二十六、Fランク冒険者と数持ち
黒珠を極夜鋼、ミスリルを聖銀という表記に変更しました。
硬貨の白銀は銀とミスリル(聖銀)の混ぜ物、聖銀は高純度の天然輝晶と純銀を混ぜた物となります。
尚、覚えて頂く必要は特にありません。
カナタとグランは仲裁に入ってくれたガルーとメイナを見送ると、再びギルド内へ入り代筆を頼んだメイナの質問に答えていく。
カナタの要望によりもう一度名前を聞く所から始めてもらい、グランは声高らかに“グラン・イプシロン”と自らの名前を叫ぶが、先程のように笑う者は一人も居ない。
「では、次に出身地をお願いします」
「日本って国だ」
「グラン君、続けてどうぞ」
「俺は出身地は、よく分かんねぇ!」
「分からない?カナタさん、何かご存知ですか?」
「んんんー、グランも出身地は日本だ」
「・・・あ、ああ!そうだった!俺は二本で生まれたんだった!そうだそうだ」
「・・・イントネーションの違いが気になりますが、まぁいいでしょう。では、得意な戦い方を教えてください。カナタさんは剣技と書いておきましたので、グラン君だけで結構です!」
「俺は肉弾戦だ!」
「徒手格闘・・っと。では、お二人の種族は?」
「人族」
「俺も人族だ」
グランは誰かから種族を聞かれたらそう言うようにとソフィアから言われているようで、カナタは種族を問う質問にヒヤリとしたが、危なげなく乗り切ることが出来たようだ。
「では最後に、お好きな数を仰って下さい」
「数?何でだ?」
「これらのプロフィールは、全て本人確認の際に使用するものだからです」
「なら覚えられる数字の方がいいか・・・、じゃあ俺は八で」
「俺は一だ」
「はい、それでは質問は以上となります。次にこちらのプレートにお二人の血を吸わせて頂きますので、腕を出して下さい」
アルンの手にはキャッシュカードほどの大きさの薄い金属板が握られており、カナタが腕を出すとアルンはその金属板を押し当てる。
押し当てられた薄いプレートは腕の形に合わせて湾曲し、その状態で三秒ほど放置すれば血を吸った事になるようだ。
「では次にグラン君ですね」
「ちょ、え?もう終わったのか?痛くもなんともーー」
カナタはそう言って薄い金属板が当たっていた腕を見る。
するとそこには細い針で刺されたような傷口が複数箇所あり、少し太めの注射器を刺された直後のように血が浮かんでいた。
いつ、どうやって刺されていたのか全く分からないカナタは不思議そうに自らの腕を観察している
と、アルンが慣れた様子で答えてくれた。
「この金属板は、このように湾曲させると仕込まれていた針が飛び出す仕組みになっていて、針は痛みを感じさせ難い構造で作られているんです」
「刺す時に痛みを感じさせないような成分を出すって虫なら聞いたことあるけど、痛みを感じさせない構造ってなんだよ・・。
まあ痛くないなら何でもいいんだけどさ、それより血なんて採取して何に使うんだ?」
血で個人情報を読み取られでもすれば、グランが人族でないことなど一瞬でバレてしまう。使用法によってはグランの冒険者登録を諦めなくてはならないだろう。
カナタは動揺を隠すように、可能な限りの自然体を装い質問する。
「構造については私も詳しくは知らないんですけど、何でも吸血鬼の歯を参考にして作られているそうですよ?
