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千年戦争の悪魔  作者: 九尾 藤近
一章 幼少編
3/37

2 拾った訳

少しレンとホウマの家族らしい絡みが欲しかったのでこの話を書きました。


あまりうまく書けていませんが楽しんでいただけたら幸いです。

 レンとホウマが出会ってから数日が経過した。彼らが出会って、すぐにホウマはレンを自身の塒へと連れ帰った。


 ホウマの塒は洞窟の奥にあって、その広さから人間形態の時用の塒だという事がわかる。さらにホウマの塒はドラゴンのくせに様々な家具や小物が揃っており、なかなかに快適な空間だった。


 ホウマはレンが暮らす部屋を魔法を使って一瞬で作りだした。それまで魔法を見たことのなかったレンは大いに喜んだ。


 この数日間はホウマと一緒に家具を作ったりしていたレンだが、それもひと段落したため思い切って以前から気になっていたことを聞いてみることにした。


「ねえ、ホウマ姉。」


 この数日のうちにレンとホウマは親睦を深めており、レンはホウマのことをホウマ姉と呼ぶようになった。呼べれるホウマとしても、少し違う気がするがまんざらでもないようで、レンに何かを言うことはない。


「どうした?レン。」


 ホウマは作っていた椅子の足を脇にどけ、レンを見据える。


「ええっと、聞きたいことがあるんだ。」


 この数日間、質問などもせずにホウマの言うことを聞いていたレンのいきなりの言葉に、ホウマは顔を引き締める。


「わしが答えられることなら何でも答えよう。」


 レンはホウマの言葉を聞くと一回息を大きく吸う。


「何で僕を拾ったの?」


 レンは意を決して聞く。これはホウマがレンを個の塒に連れ帰った時から感じていた疑問だった。


 はっきり言ってレンに利用価値はない。レンは権力を持っているわけでも、金銀財宝を持っているわけでもない。


 そのため、ホウマがレンを拾う理由に見当がつかなかったのだ。


「何だ、そんなことか。」


 ホウマは優しく微笑むと、レンの頭を撫で始める。


 レンもくすぐったそうにしていたが、特に抵抗せずにホウマに撫でられる。


「嬉しかったんだ。」


 ホウマはレンの頭を撫でながら語った。


「わしは神の使徒となってから人と関わることがなかった。」


 ホウマは悲しそうな顔をしながらレンに言う。


「この場所にもたまに人間が来る。しかし、その人間どもはわしを見つけるとまずは驚き、次に恐怖する。そして・・・。」


 ホウマはそこで言葉を詰まらせる。どうやら言いたくないらしい。


 しかし、レンはホウマが続けない言葉の先が分かった。まだたったの三歳歳だが、レンはとても頭が良かった。


 何度もこの森に訪れる調査隊、そしてその調査隊は一人たりとも帰ってくるものはなく、ホウマがそのことを言いづらそうにしている。


 レンはそのことから、一つの結論を出した。


「ホウマを攻撃した。」


 自然とその言葉がレンの口から出た。


「それで返り討ちにあった。」


 レンはそう言ってホウマの綺麗な赤色の瞳を見つめる。


「・・・っ!その通りだ。」


 ホウマはレンの頭の上に置いていた手を引っ込め、顔を俯かせる。


「ふんっ!自業自得だ。」


 レンに嫌われてしまった。そんな思いがホウマの心の中を流れるが、レンが口にしたのはホウマの予想とは真逆の言葉だった。


「え?」


 ホウマは少し間抜けな声で問い返す。


「こんなに優しくて、カッコいいホウマ姉を攻撃したんだから、そいつらは死んで当然だ。」


 レンは静かに言い放つ。


 とても三歳児の言う言葉ではないが、ドラゴンたちにとってこのようなことは日常茶飯事。下手をすれば生後数日で狩りに出かけることもある彼らドラゴンにとって、レンの言葉は至極当然のことだった。


「レン、お前は、その・・・、わしがお前の同族を殺したことについて何も思わないのか?」


 ホウマはレンに恐る恐る聞く。


 この数日にレンがホウマに懐いたのと同じで、ホウマもレンを可愛く思うようになり、今では本物の家族に見えなくもなかった。


「ホウマ姉を傷つけようとするような奴らなんて知るもんか。」


「レン!」


 その一言を聞いて、ホウマはレンを抱きしめる。


「私がお前を拾ったのは、一人でいるのが嫌だったからだ!私の同族はもうみんな死に絶えてしまった!だからわしは人のぬくもりが欲しかった!」


 ホウマはレンを力強く抱きしめる。


「だから、お前を拾った!孤独を紛らわすために!同じく孤独なものを求めた!」


 ホウマの告白に、レンは抱擁で返す。


「僕も、家では孤独だった。誰も僕にかまってくれなかった。だから、今ではホウマは僕の親よりも僕にとって家族だ。」


 レンの言葉に、とうとうホウマの涙腺が崩壊してしまう。


「ありがとう、レン。私と出会ってくれて。あの時あそこにいてくれて。」


「ありがとう、ホウマ。僕を拾ってくれて。あの時拾ってくれて。」


 レンとホウマはこの後何分か泣き続け、泣き止んだ後は一緒に床に入った。


 この時、レンとホウマの寝顔はどこかつきものが取れたかのようにすがすがしい寝顔だった。

おまけ


ドラゴンの育児日記。


〇月×日


今日はレンがおねしょをした。

レンは必死になって隠そうとしていたが、さすがに外に出てすぐのところに干してあったら気が付く。

まったく、干すという行為は正解なのに、なぜ干す場所がこんなにも残念なのか。

それにしても、まだ三歳の子供なのに一人で外に布団を持ち出すとは、レンは体を鍛えていたのだろうか?

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