9 vs母さん
「母さん、お願いがあるんだけど・・・」
俺はニコニコ微笑んで母さんに話すことにした。
「なーに、伊藤家の生活費は渡してるでしょ?」
母さんは不思議そうに俺を見ている。
「実は明日からモンスターの討伐の実習になるんだ、それで武器や防具が必要になる。教官から中古でも全部で6万円は必要だって言われたんだ」
言いづらいが母さんにお願いしないと。
「えー、金ちゃんは主夫でいいじゃん。母さんはそう思うな」
母さんは相変わらずニコニコ微笑んでる。
やはりダメか、お小遣いとか俺には絶対くれないし。
お金持ってるのにな、守銭奴め。
「母さん守銭奴じゃないわよ」
「い、いや、そんな事は考えてないよ」
その上、人の心を読むんだよなー。
「うふ、必要なら自分で稼ぎなさい」
うふ、じゃねーよ。
「俺が稼ぐ時間がないじゃんか、掃除・洗濯・料理とか主夫やらせてたでしょ」
「だってあたしと香葉出来ないし、しょうがないわよ」
「だから金貸してくれよ、絶対返すから」
「嫌よ、夜なら時間あるでしょ。色々仕事があるわよ?」
おい、なにニヤニヤ笑ってるんだよ。
「仕事ってなんだよ」
「えーとね、夜2時間ぐらいで、金ちゃんなら3万円は儲かるわよ」
「え?そんなに儲かる仕事があるの?」
驚いた、それなら武器も防具も買える。
「やる?あたしの知り合いに連絡すわ。ただしあたしに5割頂戴ね」
「母さん、それは酷くないか!それじゃ1万5千円しか儲からないじゃないか」
「ううん、大丈夫。金ちゃんは美少年だから6万円でいける、あたしが3万円、金ちゃんが3万円だOKだよ」
ふーん、相変わらず守銭奴な母さんだが3万円かあー。やってみるか。
「母さん、「ちょっとまって母さん、ストップよ!!」
いきなり香葉ねーが飛び出して来た。
「香葉ねー、いきなりどうしたの?」
「バカ金、あんたやる気?」
香葉ねーが珍しくアタフタしている。
「だって母さんがお金貸してくんないし、その仕事儲かるみたいだから・・・」
「はあー」
香葉ねーが溜息をしつつ母さんを睨む、母さんは相変わらず微笑んでる。
「母さん、バカ金を裏のお仕事に誘惑しないで頂戴」
「えー、パパと同じ様になれるわよ。そうねパパ以上の夜の帝王に」
「そりゃ可能だけど・・・」
「ならいいと思わない?母さん儲かるし」
何の話なんだろう?父さんて夜の帝王なの?こんな田舎の村で。
「そうだね、いいかもしれないと思うよ」
「あ、キルス兄ちゃん」
「金ちゃんはまだ若いから、後5年も経てば裏の職業適性が出るんじゃないかな」
「裏の職業適性?」
あ、キルス兄ちゃんが母さんと同じ様に微笑んでる、何故か俺は心の底から怖くなった。
「・・・まあいいか、金ちゃん中古でいいならボクの武器と防具をあげるよ」
「いいの?キルス兄ちゃん」
「革防具ならボクの体型と合うだろう、ハルバードとククリナイフは知り合いから安く買っといたよ」
「ありがとう」
俺は感謝してしまった。
「だけどね、金ちゃんがボク達のパーティになれない場合はダメだからね」
俺はあらためてキルス兄ちゃんを見る。
「必ず俺は冒険者になるよ!」
「まあ、頑張ってね。残りは3日だよ」
明日からの残り3日間で俺は覚悟を決めた。
しかし、裏のお仕事って何だろう?
やはり母さんは信用出来ないな。