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第1話:神様の婿に選ばれて!

普段、SFシリアスモノを書いている私、加賀長門ですが、ここで変化球ファンタジーでノスタルジック、日本神話の神様や妖怪が出て来る不思議なラブコメを書いてみようかと思い立ちました。


普通の男子高校生が和装黒髪ロングの大和撫子の神様のお婿さんに選ばれて、×××して、高校生なのにお上品な奥さんがいる!男子の永遠の夢であり、憧れですよねぇ〜。


ともあれ、そう言うわけでドタバタスクールラブコメ、言ってみよぉ!(尚、学園に入るのは当分先の模様)

 バックでミンミンシャアシャアジーワジーワとセミが人目を憚らずに喧しく、求愛のうたを演奏し、トンビがそれに混じって甲高く鳴き叫ぶ。

 太陽は直上から容赦なく赤外線の槍を降らせ、それが俺を貫き、背中にじんわりと汗を浮かす。また、その槍たちはぼろぼろのアスファルトの地面に突き刺さった後、そのアスファルトを灼熱の地獄へと変え、そこから発する熱気が更に俺を責め立ててくる。

 ただ救いなのは、ここがアスファルトと高く見下ろしてくるオフィスビルによって固められた街ではないということだ。周りには小高い山が連なり、その斜面を緑色の針葉樹と広葉樹が覆い隠し、その葉の一つが陽の槍を跳ね返して輝いている。

 その木々は俺の歩いている、何十年も使い古されているくせに行政の手が及ばずにぼろぼろに荒れている小さな国道の傍にも生えていて、それが落とす影は地獄の中にぽっかりと空いた小さな天国のようになっている。

 バスは一時間に一度、過疎化が進み、村を出て行く車はあっても、こんな梅雨が終わったばかりの6月の最後に帰省しようとする酔狂な連中など居らず、この国道を通るのは俺と木の葉と獣ぐらいしかいない。

 昔の人ならそこに”物の怪”を加えたりするのだろうが、現代っ子を代表すると、そんなものはおとぎ話に近く、たまの一族の集まりで近所の老人や爺さん婆さんが語る村の怖い話とかが関の山で、ネットでもない限りそんな心霊体験をしたなんて話は聞かない。

 もしかしたら、耳を澄ませば聞こえてくるのかもしれない。周りで息を潜めている輩の声が、息遣いが。微小なそれらを聞き漏らしているだけで、じつは真後ろに。

 なんて話、考え出したらきりが無い。結局そんなものは、根拠のない可能性の話であって、杞憂と言う。真面目に取り上げたら終わることのない気の遠くなる話だ。

 一人で静かなところを歩いていると、くだらない思考をしてしまう。俺は、木陰でアスファルトに腰を下ろし、リュックサックの脇からペットボトルの緑茶を取り出して口をつける。

 シャリン──

 ふと、鈴の音を聞いたような気がして、辺りを見回す。だが、人はおろか、獣すらいなかった。


(気のせいか……)


 そう思い、腰を上げた瞬間、アスファルトの稜線のむこうからエンジンの爆音が聞こえてきた。


「あれ?ミツキじゃん。久しぶりー」

芹那せりなさん⁉︎」


 赤色のスポーツカーの左側の運転席のガラスを開けて、父の弟の娘、つまり従姉妹にあたる神咲芹那かんざき せりなが顔を出す。俺の5つ上の21歳の大学3年生で、取得したばかりの免許が嬉しくて輸入モノのスポーツカーをあちこち乗り回しているそうだ。長い黒髪を7:3で分けた彼女は、かけていたサングラスを左手であげて、俺に向かって右手を振ってみせる。


「なんでこんなところにいんの?」

「バスが……無くて」

「あー、遅れちゃったんだぁ。ここらへんホントバス無いもんね」


 そうからからと楽しそうに笑う姿は、小さい頃に俺と親戚の子と近所のガキンチョを連れて山に入っては、村の掟がなんの危ないからなんのと騒ぐ俺たちを脅かしてた時と変わっていない。


「乗って行きなよ。そっちの方が早いでしょ」

「ありがとう」


 そう言って、俺はスポーツカーの右に回って、助手席のドアを開けて乗り込み、シートベルトを締める。それを確認した芹那はアクセルを踏んで車を発進させる。

 左手でハンドルを握りながら、芹那は右手でスマホをいじり出した。いやおい、片手運転。ちょっ、ガードレールぶつかる!前みろ前!

 間一髪のところでハンドルを切った彼女は、鼻息混じりの気楽さだ。こちとら死んだかと思って芹那の過失にして治療費含め慰謝料ふんだくる算段をつけていたと言うのにいい気なもんだ。

 俺が恨みがましい目で芹那を睨んでいると、彼女がスマホをギア後ろのスペースに置く。ていうか、マニュアルだったんだ、この車。

 と、どうでもいい情報を知ったところで、カーナビから音楽が流れ出した。


『あ〜テレビも無ェ、ラジオも無ェ……』


 吉幾三のら東京さ行くだ、だ。


『バスは一日一度くる⁉︎おらこんな村ァいやだぁ〜』

「なんの皮肉だよ……」

「いい曲でしょ?」


 芹那が昔から変わらない悪戯っぽい笑みを浮かべる。ホント、三つ子の魂百までとはよく言ったもんだ。嫌な真理を見つけてしまった先祖には胃薬を要求する。

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