シェリアの奮闘
ここはライラの屋敷裏にある森の奥地。
シェリアの前に一人の男が立っていた。
男はニヤニヤといやらしい笑みを浮かべている。
その男の風貌は焦げ茶色をベースに銀の装飾が施された鎧を着こなし、頭部は横の髪は刈り上げられ、残った中央に生えている濃い黄色をした髪の毛はオールバックになっている。
シェリアはその男を睨み付けながら問う。
「貴様何者だ?」
シェリアの問いにやれやれと首を傾げながら男は答えた。
「この俺を知らないとはナァ。この俺は史上最年少にして副隊長に選ばれたエリート、グロネリア様ダァア!!」
「貴様が副隊長だと!?」
シェリアはあまりの驚愕に声をあげる。
「まあ知らねぇのも無理ねぇか。この俺様はつい先日一番隊の副隊長になったばかりだからヨォ。逃げ回ってたあんたは知らなくて当然だわなフヒハハッ」
嫌味ったらしく言うグロネリアにシェリアは強く拳を握り締める。
「まあ、そう言う訳でヨォ。副隊長になっての初任務を俺としちゃ華々しく飾りたいワケ。そう言う事で巫女さんをさっさと出してくれヨォ」
「何故お前の様な無名の奴が副隊長に・・・!絶対にリリアラ様とラムネーゼ様は渡さん!」
「痛い目を見ないと分かんねぇのかなぁ。あんた美人だから後のお楽しみの為に顔は傷つけない様にしないとなァ」
そう言い終えると、じゅるりと爬虫類の様な長い舌で口の周りを舐め回すグロネリア。
「この下衆め。貴様など偽りの副隊長に過ぎん。私が貴様に鉄鎚を下す!」
「この俺自ら出てきた以上アンタらの運命は確定しているんだゼェ。まあ精々足掻いて俺を楽しませてくれよォ?」
グロネリアは手刀の構えを取る。
するとそこから水色の半透明な剣が出現した。
「これはアクアソード、俺の得意な水属性魔法ダァ。凄まじい量の水を圧縮し高速で振動させている。擦るだけでも肉を吹き飛ばし致命傷になるゼェ」
「何かと思えばカシムの劣化版ではないか」
「なんだとォ?この俺をあんなチンカス野郎と一緒にするんじゃねェエ!」
グロネリアはそう言うとシェリアに近づき斬りかかった。
シェリアは素早い体捌きでそれを避け、掌から土属性魔法で生成した岩の様な土の塊を放つ。
それをグロネリアはアクアソードで切り裂く。
その後グロネリアは魔法により水弾を連射するが全て土の壁により阻まれた。
「生憎私の仲間にはお前以上の水属性使いがいるのでな、お前からは何ら脅威を感じ得ない」
「属性の相性が良いからと図に乗るなよォオ!」
そう言うとグロネリアは杖を取り出した。
「この杖は魔法の威力を強化する宝具。これにより強化された我が水魔法でくたばるがいい!!」
グロネリアは魔力を高めていく。
シェリアは妨害する為に土属性魔法によりグロネリアの周りに岩の刃を作り出し攻撃する。
「そんなもの効かねェェヨォオ!!」
グロネリアはアクアソードで岩の刃を斬り伏せた。
「準備完了だァあ!《ウォータネスドリル》!」
グロネリアから放たれたそれは土を抉りながらシェリアへと向かう。
シェリアは防御する為土の壁を三重に作り出す。
しかし、高速回転する巨大な水の棘は易々と壁を貫いていく。
「馬鹿な!私のグランドウォールにぶつかっても止まるどころか威力すら衰えないとは!」
シェリアはもう一度土属性により先程の壁よりも巨大な物を作り出す。
ギリギリの所で間に合ったシェリアの魔法とグロネリアのウォータネスドリルがぶつかり合う。
壁は破壊され、水の塊はぶつかった衝撃により爆ぜる。
シェリアは壁が破壊された衝撃により吹き飛ばされた。
「そんな・・・馬鹿な」
「この俺様を侮るからこぉなるんダァァ!フヒヒッハハハァ!!」
シェリアは強打した肩を抑えながらも魔法を唱える。
《グランドニードル》
グロネリアの周辺の地面から針状の土のミサイルが放たれる。
「効かんなァア!」
その全てをグロネリアはアクアソードによって弾き飛ばした。
「そんな柔な魔法ではこの俺様は倒さねェぇヨォ。これで終わりだナァ。《ウォータネスドリル》」
グロネリアは再び魔力を高め杖にチャージし始める。
(あれを防ぐ手段は今の私には無い。クッ特訓の間に性質変化さえ身に付けられていれば!!いやここで諦めてどうする?!リリアラ様を自らの手で守ると誓ったではないか!私は絶対に負けはしない!!)
消えかけていたシェリアの瞳に再び光が灯る。
グロネリアのチャージが終わり、再びウォータネスドリルが放たれた。
シェリアは深呼吸し魔力を、体内でコントロールする。
ゆっくりとだが確実にシェリアは魔力を高めていく。
巨大な水の棘が目前に迫った時シェリアは魔法を唱えた。
《ダイアモンドシールド》
シェリアの正面に月の光に照らされ輝くダイアモンドの盾が現れた。
それにぶつかったウォータネスドリルは跡形もなく砕け散ったのだった。
「ついに出来た!特訓中には出来なかったが遂に私は完成させたんだ!」
シェリアは喜んだ後、気を引き締め直しグロネリアを睨む。
「次はこちらの番だ!覚悟しろ!」
シェリアがそう言うとグロネリアは発狂するかの様に叫び始めた。
「馬鹿なァア!何だそれはァア!俺様のウォータネスドリルが効かないだトォぉオ!?そんなはずは無い。もう一度だ!《ウォータネスドリル》!!」
「もうその魔法は私には効かない!《ダイアモンドクラッシャー》」
シェリアがそう唱えると、地面からダイアモンドで出来た大きな槍の形をした塊が無数に地面を割りながら出現した。
そのダイアモンドの槍はグロネリアのウォータネスドリルを粉砕しそのままグロネリアの方へ突き進む。
「ヤメロオォォオオ!俺様に近づくんじゃねえェェェエエエ」
叫び声を上げるグロネリアにダイアモンドの槍が突き上げる様にぶち当たりグロネリアは森の深くへと吹っ飛ばされて行った。
「何とか勝つことが出来た」
シェリアはそう言うとその場にへたり込むのだった。