血の使用法はアンケートと似たような物で、やはり本人確認のためです。
冒険者というのは高ランクになればなるほど信用度も高くなり、様々な国で入国審査などが楽に行えるようになります。
ですが一昔前それを利用した犯罪が急増し、危険な犯罪者による高ランク冒険者狩りや、冒険者によるランクプレートの売買が多発したんです。
その時は様々な国に危険人物が容易く入り込める事態になり、各地に大きな混乱をもたらしたと聞いています。
そこで開発されたのが血を使った本人認証システムで、後で出来上がったプレートでも説明しますが、血の情報を組み込んだプレートは本人のマナにしか反応しないようになっているんです。
これにより犯罪者達による成り替わりを防ぐ事に成功し、重罪を犯し逃亡した冒険者などが名前を変え新たに冒険者登録を行うといった不正行為を防ぐ事が出来るようになったんですよ」
アルンの話を聞いたカナタは、想像していた以上に近代的な装置が開発されている事に驚くが、どうやら吸い取った血を使って種族などの確認を行うわけではないと分かると、ホッと肩を撫で下ろしグランの腕に押し当てられる金属板を眺めつつ、アルンとの会話を続ける。
「吸血鬼の歯にそんな力がねぇ。危険な種族にも思えるけど、そうやって俺達の生活を助けてくれる存在でもあるわけか・・。感慨深いもんだな・・。
というか、プレートにマナを込めるとどんな反応があるんだ?」
「確かにそうですね。
痛みを感じさせない特性もそうですけど、なんでも吸血鬼の歯には目に見えるような穴は無いのに、何故か血を吸い取ることが出来て、なんとその際には対象のマナも一緒に吸い取れるようなんですよ。
その特性を活かしたのが、この金属板に使われている針なんです。
それに軽くて丈夫なので様々な用途に活用出来ないかと、まだまだ研究は進められているようですし、もし吸血鬼を仕留めるような機会があれば研究者に高く買い取ってもらえると思いますよ。
ーーーなぁんて!冗談です。
危険だから、吸血鬼が居ても無闇に近づかないでくださいね?
あっ、プレートにマナを込めるとどうなるかでしたね!
マナを込めると先ほど書類に記入した情報が浮かび出るよう魔方陣が組み込まれています。
文字を出すだけの魔方陣ですから、消費するマナは生活魔方陣なんかよりも大幅に少ないので安心して下さいね。
大抵の場合はプレートを反応させればそれで本人確認完了ですが、何か怪しい箇所がある場合にはプレートに浮かび出る情報を使った本人チェックを行う事になっています」
「へえぇぇ、思ってた以上にちゃんとしててビックリしたよ。
そんな手の込んだプレートを作ってくれるなら登録費の大銀貨一枚は全然高くないな。だってそれ、繰り返し使えるタイプの魔方陣ってことだろ?
因みに、プレートはどのくらいで完成するんだ?魔方陣を組み込むならそれなりに時間がかかりそうだけど・・・」
「確かに格安ですが品質は確かですから安心してくださいね。
プレートとなる金属板には、予め文字が浮かび出る役割りを持った部分の方陣を組み込んだ上で保管していますから、後は答えて頂いた情報に合わせた文字が現れるように調節するだけです。
冒険者ギルドには必ず優秀な魔方陣術士が在籍していますし、日が沈む前にはお渡し出来ますよ。
もしこちらで待たれるのでしたら、冒険者に関して分からない事などがあれば御教え致しますが、どうされますか?」
気付けば空は本格的に茜色に染まっており、日没まであと一時間と言った所だろうか。
カナタは前回聞いていた冒険者ランクのことなど、うろ覚えということもあり、グランにも説明しようと思っていた所だったためアルンの言葉に甘えることにした。
「ああ、じゃあ悪いんだけど、もう一度冒険者のランクについて教えて貰っていいかな?」
「はい、勿論です!」
拙いながらもグランが文字の読み書きを出来ると聞いたアルンは、紙とインクを取り出すと文字に起こしながら説明を始めた。
「冒険者のランクにはF〜Sまでの九段階があります。ランクによって配布されるプレートの素材が異なり、
Fランク・木プレート
Eランク・獣角プレート
Dランク・鉄プレート
Cランク・銅プレート
Bランク・銀プレート
Aランク・金プレート
AAランク・聖銀プレート
AAAランク・極夜鋼プレート
Sランク・日緋色金プレート
となっています。
冒険者ランクを上げる事が可能になったときは、本人の希望があればギルドの受付にて一つ上のプレートと交換で発行することが出来、またその際、手数料として銀貨三枚が必要となります」
「AAAランクの極夜鋼ってなんだ?」
アルンが冒険者ランクについての説明を終えると、グランが気になったことを質問する。これは前回カナタも気になって聞いたことであるため、アルンはクスリと笑う。
