不敵!!無能者レイド!!
シェリアが護送用の馬車に連れて行かれようとしている時、その様子を伺い見ている者達がいた。
ライオネル達が今居るのは国境近くの草原。少し先に行けば谷がありそこから先はリンドベルンの森になっている。
その草原と谷の間に小高い丘がいくつかあり、岩が何年も水や風で削られて出来た自然の高台も複数存在していた。
その高台の内の一つにレイド達の姿があった。
「おいおい一体ありゃどうなってんだ? 」
シェリア達を高台から観察していたリックは思わず声を上げてしまった。隣にいたレイドとルナがどうしたのかと尋ねるように視線を向けるとリックは説明し始めた。
「どう見ても今あそこに陣取ってる連中は鎧や装備から見てシュヴァリエの騎士達だろう。ここまではいいんだが問題は拘束されている方もシュヴァリエの騎士っぽいんだよ。しかもそこそこ高位のな。それにあの腕に付けられている拘束具は魔力封印の枷って言って名前そのまんまの効果を持つ強力な魔道具なんだよ。かなり数の少ない希少価値のある魔道具だ。それを使えるって事は捕まえてる側も正規の騎士と見ても良さそうだし何よりあの規模の部隊だ、あれで非正規の騎士という事は無いだろうな。つまり仲間内で争ってるっぽいんだよ。内乱なんてしてる感じはなさそうだったんだけどな〜」
そう言ってリックは頭を掻いた。
「お前は何を迷っているんだ?分からなければ直接話を聞きに行けばいいだろ。俺達は唯の旅人なんだからやましい事なんてないんだからな」
そう言ってレイドは高台から飛び降りていった。
「あの馬鹿!この状況を目撃したって事があの騎士達にバレたらそれだけで一発アウトでしょ!?普通に考えたら面倒な事態に巻き込まれるってわかるでしょ!もう!今回は私の占いやレイドの感が外れて折角平和的に次の町まで行けると思ったのに〜!何でいつもこうなるのよ! 」
ルナは腹の底から大声で叫んだ。
「取り敢えず追いかけるぜ! 」
リックがそう言うとルナは渋々立ち上がり高台から二人は姿を消した。
レイドは草原に陣取っている騎士達の内、外側で見張りをしている騎士に声をかけた。
「おい。少しあんたに聞きたい事があるんだがちょっといいか? 」
レイドがそう言うと背後から急に声を掛けられ飛び上がらんばかりにびっくりした騎士は慌てて後ろをむいた。
「誰だ脅かしやがった奴は!うん?貴様何者だ!?何故我々騎士団以外の者がここにいる?そして何処から現れた!?」
騎士は剣を抜き構えた。周りから何の騒ぎかと思い他の騎士達も集まってくる。
「やれやれ、質問したいのはこっちだって言うのに見るや否や大量の質問で返してくるとはな。しかも声を掛けただけでこの殺気、普通じゃないな。マジでキナ臭い感じになってきたな」
レイドがそう言うといつの間にか後ろにやって来ていたリックが言った。
「最初からキナ臭かったっつの!全く冗談も大概にしろよな」
そう言いながらもリックは楽しそうな表情をしていた。
「貴様等何者か知らんが今は国の極秘任務中だ。見られたからにはこのまま大人しく帰すわけにはいかん」
集まってきた 騎士の一人がそう言うと他の騎士達も一斉に剣を抜き始めた。
「その髪の色は無能者の様だが手加減はしない少し痛いかもしれないが一瞬で終わるから安心しな」
先程レイドに声をかけられた騎士はレイドに向かってそう言うと剣を構え切りかかった。
「バインド」
レイドがそう呟くと彼に斬りかかろうとしていた騎士の動きがピタリと止まった。まるで金縛りにあったかの様な光景だ。
「な、何だっ、こっ、これは・・・体が動かん!」
「馬鹿な!奴は無能者の筈、魔法は一切使えんはず。まあいいラッキーは二度は続かん大人しく俺の剣で切り裂かれろ! 」
今度はその様子を見ていた他の騎士がレイドに斬りかかるが同じ様に体の自由が奪われ動かなくなった。
「雑魚がいくらかかってきても俺に触れる事すら出来ない」
ただ事では無いと判断した騎士達が大勢集まって来る。中には魔法の発動準備をしながらやって来る者達もいた。
レイドは腰の剣に手をかけた。
「本格的にやる気らしいな。まあいい先に仕掛けてきたのはあんた達だ。怪我しても文句言うなよ。リック!あまり暴れ過ぎるなよ」
「お前にだけは言われたかねーな! 」
軽口を言い合いながら二人は騎士の軍勢に突っ込んで行った。