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千年戦争の悪魔  作者: 九尾 藤近
一章 幼少編
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5 日常

 レンがカナンから授かった子オオカミは、雌だった。

 レンはカナンの名前にちなんで子オオカミをカナと名付けた。


 カナは毎日よく餌である魔物の肉を食べ、元気に遊びまわっている。

 最近ではレンの戦闘訓練(森の外に出て魔物狩り)にもついていっており、魔物の喉元に噛みつき食いちぎる様は、最初はレンも驚いたものだ。

 だが現在ではそれにも慣れ、レンは今日も食卓を華やかにすべく魔物狩りをしている。


 現在、レンは七歳。相変わらず長く伸ばしている銀色の髪の毛は肩より少し下のあたりで切っており、やはり後ろで括っている。まだ七歳にも関わらず、その顔立ちは少しの男らしさが出ている。背も伸びており、今はもう八歳の平均身長とほとんど同じ身長になっている。


 そして、レンの鍛錬も次の段階に入った。それは、武器の鍛錬だ。

 ホウマがレンを拾った当初はレンが小さすぎて武器の扱い方を教えることは出来なかったが、数か月前ホウマが武器での鍛錬を許可した。


 レンはそこでもその才能を発揮した。

 レンは初めて持った槍を、まるで自身の体の一部かのように扱って見せたのだ。ただ、それ以外の武器の才能は皆無と言っていいほどひどい物だったが。


 とりあえず、武器を手に入れたレンはひたすらにその武器を使って鍛錬していた。

 その武器はカナンの骨で作られており、ホウマが製作を手掛けたものでもある。その切れ味は大地を切り裂き、その強度は神の御使い(ホウマ)の踏み付けにも耐えるらしい。


 ホウマは人間どころかドワーフでもこの槍以上の物は作れないらしい。


 そんな槍を持つレンだが、その槍を時には投げ、時には突き、時には薙いで獲物を狩っていく。更にそれに魔法も使っているため、正に目にもとまらぬ速さで移動していた。


 今レンたちがいるのはレンが元居た村の反対側の森だ。レンがいた村の反対側の森は広大で、いくらホウマの住処が森の中にあるとはいえ森の外延部近くまで行くと普通に魔物がいる。

 レンたちはその外延部近くの森で毎日狩りをしていた。


 今日、レンたちが発見した魔物はダッシュボア。イノシシ型の魔物で、その突進力は木をもやすやすとなぎ倒す。

 

 普通七歳という幼い子供が戦う相手ではないが、レンは普通の七歳の子供ではない。


 レンとカナはそれぞれダッシュボアの左右に陣取り、息をひそめる。


「カナ!」


 レンの号令と共に、カナが飛び出す。

 カナは一直線にダッシュボアに向かって走る。


 俺の声に気が付いたダッシュボアは、すぐにカナの存在にも気が付き、すぐに走り出す。

 その場を逃れたダッシュボアは俺達の実力を読み取ったのか、一目散に逃げていく。


「カナ!追いかけるぞ!」


 レンとカナはすぐにダッシュボアを追うべく、魔法を懸ける。

 神の御使いであるカナンの娘であるカナは何とか自力で追いつけるが、ただの人間であるレンには全力疾走をするダッシュボアに生身で追いつくことは不可能なのだ。


「雷の衣」


 ホウマ曰く、魔法の名前を呟くなり、叫ぶなりして声に出すことはどのような魔法を使うのか自分に言い聞かせるためには良いのだとか。

 そのため、レンも魔法名を口にした。


 あっという間にダッシュボアに追いついたレンは、ダッシュボアの横を走りながら槍をダッシュボアの腹めがけて突き出す。


「プギャアアアア!」


 ダッシュボアの断末魔が森に響き渡る。

 レンは冷静に槍を引き抜き、ダッシュボアの血抜きを始める。


「今日はイノシシ鍋かな?」


 レンは今日の晩御飯のことを考えながら笑みを浮かべる。

 カナは少しつまみ食いをしているが、腐っているわけでもないので放置しておく。


「カナ、食べ過ぎたらおやつの果物あげないぞ。」


 肉食獣のくせに果物が好きなカナは、その言葉で食べていた肉を吐き出す。


「クウーン。」


 カナはちょこんと座ると、レンのことをウルウルした目で見つめる。

 何も悪くないにかかわらず、レンは物凄い罪悪感にさいなまれる。


「分かった。ちゃんと果物はあげるからそんな目で俺を見るな。」


「ワン!」


 レンがそう言うとカナは嬉しそうに尻尾をぶんぶん振る。

 レンはたまにカナがオオカミではなく犬なのではないかの疑うが、カナが獲物を狩るときのどう猛さなどを目の当たりにすると、カナはオオカミなのだと再認識される。


 レンは嬉しそうなカナを見て柔らかい笑みを浮かべながら帰路に就く。


「さ、早めに帰ろう。ホウマが待ってる。」


 いつもの日常を終えたレンはホウマの待つ塒へと夕食の食材を持って帰るのだった。

ドラゴンの育児日記


レンが夕食の獲物を取ってくるようになってかなりの時が流れた。


最近では料理も始めて、森で適当な香辛料になりそうな植物を見つけてはそれを絶妙な分率で料理に着ける。


最近では保護者としての威厳が無くなっている気がするが、たまにレンが怖い夢を見たと泣きながら我の寝床に来るときなどは少し嬉しかったりする。


もう少ししたらレンも我の元を離れるのだから、早い事子離れをしないと。

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