十騎士メルティア
リックとラムネーゼはカシムと別れた後、森の奥深くを突き進んでいた。
「ぅーん、ムニャムニャ。あれ?ここは何処なのです?ハ!気がついたらまたリックさんにおんぶされているのです!」
リックの背中で眠っていたラムネーゼは目を覚ますと、屋敷の外にいる事に気が付き寝ぼけながらにそう言った。
「漸く寝坊助姫のお目覚めか。本当なら俺もラムちゃんには屋敷でゆっくり寝といて貰いたいんだが、どうやら追っ手が来たみたいでそうも言ってられないんだよ。リリアラちゃんもレイド達と一緒に逆方向へ逃げているから、今頃は向こうも正反対の森の深くへと身を隠しているだろう」
リックがそう言うとラムネーゼは一瞬驚いた顔をしたが、冷静に質問をした。
「そうだったのですか。処でカシムがいないようですが、何処に行ったのです?」
「カシムは前レイドと戦ってた女騎士から俺達を逃がす為に森の中腹辺りに残って戦ってくれている」
ラムネーゼはカシムの事が心配になったが、カシムの覚悟を知っているラムネーゼはどんな状況だろうと彼を信じ、彼が稼いだ時間を有効に使い、追っ手に捕まらない様にする事が今の自分に唯一出来る事だと思い、逃げる事に決意を固める。
「取り敢えず追っ手が退くか、ライラさんが追い払ってくれるまでは森から出れないけど我慢出来るか?」
「ラムはもう立派な大人のレディなのですから、それ位我慢出来るのですよ!」
ラムネーゼそう言いながら頰を膨らませた。
「ハハハッ、そっか。それは失礼な事を言った。余計なお世話だったみたいだな」
「そうです。これからはラムの事も一人前のレディとして扱うよう気をつけてもらうのです」
そんなやり取りをしつつ、リックはラムネーゼをおぶったまま森の奥地を駆け抜けて行った。
暫く進んだ後リック達は川の流れる場所で休憩を取っていた。
「此処までこれば暫くは安全だと思いたいが油断はできないな」
リックは川の水を手で掬い、喉を潤すラムネーゼを見ながら独り言を呟いた。
暫く腰を落ち着け、リックも革の水筒に口をつけ一息つこうとしたその時だった。
リックは凄まじいスピードでこちらへと向かってくる魔力に反応した。
「《守護光陣》!!」
リックの前に光の壁が出現し、直後そこへ三つの火の玉が衝突した。
「ム、失敗。でも次は成功させる」
気がつくとリックの斜め前にある木の枝に立ち、両手に炎を生成している人物がそう呟いた。
「おいおいマジかよ〜っ」
リックはその人物の姿を見て溜息混じりにそう言う。
「お前さんその身なりと魔力からして十騎士だな?」
リックの問いにその人物はコクリと頷いた。
「私は十騎士、メルティア」
月の光に照らされ露わになった姿は、綺麗に切り揃えられた真紅の髪、燃える様なその髪と同色をベースに、金のラインが入ったドレスの様にも見える鎧を纏った女だった。
一切の感情が読み取れないその顔は一種の冷たさを放っていた。
(こいつは今のレイド以上に表情が読めねぇな。まるで人形みてぇだ。しかも余り話すタイプじゃなさそうだし、苦手だ)
リックの思考を読んだかの様にメルティアは口を開く。
「心外。私はこれでも感情豊か。単に表情筋が固まっているだけ。それと私はこれでもお喋り。だから勘違いしないでほしい」
「無表情で心まで読んでくるとは益々レイドみたいなやつだな」
リックはそう呟くとラムに物陰へ隠れる様合図を送る。
「心を読んだ訳じゃない。初めて会う人間は大体同じ事を言うから分かるだけ」
「そうかい。まあそんな事はどうでもいい。どうせお前さんもラムちゃんを捕まえに来たんだろ?ならこの先の展開は分かるよな?」
リックは右手に光の剣を出現させ臨戦態勢へと入る。
「話が早いのは好き」
そうメルティアが言うと、次の瞬間辺りは炎に包まれた。




