6 御使い
すみません。
今日は短いです。
この世界には三体の神の御使いがいる。
その内の二体は、ドラゴンのホウマとフェンリルのカナンである。
「もう一体は?」
レンとホウマの二人しかいない塒で、神の御使いについて説明しているホウマに、レンの質問が飛ぶ。
「うむ、意外に思うかもしれんが、最後の一人はエルダーリッチじゃ。」
死者の慣れの果て、アンデッドの頂点に君臨する存在。
それがエルダーリッチだ。
その存在は伝説上でしか確認されていないが、そのどの伝説にも必ずエルダーリッチは災厄として描かれている。
そんな存在が神の御使いだとは、普通では考えられない。
「ふうん。」
「ふうんってお前、何も思わないのか?」
ホウマはレンがあまりにも素っ気ないため、思わず問い質してしまう。
「別に、神様が選んだんなら良いんじゃないの?」
なるほど、それならば納得できる。神様が選んだ神の御使いに悪い者がいるはずがない。そう思えば確かにエルダーリッチも神の御使いとしては合格だろう。
しかし、神の御使いとは神が選ぶものではない。
「神の御使いとは、受け継がれていくものじゃ。最初の御使いから、次の御使いへと。そして、先代の御使いはかのエルダーリッチを選んだ。」
「じゃあ、今の御使いのエルダーリッチは悪い御使いなの?」
ホウマは優しい笑みを浮かべると、レンの頭を撫でながら話す。
「いや、そんなことはない。今の御使いは皆いい奴らじゃよ。じゃが、カナンが後継者を決めておらんかったから、今では御使いは二人しかおらんがな。」
ホウマの言葉を聞き、レンはほっと息をつく。
「で、どうやったら御使いになれるの?」
「御使いになるには、先代の御使いに認められ、呪文を唱えればなれる。」
「それだけ?」
レンはどこか拍子抜けしたように言う。
「いや、認められると言っても、先代が死ななければ御使いになることは出来ない。」
「それはホウマが死ぬってこと?」
「そうじゃな、そういうことじゃ。」
レンは顔を伏せ、ポツリと呟く。
「じゃあ、新しい御使いなんて産まれなきゃいいのに。」
「どういう意味じゃ?」
レンの呟きに、ホウマは聞き返す。
「新しい御使いが産まれなきゃ、つまりホウマが死ななきゃずっとホウマと一緒にいられるでしょう?」
レンの言葉に、ホウマは感極まったのかレンの頭を胸に包み撫でる。
「そうじゃな。我もまだレンと一緒に居たいぞ。」
ホウマの言葉に、レンは満面の笑みを浮かべる。
「ずっと一緒だよ、ホウマ。」
愛くるしい笑顔でそう言ったレンに、ホウマは撫でる速度を上げる。
「ああ、ずっと一緒じゃ。」
こうして、カナが狩りから帰ってくるまでホウマはレンを撫で続けるのであった。
ドラゴンの育児日記。
今日はレンに御使いとは何かを説明した。
説明した後、レンは満面の笑みで私と一緒に居たいと言ったのだが、あの時の笑顔は反則だと思う。
風景や景色を切り取る魔道具はないだろうか?
・・・・・・・よし、明日から風景や景色を切り取る魔道具を作るとするか。