「グラン君は、”星屑の夜”という物を知ってる?」
「いや知らねぇ。星がいっぱい見える夜空のことか?」
「ウフフ、星屑の夜というのはね、たまにお空から降ってくる大っきな隕石の中に少しだけ含まれる黒い鉱石なの。真っ黒な星屑の夜にはお星様のようにキラキラとした物が含まれていて、その姿はまるで夜の星空の様なんだって。
けどね、キラキラと光る物はお星様みたいで綺麗だけど本当はただの鉄やガラスが光ってるだけで、星屑の夜には要らない物だから取って捨てちゃうんだ。
そして星屑の夜から要らない物を除いた真っ黒な物を極夜鋼って言うんだよ。極夜鋼はとっても丈夫な金属で強い光耐性があるから、極夜鋼で造られた剣は光を切る剣って呼ばれるみたい」
「光を切る剣・・・・・・、ヘヘッ!カッコいいなそれ!!カナタ、もし極夜鋼を見つけたら売らずに剣作ってくれよ!」
「そうだな。そんな簡単に見つかるとは思えないが、見つけたら作ってやるよ」
これ以降、グランの趣味には極夜鋼探しが追加されたのである。
「それから、前回は聞いて無かったんだけど初めは必ずFランクから始めなきゃいけないのかな?」
「はい、初めはどんなに強い方でも必ずFランクからです。先ほども言ったように、高ランクの冒険者には高い信用があります。
ですから強いからといって突然高ランクになれてしまっては、どんな危険人物でも簡単に高い信頼を得られてしまうということになりますので。
登録の時点で、全ての方の身元を辿って調査するのは不可能ですから、こうした方法をとるしか無いようなんです」
「ということは、飛び級もなさそうだな・・・。冒険者ランクを早く上げるにはどうすればいいんだ?」
「ギルドとしても実力者を埋もれさせる訳にはいきませんので、基本的にCランクまでは実力があれば比較的早く上がれるようなシステムになっています。
其々のランクに上がるためには必要なポイント数というのがあって、ポイントは依頼を完遂することで取得でき、取得できるポイント数は難易度に合わせてギルドが非公表にて設定しています。
簡単な審査を除けば必要ポイントを一定期間内に獲得出来ればいいだけですから、早く上がりたければ出来る限り難しい依頼を多く熟すのが一番の近道になります」
「へえ、ポイント制なのか・・・。因みに、Fランクの奴がAランク相当の難易度の依頼を受けることは可能なのかな?」
「残念ながらそれは無理です。冒険者が受けられる依頼の難易度は自分の冒険者ランクもしくはパーティーランク以下の物だけで、条件が整った場合にのみ一つ上の依頼までは受ける事が可能となります」
「パーティーランク?」
「パーティーランクは、依頼に当たるパーティーメンバーのランクの平均値となります。
Fランクを一、Sランクを九として計算して平均値を求めるため、例えばFランクのカナタさんとグラン君、Bランクのガルーさん、メイナさんの四名でパーティーを組んだ場合、パーティランクは三、つまりDランクとなります。
ただし、パーティーにAランク以上の冒険者が一名でも居る場合は無条件でBランクまでの依頼を受けることが可能になります」
「じゃあ、俺とグランとガルーさんだけの場合のパーティーランクはどうなるんだ?1+1+5=7で、7を3で割ったらーーーーー、2.333・・・だぞ?」
「その場合は二として計算することとなりますのでEランクの依頼までしか受けられません。
それより、カナタさんは字の読み書きが出来ないのに、このような複雑な計算がお出来に・・・・?」
「え?・・複雑なのかこれ?足して割るだけじゃ・・・・」
「冒険者でこれほど複雑な計算を解かれる方は初めて見ました・・。
普通はギルドの職員が計算してお伝えするんですよ?ーーーさっきの剣技といい、カナタさんは本当に何者なんですか?」
「いっ、いやぁ、日本ではたまたま数学の勉強が発展してたってだけだ。俺は本当に大したこと無いんだけどな・・・。
それはそうと、Bランク以上になるには強さ以外の何が必要なんだ?」
「その情報の一部は部外秘となっていますので、全てをお伝えすることは出来ませんが・・・、少なくとも、街の住民や他の冒険者を平気で傷付けるような方はBランクにはなれません」
アルンは片目を閉じ、人差し指を顔の前に立ててそう言う。
他人を傷付けるーーー。その言葉にカナタはヒヤリとする。
先ほどカナタは、ホスの顔面へ拳を叩き込み負傷させたばかりなのだ。まさか既にBランクへの道が断たれているのかとアルンを見ると、アルンは小声で答える。
(フフッ、大丈夫です。カナタさんはホスさんの体を切ってませんし、ホスさんは日頃から態度が悪くて職員の間でも嫌われていますから。
何より、カナタさんは体を張ってグラン君を守ったんですから、寧ろ評価アップです!)
