになっているグランは、得意げになって聞かれたことに答えるようになっていた。


「火の加護は力で風の加護は速さだ!確か魔法は、精霊ってやつの加護が無いと使えないらしいぞ?」


「うげっ!?そうなのか?

 なら魔法使いは皆精霊使いってことになんのかよ!?ひゃあー・・、俺が想像してたより魔法使いはレアなのかもしれないな・・」


「魔法使いと精霊使いってのは別のはずだぞ。

 確か精霊の加護の中でも階級や練度によって魔法使いと精霊を召喚できる奴に分かれるらしくて、精霊と話せる奴なんて殆ど居ないって聞いたな」


「階級とレンド・・そういえばソフィーもそんなこと言ってたな。レンドってのは練度のことか。加護にもランクがあるってことか・・」


「そんな感じだ。俺の持ってる火の加護は第一階級の加護で、それを鍛えて練度を上げて行くといつか第ニ階級の加護になって、火の加護だと烈火の加護、第三階級だと侵掠の加護ってのに変わるみたいだな」


「へえぇぇ!グラン、お前本当によく勉強してんだな!正直、そこまで詳しい話を聞けるとは思ってなかったよ。

 そんで、ソフィーから預かってる賢者の加護の階級はどの辺なんだ?」


「ああ、賢者の加護は第三階級の加護で“知恵の加護”“才穎の加護”って加護の上位で、世界中探しても殆んど誰も持ってないって言ってたぞ!」


「そうか、そんな力を持ってるなんてやっぱりグランは凄いんだなぁ。

 なら加護の上位ってのは特級魔法に近い力があるのかもしれないな・・。

 それにしても、能力って他人に貸したり出来るもんなのか?」


「へへ、そうだろ?

 能力を他人に貸すなんて普通は無理だな。ソフィーにしか出来ない・・と思うぞ!」


 能力を他者へと貸し与える能力。恐らくそれもソフィーの持つ特級魔法の一つのなのだろうと、カナタは予想しつつ話を進める。


「まぁそうだよな。

  因みに、その賢者の加護ではどんな事が分かるんだ?」


「大体の物とか人の名前、あとはーーー言葉の意味とか、他人が持ってる特級魔法や加護の名前とか、まあ大体そんな感じだ!」


「そいつは便利だが・・・、第三階級の加護にしてはなんと言うか、少し寂しい気もするが・・・まぁいいか。他人の特級魔法や加護については何処まで分かる?賢者の加護でも何も見れない相手はいるか?」


 特級魔法や加護は個人の切り札とも言える存在だ。

 賢者の加護持ちとあった時に防ぐ方法があるのなら、それは是非とも知っておく必要がある。

 カナタは少し前のめりになってグランに質問し、グランはグランで、目の前のカナタが自分の知識に縋っている姿が嬉しくてたまらない様子だ。


「ソフィーが言うには、魔法で作る結界や加護には賢者の効果を打ち消すモノもあるらしいけど・・・、俺はまだ弾かれた事ないな。俺とソフィー以外に特級魔法や加護を持った奴に会うのもお前が初めてだし。

 あっ、そういやソフィーを賢者で見た時は何も分からなかったな。

 それから、加護にも練度があるって言ってるだろ?俺が賢者の加護を渡されたのは最近だし、第三階級の加護なんてそうそう鍛えらんねぇんだ。

 だから今の俺が、他人の特級魔法について分かるのは名前くらいだな。

 お前だと、物質変形と停滞空ーーーー」


 カナタは得意げに話すグランの口元を押さえると、目を血走らせている。

 もしや今、賢者による鑑定によって|不落之果実インビジブル・タイムの本来の名前を聞いてしまいそうになったのではないかーー?そう感じ取り、反射的にグランの口を塞いでいた。

 グランは突然口を塞ぐカナタの手を振り解くと、驚いた様子でカナタから距離を取る。


「んんっー!?ぶはっ!ーーーいっ、いきなり何すんだよ!?」


不落之果実(インビジブル・タイム)だ」


「ん?」


「停滞ナンタラとかって特級魔法は、賢者の加護に対するプロテクトが働いた結果表示された幻だ。その特級魔法の本当の名前は不落之果実(インビジブル・タイム)だ。分かったら二度と口にするな」


「そうなのか? けどソフィーが言うには、賢者の加護が弾かれたら俺にも分かるってーーー」


「それでもこれは例外なんだ。このプロテクトはソフィーの特別性だからな。断じて停滞ナンタラではなく、不落之果実(インビジブル・タイム)だ。分かったか?」


 大した意味は無いとは言え、自身が必死で考えた必殺技の名前を否定されることだけは避けねばならぬと、鬼の形相でグランを睨み付ける。

 そうして能力の名前については何とか誤魔化す事に成功はしたものの、結局の所、カナタには賢者の力を防ぐ術が無いらしい。

 時間を止める能力という事は隠しておくべきだろうし、特にリスクについてまで知られては死活問題だが、賢者の加護でも見れないような情報であれば心配する必要もないかと、カナタはホッと肩をなで下ろす。


「それで、そのインビジブルなんとかってのはどんな力なんだ? 俺の腹と背中を抉ったのがそうなら、すんげぇ速さで動く力とかか!?」


「ああ、まぁ大体そんな感じだ」


「もう一つの特級魔法は名前のまんまの力っぽい・・・・、ってまさかこれも嘘か!?」


「それは本当だよ。というか寧ろそっちが本命な」


 数秒の時間を止めるしか能のない自分が、連続して倒せる雑魚モンスター数最大二匹の自分が、もしかしたら立派に戦えるようになるかも知れないのだと期待を込めそんな事を口にするカナタに、グランから思いもよらぬ言葉が返って来る。

 

「なんだそうか!ならこの言霊の加護ってのも本当か?」


「・・言霊の・・・加護?本当にそう見えるのか?」


「ああ、見えるぞ!」


 この世界に来て何度目だろうか、再び全く覚えのない単語を聞くカナタ。しかし、これに関しては容易に想像することが出来た。

 自分が異世界で、何故周りの者達と何の苦労もなく言葉を交わせているのか?

 この時カナタは、言霊の加護とは言語理解に関する力なのだと己の中で咀嚼し、飲み込んだ。

 

「そうか・・・。いや実は言霊の加護にもプロテクトをかけてた筈なんだけどなぁ。グランはもう賢者の加護を使いこなし始めたのか?

 凄いなぁ!あは、あは、あはあはあは」


「あはぁ!!凄いか!?そうかそうか!あはははは!!」




 ・・・・・・・




「そういやお前、吸血竜鬼なんだって?」


「それは・・・、何で知ってんだよ!?」


「何でもいいけど、クソかっけぇな!!」


「ばっ、馬鹿にしてんだろ!」


「いや、しねぇだろ」


「ほ・・ほんとか?」


「おう、しねぇよ」






 ・・・・・・・






 ・・・・・・・





「ほっ・・・・・・、ほんとか?」


「当たり前だろ!竜人族と吸血鬼の混血とか、何だその“俺が選ぶ生まれ変わったら成りたい種族トップファイブ”、いやスリーには確実に食い込んでくる超絶生物は?クソカッケェだろ」


「は・・はぁ!?どこがかっこいいんだよ!外に出たらあんな見た目になんだぞ!?かっこ悪りぃだろうがよ!」


  カナタにとって、そんな事は大した問題ではなかった。

  そうーーー。本当に問題視すべきなのは。






「というかお前さ、何で男なんだよ・・・」















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