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千年戦争の悪魔  作者: 九尾 藤近
一章 幼少編
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3 魔法

 レンとホウマが出会ってから凡そ一か月が経った。


 この世界の一年は春の月、夏の月、秋の月、そして冬の月の四か月で構成されている。そして一か月はそれぞれ九十日、一日が二十六時間となっている。


 つまり、レンとホウマが出会ってから九十日が過ぎた頃、、ホウマからレンにある提案がなされた。


「稽古?」


「そうだ。お主もそろそろ狩りなどを学ぶべきだ。だから、今日からお主に稽古を付ける。」


 朝食の席で唐突にそう提案されたレンだが、ホウマの言葉を聞いて目を輝かせる。


「うん!やる!稽古する!」


 レンは頭がいいとはいえ、男の子だ。『稽古』という言葉に何かを刺激される。


「で、どんな稽古をするの?」


 ホウマは予想以上にレンが食いついていることに、少し驚くが、このぐらいの年齢の男の子としては当たり前の反応なのだと思い至る。


「うむ、まずは魔法だ。」


「ま、魔法?」


 ホウマの言葉に、レンは少し落胆するような声を出す。


 レンは何度か住んでいた村に来た冒険者などを目にしており、その際彼らが腰に差していた武器、剣にあこがれを抱いていた。それ故に、あまり馴染みのない魔法という言葉に若干、いやかなり落胆したのだ。


「む?文句あるのか?」


「うーん。文句って程でもないんだけど、魔法ってなんかパッとしないんだよね。」


 それを聞いて合点がいたのか、ホウマは何度か頷くと、ホウマを外に連れ出す。


「いいか?よく見てろよ。」


 そう言ってホウマは自身の魔力で大気の中に漂う魔素に働きかける。


 結果はすぐに表れた。ゴウッ!という音と共にホウマの目の前の空間が燃え上がり、段々と形を変えていく。


「すごい・・・・。」


 レンがそう呟くのも無理はないだろう。何故なら、ホウマの炎は離れているレンにまで熱気を届けているのに、すぐ傍にいるホウマには何の影響も出さない。更に、段々と形を変えていった炎は次第にその動きを止める。


不死鳥フェニックス


「ほう、よく知っているな。」


 そう、ホウマが炎によって模っていた者は再生の象徴である不死鳥だった。


 ホウマはその不死鳥を大空にはばたかせる。炎で出来た不死鳥は何度か羽ばたいて上空まで飛んでいき、一気に収縮する。


「クエエエエエエエ!」


 魔法で作りだしたはずの不死鳥は、一声そう鳴くと体を再度膨張させる。つまり・・・。


「うわあああ!」


 不死鳥は空中で爆発する。レンはそのあまりの威力に、吹き飛びそうになる体を必死に地面にへばりつかせた。


「すごい!すごいよホウマ姉!」


 先程とはうって変わり、興奮を露にするレン。そんなレンを見て、ホウマは少し悪戯をすることにした。


「ほう。だが、先ほどお主は魔法はパッとしないと言っていたぞ。やはり、武器を使った稽古にしようか?」


「え!?」


 ホウマの言葉に、レンは背後にガーンと効果音が見えそうになるほどの衝撃を受ける。


「そ、そんな!ま、魔法を教えてくれないの!?」


 レンは瞳に涙を浮かべ、ホウマを見る。


「うっ!」


 ホウマは後悔した。悪戯のつもりで言った言葉で、レンを泣き出しそうな顔にしてしまったことに。


「じょ、冗談だ!教えてやる!」


 ホウマは慌ててレンをあやそうとする。


「ほんと!?」


 途端に明るくなるレン。目に溜まった涙を拭い、本当にうれしそうに笑うレンを見て、ホウマも自然に笑顔になる。


「よし、まずは基本的なことから教えていくぞ。」


「はい!」


 元気な返事を返すレンに、ホウマは魔法について簡単に教える。


「まず、魔法をどうやって放つかわかるか?」


「え?・・・・わ、分かんない。」


 少し考えたと、レンは素直にそう言った。


「でも・・・。」


 しかし、そこでレンの言葉は終わらなかった。


「体の中にあるものを外に出せばいいのかな?さっきホウマもそんなことしてたし。」


 レンがつづけた言葉に、ホウマは絶句する。


 確かにレンが言うことは半分は正解だ。魔法とは体内の魔力を使って空気中に存在する魔素を変質させる技術だ。かなり簡潔に説明したが、要は万能物質である魔素に自身の魔力で命令することによって魔素の形態を変えることだ。


 空気中にある魔素を感じ取ることは出来ないが、体の中にある魔素を感じ取ることは出来る。しかし、そう簡単なものでもなく、普通の人間では体内にある魔素を感じ取るのに最低でも一か月はかかる。


「天才、というやつか。」


 ホウマの呟きはレンに届くことはなかった。


「まあ、半分正解だの。」


 ホウマは気を取り直してレンに魔法のことについて教える。


「ああ、なるほど。」


 レンはそう言って自身の魔力を動かそうとする。


「あれ?」


 しかし、レンは首を傾げ、怪訝そうにする。


「む?どうかしたか?」


「体の中では動かせるけど、外に出せない。」


 レンはうんうん唸りながら試行錯誤する。


「やれやれ。」


 ホウマはそんなレンを見てアドバイスをしようとする。


「あ、できた。」


 そんな間抜けな声とともに、レンは光の弾のようなものを体外に排出する。それを見たホウマは、今度こそ度肝を抜かれた。


 魔力を体外に排出することは、魔力を感知すること以上に難しい。しかも、それが完璧に近い球体となると城に仕える宮廷魔導士でも高位の実力者でなくては出来ないようなことだ。


 それを、齢三歳の、それもついさっき魔法の使い方を知った子供が難なくやって見せたのだ。


「まさかこれほどとは。」


 ホウマは魔力の玉を出せて喜んでいるレンを見て、優しく笑う。


「さ、これからはお主に具体的な命令の仕方を教える。しっかり修練に励むのだぞ!」


「はい!」


 元気よく返事をするレンを見て、ホウマはとんでもない拾い物をしたもんだとため息をついた。

おまけ


ドラゴンの育児日記


今日はレンの嫌いなピマンを食べさせようとした。

とりあえずピマンを切り刻んでレンの好きなケーキに入れた。

美味しそうに食べていたが、食べ終わった後に種明かしをしたら、『ホウマ姉嫌い!』と言われてしまった。

わしは立ち直れるだろうか・・・・。




ピマンは、こっちの世界でいうピーマンです。

読んでくれてありがとうございました。

楽しんでくれたら幸いです。

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