評価がアップすると冒険者として有利になるかはさておき、自分のBランクへの道が閉ざされていないことにホッと一息吐いたカナタは質問を続ける。
「ん?待てよ・・・。例えばCランクの奴は一人でもCランクの依頼まで受けられるんだよな?
だけど例えばCランク四人でパーティを組んでも平均値はCのままで、受けられる依頼もCランクまでってことになる。
それってなんかおかしく無いか?」
「理論上はそうですが、それはあくまでも受注可能な依頼の上限の話です。
Cランク難易度の依頼をCランク冒険者が一人で受けるにはかなりの危険が伴う場合や、多くの時間を要する場合があり、何よりBランク冒険者に上がるための条件の一つに、三名以上のパーティーを組むという項目がありますので、普通Cランク冒険者というのは一人では行動しません。
中にはソロで活動する方も居られますが、危険だと判断すればギルド職員がそう伝え、依頼の受注をお断りすることになります」
「そうなるとやっぱソロでの活動は難しいわけか・・・。三人以上のパーティーねぇ・・。
ーーーけど、危険だと判断したら止めるっつってもギルドの職員は戦闘のプロってわけじゃないだろ?何を基準にそんなの判断するんだ?」
「それについては、冒険者にはパーティーランクを求めるための数値とは別に、冒険者ランク毎に大凡の強さを示す数値というものが設定されているんです。
普段、冒険者の皆様が使われている九段階のランクというのは、本当は非公表で更に細分化されていて、F-、F、F+、E-、E、E+・・・・といった具合で二十五段階に分けられ、それぞれに強さを表す数値が設けられています。
これは自分の実力に見合わない依頼を受けて大怪我を負う冒険者達が後を絶たないために近年開発されたもので、依頼の達成時に得られるポイントーーーつまり依頼の難易度を示す数値は、これを元に計算され設定されています。
ですから、例えば依頼の難易度を示す数値が十だとすると、一人で十一の強さに相当するランク以上の方か、パーティーメンバーの合計数値が十一以上にならない限りは危険だと判断され、依頼を受注できない仕組みなんです。
逆にパーティー構成員の合計ポイントが依頼の難易度を示す数値を大きく超える場合にのみ、自分達のランクより一つ上の難易度までは依頼を受けることが可能となります」
「そっかそっか。要はCランクの冒険者がBランク相当の依頼を受けたきゃAランク冒険者に協力を仰ぐか、大人数を集めてパーティーポイントを増やせば良いわけだ。
因みに、BランクやAランク冒険者が一人で同じランクの依頼を受ける場合にも、やっぱ危険だと判断されるのかな?」
「はい。Bランク以上の依頼では中型以上の魔物との戦いもあり難易度が格段に上がりますから、同ランクの依頼にソロで挑戦するというのは特殊な場合以外ではあり得ません」
「なるほどなるほど・・・。
グラン、喜べ。
多分、Aランク冒険者はグランが思ってるより強いぞ?多分だけど、少なくともガルーさんが三、四人で束になった以上に強いと思って良さそうだ。だったらAAランクやAAAランク、更にSランクの奴等なんて本物の化け物みてぇに強いんじゃねぇか!?」
実は、グランはカナタについて来ているだけで特別、冒険者への拘りは無い。
ただ強い相手と出会い戦うことで己を高めたいだけなのだが、そんなグランに少しでも冒険者として上を目指すことにやり甲斐を持ってもうため、カナタは敢えて大げさな態度で言ってみせる。
カナタとしてはライバルとなる冒険者は弱ければ弱いほど有り難く、内心は言葉とは全く逆の方向にあったのだが、お陰でグランは全く興味の無さそうだった冒険者ランクの話に、目を輝かせ始めた。
「本当か!?何でそんなこと分かるんだよ!?」
「強さと依頼の難易度をポイントで表して、それを比べて危険かどうか判断してんだから、Bランク冒険者じゃ数人やそこらでパーティーを組んでもAランクの依頼を熟せるポイントには達しないってことだろ。
逆にAランクが一人いりゃBランク以下の依頼を足手纏いを引き連れた状態でも無条件で受けられるってんだ。
Bランクの依頼にBランク冒険者が挑戦するにはパーティーで挑むのが普通ってことは、Bランクのパーティーより、Aランク一人の方が強いってことになる。
で合ってるよな?アルンさん」
「はっ、はい、その通りです!」
「本当か!?そんじゃ、本当に強えやつがいっぱい居るってことじゃねぇか!」
「少しはやる気になったみてぇだが、そんなグランには、更にやる気になってもらおう」
「ーーーなっ、なんだ!?」
「フッフッフッ・・聞いて驚け。実はな、前にアルンさんから聞いた話だと、A以上のランクを持つ奴の中には“数持ち“って呼ばれてる奴らが居るらしい」
「数持ち・・・?」
「そうだ。まずアルンさんによると、世界に数十万とも数百万とも言われる冒険者の内、Aランク以上の冒険者は一万にも満たないほどしか居ないらしい。
その内の上位者にだけ与えられる呼び名が”数持ち”だ。
Aランク約八千人中、上位五百人。
AAランク約千人中、上位百人。
AAAランク約百人中、上位十人。
そしてSランク全員には、プレートにそいつの順位が刻まれてるらしい」
「すげぇ・・・、そんな強い奴が何百人もいるのか!?冒険者って凄えんだな!!」
「そうだろ?其処でだ!グランにはいずれ数持ちになってもらおうと思う。
多分、数持ちになりゃ超有名人になる。そしたら、父ちゃんと母ちゃんにグランの活躍が伝わる。どうだ!?」
「おおおぉぉおお!!すげぇいいなそれ!!よし分かった!なるぞ!」
「フフッ、じゃあまずはこの木のプレートからね。はい、どうぞ!」
こうしてグランにはまた新たな目標ができ、この世界に二人の新たなるFランク冒険者が誕生したのだった。
*********
その頃、バロンの王宮、王の間。
「ゼノスか、入れ」
「ハッ」
王への報告を済ませたレオ達がラミスのお仕置きを受けているその時、六獣騎士副官のゼノスは王の間を訪れていた。
「どうした?」
「ハッ、先程も話した漆黒の髪の青年らへの監視についてお話が」
「良い、二人の時くらい昔のように話せと言っておろうが。肩が凝っていかん」
そう溜息を漏らすレオルを見たゼノスは、口角を上げ口を開く。
「ーーーふっ、ではそうさせて貰おう。それで、監視の話だが、レオ達を交代で当たらせたいのだ。良いか?」
「ただの監視に六獣騎士を?何故だ、お前の見立てでは、その者達は迷宮の二人組みとは関係ないのであろう。
念の為の監視なら六獣騎士など必要ないはずだが・・何を考えておる?」
「黒髪の青年と行動を共にしている小僧が中々に面白い奴でな。レオ達に良い影響を与えてくれるのではないかと思ったのだ」
「ほう、強いのか。どの程度の使い手だ?」
「さて・・・、何せまだ本気の戦闘を見ておらんから何とも言えんが・・・。そうだなーー、アレが本気になればレオ達ではまず歯が立たんだろう」
「なんと・・・、それほどか。一目見てみたいものだな」
「フッーー、強いと言ってもまだまだお前に会わせるほどではない。それで?」
「そうか・・。良い、好きにせい」
「それと、恐らくラミスは納得せんだろう」
「はぁ・・、分かった。ではラミスには俺から言っておこう。監視の件はゼノスに任せるとな」
「王を使っちまって悪いな。それではそろそろ、お前の副官に戻るとしよう。
ーーーではレオル様、私はこれで」
「・・・ああ、頼んだぞ」